エルとラクドサスは話をしていた。

 「本気で復讐する気か?」
 「ああ、そのつもりだ。ただ、その場になって……本当にそれができるか不安だ」
 「なるほど……躊躇うかもしれないという事だな」

 そうラクドサスに言われエルは頷く。

 「流石に人を斬るのは、な」
 「斬ったことはないのか?」
 「……殺したことはないがある。だが……それも……能力を使っての状態でだ」

 それを聞きラクドサスは、不思議に思い小首を傾げる。

 「言っていることが理解できん」
 「俺は能力を使うと性格が変わる」
 「そうか……だがそれなら、能力を使えば良い」

 そう言われエルは首を横に振る。

 「俺は、能力を使っている時の自分が嫌いだ」
 「どうしてだ? 実際にみていないから、何とも言えんが……。もしそれで、力をフルに使えるならいいと思うけどな」
 「嫌なんだからしょうがないだろ。それより、お前はどうするんだ?」

 そう問われラクドサスは、エルを見据えた。

 「話を逸らしたか……まあいい。そうだな……何れは国に戻って、兄上を助ける」
 「それには、共闘してくれる者か眷属を増やさないとな」
 「ああ、だが眷属にできるほどの者は中々みつからん」

 そう言いラクドサスは溜息をつく。

 「お前も大変だな」
 「エルもな……。それにしても、俺たちのオーパーツもだが……シルフィアとキキョウはまだなのか」
 「確かに遅いな、何をしてるんだ?」

 二人は間が保たなく、何を話したらいいかと考え始める。


 ――場所は移り、ここは市場街――

 あれからシルフィアとキキョウは、食べ物や飲み物を買ったあと話しながら歩いていた。

 「ねぇ、今の本気で言ってるの?」
 「そうねぇ……本気って言ったらどうするのかしら」
 「渡す訳ないでしょ!」

 そう言いシルフィアは、キキョウを睨みつける。

 「シルフィアは、エルと英雄エルムスを重ねているだけじゃないの?」
 「そんなことは……確かにエルムスのことが好きだったわ……それでも……」
 「フフッ……断言できないようね。まぁ私は身を引く気はないわよ」

 キキョウはそう言うと、ニヤリと笑みを浮かべた。

 「渡さないわ! いえ、そもそもラクドサスはどうなるの?」
 「ああ、眷属を辞める気はないわよ」
 「どういう事? 意味が分からないわ」

 そう言いシルフィアは首を傾げる。

 「別に結婚しなくても、そういう関係にはなれるわ」
 「なるほど……キキョウはそういうタイプって訳かぁ。じゃあ、余計にエルには近づけさせない!」

 そうシルフィアは言い身構える。

 「あら、やり合うのかしら。そうねぇ……受けてあげてもいいわよ」

 そう言いキキョウは、シルフィアを睨んだ。

 ∞✦∞✦∞✦∞

 ここはセイントチェーンが創り出した空間。
 グリモエステルスとセイントチェーンは、お互い球体を炎のように染めている。

 「その申し出は断る!」
 「なぜだ? 悪い話ではないと思うのじゃが」
 「フンッ、ただお前が格上になりたいだけだろうが!」

 そう言いグリモエステルスは更に球体を赤く……いや、怒りの余り炎を纏っていた。
 そうセイントチェーンは、自分の下につけば連絡手段であるオーパーツ同士の交信を承諾すると提案してきたのである。

 「グヌヌ……ここまで頑固とはのう。じゃが、これでは共闘できぬな」
 「フッ、儂は構わぬ。それにエルも、同じだと思うがな」
 「クッ……足元をみおって。だが私も、お前の下にはつきたくはないわい!」

 セイントチェーンはそう言い、更に怒っているようだ。

 「儂が貴方に、いつ下につけと言った?」
 「お前なら考えそうだからじゃ!」
 「なるほど……儂をそのように思っていたとはな」

 そう言うとグリモエステルスの球体には、縦線が数本入りどんよりと雲がかかった。

 「あーいや……すまぬ、言い過ぎた」
 「いや、いいよ。それよりも、自分の下にとは考えていないが対等にと思っている」
 「対等か……確かに、その方がどちらにも良い」

 それを聞きグリモエステルスは、好感触だと思い更に話を進める。

 そしてその後も、グリモエステルスとセイントチェーンは話し合っていた。