エルは現在、扉の前に立っている。
 魔導書は小さくなりエルのバッグの中に入った。
 そしてシルフィアはエルをみている。
 エルは扉に目掛け左手を翳した。

 《エステルス・トラップリリース!!》

 そう詠唱すると翳してた左手の前に魔法陣が現れる。その魔法陣は扉へ移動すると、ゆっくり右に回り出した。

 ――ピンポーン!――

 そう音が鳴る。

 ――カチャッ!――

 その後、開いたような音がした。
 二人は、お互いに反応に困る。

 「……あ、えっと……開いたんだよね?」
 「ああ、そのはずだ。だがこれは……いや、言わないでおくか」
 「うん、その方がいいと思うよ」

 そうシルフィアが言うとエルは頷いた。

 「じゃあ、開けるぞ」

 そう言いエルは扉を開ける。

 ――ギイィィイイイー……――

 そう音を立て扉が開いた。

 「フゥー、まだだな」

 それを聞きシルフィアは中を覗きみる。

 「ここって部屋?」
 「ああ、そうみたいだ」

 エルは辺りを見回した。

 「もう仕掛けはないと思うが、用心しておくか」

 そう言いエルは、両手を斜め上に掲げる。

 《エステルス・エリアトラップサーチ!!》

 そう唱えると魔法陣が展開された。その魔法陣から光が放たれ部屋全体に広がる。

 「ねぇ、これってどこも光ってないね」
 「ああ、大丈夫そうだ」

 そう言い二人は、部屋の中に入った。

 「薄暗いな」
 「そうだね……でも、なんとかみえる」
 「ああ、思ったよりもここは広い。一応、用心するぞ」

 そうエルが言うとシルフィアは頷く。
 どこかに出口がないかと二人は探した。

 「……!?」

 エルは突然立ちどまる。

 「エル、どうしたの?」

 そう言いシルフィアは、エルがみている視線の先を向いた。と同時に、顔が青ざめる。

 「ねぇ、これって」
 「ああ、最悪だ」

 二人の目の前の壁際には、数名の冒険者らしい白骨化しかけた亡骸があった。

 「まさか、この中に……ログスとララファのお兄さんが」
 「その可能性はある。だが、どこからこの部屋に入ったかだ」

 そう言うとエルは考え始める。

 (恐らく俺たちが通ったルートじゃない。そうなると……他に扉があるのか?
 だがそうだとして、なんでここで死んでいる……。それも、一人や二人どころじゃない)

 そう思考を巡らせた。

 「エル、どうするの?」
 「ふぅ~……面倒だ……考えても仕方ない。とりあえず、持ち物を調べる」
 「面倒、って……まぁいいか。そうだね……」

 そう言いシルフィアは、壁際の白骨化した亡骸のそばまで来て荷物を探り始める。
 それを視認するとエルも荷物を調べ始めた。

 「んー身元が分かる物はないな」
 「うん、コッチも分からない。なんか探す、いい方法があればいいんだけど」
 「そうだな……闇雲に探しても、無意味だ」

 そう言いエルは、何かいい方法がないかと考える。

 (グリモエステルス、みてるよな? どうしたらいい……これじゃ、いつになってもみつからない)
 ”ああ、みてるよ。だけど、儂が簡単に助言すると思ってないよね”
 (そうだな……だが、ここにあの二人を連れてこれない)

 そう言いエルは更に悩んだ。

 (ねぇ、この会話……私にも繋がってるね)
 (……? どうなってる)
 ”儂が繋げておいた。どうせなら、共有した方が早いと思ってね”

 それを聞きエルとシルフィアは納得する。
 そしてその後もエルとシルフィアは、グリモエステルスと話し合っていた。