ここはダグル迷宮地下二階層の休憩施設。
 エルはあれからここに来ていた。
 そしてエルは現在ベッドに腰かけ考えている。

 (……三人は、どこに連れ去られたんだ)
 “どこに居るかは、まだ分からない。一応、探ってはいるが”
 (そうか…………あの時、ちゃんと作戦をたてて……行動してれば)

 そう言いエルは、悔しさのあまりベッドを殴った。

 “それは結果論にすぎない。起きてしまったことを悔やむよりも、これからどうするかじゃないのか”
 (ああ、そうだな。だが、どうしたらいい?)
 “今のところは……いや、待て”

 そう言われエルは、不思議に思い首を傾げる。

 (どうしたんだ?)
 “セイントチェーンからだ。待て、今ラクドサスと繋ぐ”
 (ラクドサス……こんな時になんの用なんだ)

 そう思いエルは、ムッとした。

 (すまん……だが緊急な用なんでな)
 (どういう事だ? そっちでも何かあったのか)
 (あったと言えば、そうだな……お前の所に向かう途中でセルギガの仲間に襲われた)

 それを聞きエルは驚く。

 (襲われたって……オーパーツ所持者だってバレたのか?)
 (いや、そうではないようだ。しかし、今キキョウがセルギガの仲間と戦っている)
 (そうか……それでお前は何をしてるんだ?)

 エルはそう問いかける。

 (お前の所に向かっている途中だ。それに、俺が狙われたのは……エルの仲間と思われたかららしい)
 (そういう訳か……それで、今どこにいる?)
 (それは、俺の台詞だ! 本当に狙われてるのは、お前なんだからな)

 それを聞きエルは、フゥーっと息を吐いた。

 (……ラクドサス、巻き込んでごめん)
 (そのことは構わない。それよりも、今は……)
 (そうだな。でも今は、三人を探さなきゃならない)

 そう言いエルは、無作為に一点をみつめる。

 (おい、まさか……三人って……)
 (ああ、そのまさかだ。俺のミスで、シルフィアとログスとララファが捕まった)
 (捕まった……ってことは、殺された訳じゃないんだな?)

 そう問われエルは、頭を抱え重い口を開いた。

 (殺されてはいない。だが、怪我をしているかも)
 (そうか、それでどこに連れていかれたか分かっているのか?)
 (いや、分からない。だから、今……どうしたらいいか考えてたんだ)

 そう言いエルは、頭を抱え涙ぐんでいる。

 (まさか……泣いてるのか?)
 (ウグッ……そ、そんな訳ないだろ!)
 (なるほど……まあいい。それよりも、一人で……)

 ラクドサスはそう言いかけた。

 (ラクドサス……まずいわ)
 (キキョウ、どうした?)
 (さっきのヤツらを倒して、そっちに向かう途中でセルギガと…………キャアァァアアアー……)

 その悲鳴を聞きラクドサスとエルは、キキョウのことを心配する。

 (何があった?)
 (キキョウさん、どうしたんですか!?)

 そう二人が問いかけるも、キキョウの声は聞こえてこない。

 “ラクドサス、キキョウが攫われた。それに……お前がオーパーツ所持者だと気づかれたやもしれん”
 (クソッ、なんでよりにもよって……)
 (ごめん……俺のせいだ)

 そう言いエルは、つらそうな表情で俯いた。

 (そうじゃない、とは言わないが……お前のせいだけじゃないからな。それに、悪いのはセルギガだ)
 (そうかもしれないけど……これ以上、犠牲を増やす訳にはいかない)
 (エル……一人でやろうなんて考えてないよな? それに、どこに連れていかれたかも分からない!!)

 それを聞きエルは、どうしようかと躊躇い悩んだ。

 “二人共、キキョウはダンジョンの中だ。下へ移動しているかもしれない”
 (グリモエステルス、じゃあ……もしかしたら……)
 “ああ、エル。それに向こうのオーパーツから連絡があったよ”

 そうグリモエステルスが言うとエルとラクドサスは驚いた。

 (向こうは、なんて言ってきたんだ?)
 “エル、君一人でこいって言ってる。ただ場所は、特定してない……このダンジョンの下としかな”
 (エルが一人って……間違いなく罠だ。いや、辿り着くまでに体力が尽きる)

 そう言われるもエルは、ここに隠れて居られないと思い立ち上がる。

 (悪い……気持ちだけもらっておく)

 エルはそう言うと駆け出し休憩施設をあとにした。
 それを聞きラクドサスは、エルに呼びかける。だが、返答がない。
 そうエルは、グリモエステルスに言い交信を切ってもらっていたのだ。

 “エル、君の気持は分かる……だから交信を切った。だが、これでいいのか?”
 (多分これは正解じゃない。でも、向こうは俺一人でこいって言っている。それならこうするしかない。だけど、あとでラクドサスに伝えてほしいんだけど)

 エルはそう言い、グリモエステルスに伝える。
 それをグリモエステルスは、分かったと了承した。
 それを確認するとエルは、地下三階層へ降りる通路へと急ぎ向かった。