エルとシルフィアは、グリモエステルスからもらった魔道具をみていた。

 「この魔道具って、名前なんだろう……武器にも名前あるのかな?」
 「そういえば、俺の武器も名前なかったような気がする」

 そう言い考えていると、グリモエステルスは二人に話しかける。

 ”そうだったな……すまない、忘れていた”
 (忘れてたって……あり得ないよな、普通)
 ”エル、そうだな……その通りだ”

 グリモエステルスはいつになく低姿勢だ。

 (って……まぁいい。それで名前は?)
 ”エルの大剣の名前は、魔剣グリモエステルスでそのままだ。それでシルフィアの武器は、エステルス キャットクロー。それとその魔道具は、察知して危険難易度を色で教えてくれる。名前は、感知宝石箱ってところかな”
 (……なんか、取って付けたような名称だな)

 そう言いエルは呆れた表情になる。

 ”……いつもならここで、怒るところだ。しかし今回は、儂が言い忘れたから……やめておこう。じゃあ、頼むぞ“
 (あ、待て……って、反応がない)

 それを聞きシルフィアは苦笑した。

 「ねぇ、じゃあこの感知宝石箱どうする?」
 「そうだな……常に持ってた方がいいだろう」
 「うん、でもずっと持ってる訳にはいかないわ」

 そう言いシルフィアは感知宝石箱をみる。

 「んー、ちょっとみせてくれないか?」

 シルフィアはそう言われ感知宝石箱をエルに渡した。
 そしてエルは、感知宝石箱を調べ始める。

 「……小さいから首に下げられそうだな」
 「じゃあ、何か紐か鎖があれば」
 「ん? 丁度、両脇に通せそうな穴がある」

 そう言いエルはシルフィアにその部分をみせた。

 「ホントだ。これなら、大丈夫だね。だけど……紐か鎖がないと」
 「確かバッグの中に……」

 エルは自分のバッグの中を調べる。そしてバッグの中から、鎖が付いたペンダントを取り出した。それはエメラルドグリーン色の宝石が埋め込まれたペンダントである。

 「エル、それもしかして……マルセの」
 「ああ、母さんがいつも身に付けていた物だ。そうだな、このペンダント……シルフィアにやる」

 そう言いエルは、シルフィアの眼前にペンダントを差し出した。

 「えぇっ!? でも、これマルセの形見だよね」
 「ああ、そうだな。でも……持ってても仕方ない」
 「そうだとしても……」

 シルフィアはそう言い眉を下げエルをみやる。

 「それに、鎖が付いているのってこれしかない」
 「……ねぇ、エル? ただそれだけ」
 「ん? ああ、それだけだが……他に何かあるのか」

 そう言いエルは首を傾げた。
 片やシルフィアは何かを期待していたらしく、ガッカリする。

 「そ、そうだね……ハハハ……。うん、分かったわ……ペンダントの方は宝石箱に入れとく」

 そう言いシルフィアは、エルの手からペンダントを取った。すると、ペンダントから鎖を外して感知宝石箱に付ける。
 その後、鎖を付け終えると感知宝石箱の中にペンダントを入れた。
 その様子をエルはみている。

 (……シルフィアは、なんだと思ったんだ?)

 そう思いエルは首を傾げシルフィアをみていた。