エルは声の主の動きを追っていた。

 「なんのつもりだっ!?」

 そうエルは叫んだ。

 「さあな……その様子じゃ、俺が誰か気づいたようだな。だが、それはあとで話してやる。今は、俺が援護してやるから逃げろ!」
 「そういう事か……ってことは、お前に借りをつくったな。余り関わり合いたくなかったが」
 「そう云うなよ。それよりも早くしろ!」

 そう言われエルは、コクッと頷いた。

 (エル……誰なの?)
 (そのことは、あとで話す……行くぞ!)

 そう言われシルフィアは、分かったと頷く。
 それを確認するとエルは、シルフィアの手を掴んだ。それと同時に、駆け出した。

 「クッ、待て!?」

 そう言いセルギガは、眩しさを堪え大剣を構える。そして、エルとシルフィアを追いかけようとした。
 するとセルギガを無数の光の刃が襲いかかる。
 それに気づきセルギガは、自分の前にバリアを張った。
 だが光の刃の一つが、バリアを破りセルギガの右腕をかすめる。

 「クッ……この感じは……。お前、オーパーツ所持者か? それにこれは……神のオーパーツだな!」

 そう言いながらセルギガは、声の主を探していた。

 「さあ……なんのことだか知らん。フッ、だが言っておく! オッサン、ここは俺のテリトリーだ。そんで結界を張っているから、気をつけるんだな」
 「オッサ……グヌッ、言ってくれるじゃねぇか!! 出てきやがれ!」
 「嫌だね……そろそろ大丈夫そうだ」

 そう言いその声の主は、パッとこの場から姿を消す。
 すると眩い光も消える。

 「……いったい何者だ? エルは分かっていたようだが……」

 そう言いセルギガは、苦虫を潰したような顔で倉庫の屋根を見回した。

 「まあいい……あとで誘きだすだけだ」

 セルギガはそう言い歩き出す。
 そして歩きながら仲間に、倉庫の死体を片づけろと指示を出した。
 その後セルギガは、この場から去り酒場へと向かう。

 ∞✦∞✦∞✦∞

 一方エルとシルフィアは、逃げながら脳内で話をしていた。

 (シルフィア、あと少しで倉庫街を抜ける)
 (そうね……でも、さっきのって誰なの?)
 (それはあとで話す……本人にも確認したいしな)

 そう言いエルは、遠くをみつめている。

 ”その様子では、エル気づいているね?”
 (グリモエステルス……全てじゃないけど、そういう事だよな?)
 ”うむ……まあ、そういう事だ。まさか、こんな近くに神のオーパーツ所持者が居たとはな”

 それを聞きシルフィアは驚いた。

 (どういう事なの……じゃあ、さっきのヤツはオーパーツ所持者でそれも……)
 ”シルフィア、そうなるね”
 (ちょっと待って、エル。もしかして、私も知ってるヤツ?)

 そう聞かれエルは頷いた。

 (とりあえず、今はここから遠ざかろう……恐らく追ってくるだろうからな)
 (追ってくるって、なんのために……それになんで逃げるの?)
 (なんのために……なんで逃げるか。まあ逃げる必要ないかもしれないが、今は面倒だから会いたくないだけだ)

 そう言いエルは、ジト目で遠くをみつめる。
 シルフィアはそう言われるも、どういう事なのか理解できないでいた。

 「おい、待て! そんなに急いで逃げなくてもいいんじゃないのか?」

 その声を聞きシルフィアは、振り向こうとする。
 それに気づきエルは、グイッとシルフィアの腕を引っ張った。

 (シルフィア……振り返るな。気づかないフリをする、できれば関わりたくない)
 (どういう事? どのみちあとで会うのよね)
 (ああ、そうだが……アイツに助けてもらったと思うとな)

 そう言いエルは、嫌な顔をする。

 (いったい誰なの?)
 (あとで詳しく話す。ダッシュするぞ!)

 エルはシルフィアの手を引っ張り猛ダッシュした。
 それに気づいたその声の主は、ムッとし能力を使いその場から消える。その後、エルとシルフィアの前に現れた。
 それに気づきエルとシルフィアは立ちどまる。

 「なんで逃げる? 俺はあとで話すって言ったはずだよな」

 そう言いその声の主……いやラクドサスは、ジト目でエルをみていた。

 「えっ!? どういう事……」

 なぜ目の前に居るのか分からず、シルフィアは困惑している。
 片やエルは、ラクドサスから目を逸らし溜息をついていた。