ここは倉庫街の奥にある酒場。そして二階にあるセルギガのための部屋だ。
 ここにはセルギガが一人いて、イライラしながら部屋を行き来している。

 (クソッ! なんなんだ。あの感じは、恐らく神のオーパーツ。まさか、こんな所に居るとはな。
 だがそっちは、ほっといても問題ないだろう……刺激しなければ……。それよりも、エルの方だ。
 バスターヘルギア、エルのオーパーツがなんなのか知っているな?)
 ”知っていても言えん”
 (なぜだ?)

 そう言いセルギガは首を傾げた。

 ”オーパーツ間の約束事だ。それにアレと関わり合うのはやめておけ”
 (言っている意味が理解できん。まさか、エルのオーパーツが怖いのか?)
 ”そういう事だ。だからエルには近づくな!”

 それを聞きセルギガは、近くにあるツボを思いっきり蹴る。ツボは見事に粉々に割れた。

 (ふざけんなっ! 俺のオーパーツよりも格上だと。それも……。クソッ……だが、このままじゃ気が治まらん)
 ”馬鹿なことを考えるな”
 (フンッ、口を出すな。それならエルを始末して、そのオーパーツを奪うだけだ)

 そう言いセルギガは、ニヤリと笑みを浮かべる。

 ”やめておけ! あのオーパーツがお前になびくとも思えん”
 (言っている意味がわからんのだが。そんなとんでもない物をエルが手に入れたと云うのか?
 ハハハハハ……笑わせるな。いくらエルムスの子供だったとしても、戦闘の経験が浅いガキが手にすることなんて無理だ)
 ”ああ、そう思うのが普通だろう。だが、事実だ。そもそも、あのオーパーツは人嫌いだからな”

 セルギガはそれを聞き更に混乱した。

 (だから、なんでそんなオーパーツをエルが所持している?)
 ”そこまで知る訳ないだろ。それよりも、とにかくエルには近づくな!!”
 (さあな……どのみち、エルの方からくると思うが)

 そう言いセルギガは、無作為に一点をみつめる。

 ”そう思うなら、エルから遠ざかれ!”
 (ふざけるな! なんでこの俺が逃げなきゃならん。馬鹿らしい……もういい、自分で考える)
 ”勝手にしろ! お前がどうなっても知らん(やはりセルギガは、王の器じゃないようだ。それなら、勝手にやらせておくか)”

 そう思いバスターへルギアは、それ以上のことを言うのをやめた。

 (ああ、そうさせてもらう)

 セルギガはそう言うと机の方へ向かい座る。

 「さて、どう誘きだす?」

 そう言うとセルギガは、高笑いをした。

 ――場所は、エルの家へと移る――

 あれからエルは、真っ直ぐ家に戻ってくる。
 そして床に寝そべっていた。

 (あ、そういえば何も買ってないや……まあいいか)

 そう思い疲れていたため目を閉じ眠ろうとする。

 (エル、聞こえてるか?)
 (ああ、ログスか……どうしたんだ?)
 (ううん、何もない。さっきグリモエステルスに聞いて、シルフィアさんのことが心配で)

 それを聞きエルは、ニヤッと笑みを浮かべた。

 (シルフィアは、確かに大怪我したけど心配ない。まぁ明日には起きられるだろうけど。一週間は、施設を出られないだろうな)
 (えっ!? そんなに酷いの?)

 そう言いララファは驚いている。
 勿論ログスも驚いていた。

 (酷いと言えばそうだな。だけど、自業自得だと思う。なんで喧嘩してたのかは知らないけど)
 (そうなのか。でも、心配だからあとでお見舞いに行きたい)
 (ログス……じゃあ、明日いくか?)

 エルはそう言い瞼を開き天井をみつめる。

 (うん、行きたいです)
 (アタシも行きたい)
 (じゃあ明日、ログスの家に迎えにいく)

 それを聞き二人は、分かったと言った。

 (それと聞いているかラクドサスの件?)
 (聞いてる。でも、まさか……まだ信じられない)
 (そうだよね。だけど今思えば、ラクドサスが悪かったんじゃなくて……ダスカや一部の仲間だけだったのかも)

 そうララファに言われエルは、なるほどと納得する。

 (そうかもしれないな。まあ何かあれば、グリモエステルスを通してラクドサスに応援を頼める)
 (ああ、エル……なんか不思議な気分だけどな)

 そして三人はその後も、しばらく話をしていたのだった。