あれは、晴れた日のことだった。

 私は放課後、花の水やりをしていた。前から私と友達が大切に育てていたマリーゴールドが一輪だけ咲いているのを見て、思わず頬が緩んだ。
 2学期が始まって、まだ1週間も経ってない。今学期は、文化祭や修学旅行などイベントが盛りだくさんだ。私は「何か委員会に入れたらいいな〜。」とだけ思っていた。
 まだ暑い夕方、空は少しだけマリーゴールドと同じ色に染まっている。
 ぼーっと空を見ていたら、急に横から声が響いた。

「あ、咲いてんじゃん。良かったね。」

 翔くんだ。私と小学校、中学校が同じで、偶然にも高校も同じだった子。

「あ…。うん。」
「じゃ。」

 そう言って、翔くんは教室から出て行ってしまった。
 なぜだろう。やけに心臓がうるさかった。私は帰り支度をしながら、さっきあったことを思い出した。

 「良かったね。」と言って、私に微笑んだ顔。少し落ちた太陽に反射してキラキラした髪。
 綺麗だったなぁ…。

 はっ…と現実に戻り、自分の頬を叩いて意識を注入する。
 いけないいけない。何やってるんだ。そして私は、教室を後にした…。

 今思えば、あれが「この気持ち」の始まりだったのかもしれない。