(こんな卑怯なヤツになんかに、負けてたまるかよ!)

 そう思いエルは大剣の剣先を右横に向け構えた。

 《聖光残像斬撃!!》

 そう言い放つと同時に、大剣を振りきる。すると剣から光の刃が無数に放たれた。
 それを確認したかのようにエルの体は、素早く残像のように見え隠れしながら三人の懐に入る。
 それに気づくも三人には、エルの動きが速すぎて対処できないでいた。
 だがセルギガには、それがみえていてエルの動きを目で追っている。

 「何、ボーッとしているっ!」

 前に居る三人が動かないためセルギガは、使えないと思った。そのため背負っているバスターへルギアを抜くと構える。
 すると躊躇なく目の前の三人に目掛け思いっきり大剣を振りきった。
 三人は何が起きたのか分からないまま、大剣の風圧によりエルの方へと吹き飛ばされる。
 それに気づくもエルは、三人の中の一人があたって来て一緒に吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。

 「グハッ!?」

 エルの上には、セルギガの仲間が覆い被さっている。
 それをどかせようとした。

 「死んでる?」

 そう言いエルは、覆い被さっている男を真横に寝かせる。
 その後エルは起き上がりながら、ペッと口の中の血を吐いた。
 その間セルギガが待ってくれる訳もなく、エルの眼前に大剣の剣先を向ける。

 「これで終わりだ!」
 「クッ、まだだぁー!!」

 そう言いエルは、咄嗟に体勢を低くし思いっきりセルギガの足を蹴った。
 それに気づくも間に合わずセルギガは、よろけて尻餅をつく。

 「エルっ!!」

 そう言いシルフィアは、エルの下に駆け付ける。

 「シルフィア! なんでここに?」

 不思議に思いエルは、首を傾げる。

 (エル……ここは逃げましょ。セルギガが本気を出したら、こんなもんじゃすまないわ)

 そう言いながらシルフィアは、コッソリとエルに魔導書を渡した。

 (グリモエステルスを持って来たのか? それでか、ここが分かったのは……)
 (少し手間取ったけどね。それと、グリモエステルスをバッグにみえないように仕舞って)
 (分かった……知られないためだろう?)

 そう言われシルフィアは、軽く首を縦に振る。

 「クッ……シルフィア、なんでお前がここにいる?」

 セルギガはそう言い立ち上がった。

 「居てはいけないのかしら?」――(エル逃げるわよ)
 (……そうだな。これでまだ本当の力を出していないなら)

 そう言いエルは、大検を構える。そして、どうセルギガから逃げるか思考を巡らせた。
 片やシルフィアは、エルを庇いながら身構えている。

 「逃げるつもりじゃねえよな?」

 セルギガはそう言い、大剣の剣先をエルに向けた。
 そう言われエルは戸惑っている。

 「エル……セルギガのいう事なんか聞くことないわよ」
 「まさか、シルフィア……お前が俺を裏切るとはな」
 「私は、元々エルムスの眷属よ」

 それを聞きセルギガは、大笑いをした。

 「エルムスの眷属だと笑わせるなっ! 既にエルムスはいない、そして俺がその跡を継いだ」
 「それを云うなら、奪っただよな!」

 そう言いエルは、セルギガを睨んだ。

 「そうだな……お前の母親のマルセからな。素直にバスターへルギアを俺に渡せばこんなことにならなかったんだが。まぁ今思えば、お前がいたからか」

 セルギガはそう言うと大剣を斜めに構え直し体勢を低くする。

 (エル……堪えて)
 (そう言っても……この状況からどうやって……)

 そう言いエルは、この場をどう切り抜けたらいいのかと思考を巡らせた。
 そうこう考えている場合でもなく……。

 《バスター…………》

 セルギガは技名を言いながら、エルに目掛け大剣で斬りかかろうとする。
 それをみてエルは、大剣を構えながら避けようとした。
 助けようとシルフィアはエルに跳びかかろうとする。

 ――ピカッ!!――

 眩い光がエル達の前に現れ照らした。その光は目を開けているのがヤットなほどに明るい。
 エルとシルフィアは何が起きたのか分からず困惑している。
 勿論この光のせいで、セルギガの動きが止まっていた。

 「おいおい、俺の縄張りで勝手なことしてんじゃねえぞっ!!」

 そう叫ぶ声が倉庫の屋根から聞こえてくる。
 エルとシルフィアとセルギガは、その声の主を特定するため気配を探った。だが、特定できない。そう、素早く場所を移動していたからである。

 「クソッ、誰だ……姿を現せ!」

 そうセルギガが言うとその声の主は、高笑いをした。

 「さあ、誰だろうな。それにさ、姿を現せと言われてすんなりいう事を聞くヤツなんかいないぞ」

 その声をどこかで聞いたように感じて、シルフィアは思考を巡らせる。

 (この声……そして人を見下すような話し方……えっと……どこかで聞いてるんだけどなぁ)

 そう考えながらシルフィアは、更にその声の主の気配を探っていた。
 だがエルは、なんとなく誰だか分かっているようである。そのためかその声の主が移動する度に、その場所へ顔を向けていたのだった。

 (どういう事だ? まぁあとで訳を聞かせてもらうとするかな)