時は少し遡り……――

 ここはエルの家。
 エルはグリモエステルスに止められたが、どうしても諦めきれないでいた。

 (……やっぱり無理だ。どうしても確認したい)
 ”さっきも言ったが、自分一人で抱え込むな。それが話し合いだったとしても、エル一人で行くのは危険すぎる”
 (そうだとしても……)

 そう言いエルは、遠くをみつめる。

 ”いい加減にしろ! 死ぬ気か? いや、君に死なれては困る”
 (困る? なんでだ)
 ”儂は、今まで誰にも所持させなかった。自分に相応しい者がいなかったからな”

 エルはそう言われ、ムッとした。

 (だからなんだって云うんだ! 俺は、確かにグリモエステルスを必要とした。でも……それは……)
 ”君が儂の力を必要であるようにな。儂は、エルに備わっている王の器に賭けているんだ”
 (王の器? それってどういう事なんだ)

 そう言いエルは、不思議に思い首を傾げる。

 ”そうか君はオーパーツがなんなのか知らないんだな。まあ、殆どの者は知らないのかもしれんが”

 グリモエステルスは一呼吸おき、再び話し始めた。

 ”本来オーパーツは、王を選定するためのものだ。これも云っておくか。神と悪魔のオーパーツが存在する訳は、王を二つに分けるためだよ”
 (そうなのか。でも、なんで王を二つに分ける必要がある?)
 ”一人の王だけじゃ独裁者がうまれる。二人いれば、どちらかが……それを阻止できるからな”

 それを聞きエルは納得する。

 (じゃあ、俺はその渦中にいるって訳か)
 ”そういう事だ。だから王候補が、自分勝手な行動をしないでほしい”
 (そうだな……)

 そう言いエルは探しに行くことを諦めた。
 そして、しばらく荷物の整理をする。
 だが、エルの脳裏に村の光景が浮かんだ。

 「やっぱり無理だ!」

 そう言いエルは、バッグと大剣を背負うと外へと向かった。

 ”エルっ! 待つんだ。……反応がない、聞こえてるはず。わざと聞こえないフリをしているのか。シルフィアに連絡した方がいいな”

 グリモエステルスはシルフィアにのみ連絡をする。
 なぜログスとララファに連絡しないのかそれは、まだ眷属になったばかりで却って危険だからだ。
 そしてグリモエステルスは、シルフィアに連絡をしたあと再びエルに呼びかける。

 ∞✦∞✦∞✦∞

 ここは倉庫街の入口付近。
 あれからエルは、ここに来ていた。

 (人通りがない方が誘い込むのにいい。……これもグリモエステルスに聞かれてるんだよな。グリモエステルスの声が聞こえてくる……)
 ”それが分かっているなら、やめるんだ! それに今どこにいるんだい?”
 (なるほど、居場所まで特定できないのか。じゃあ、ここがどこか言わなきゃ大丈夫だな)

 そう言いエルは、ニヤッと笑みを浮かべる。

 ”クッ、いい加減にしろ! 儂を家に置いてきたな”
 (ああ……邪魔されたくないからな)
 ”その大剣だけじゃ、それほど力を引き出せない”

 そう言われるもエルは、それを無視して倉庫街へと入っていった。