「いい加減にしろっ!? お前たちは黙って俺の言う事を聞いていればいい」

 そう言いセルギガは目の前の六人を鋭い眼光で睨んだ。

 「聞けることと、そうじゃないことがある」
 「ガーガスト……俺に逆らうってことが、どういう事か分かってんだろうな」
 「おい、セルギガ……ガーガストだけじゃないんだが」

 そう言いザグルべが目を細めセルギガを見据える。

 「おいおい、オレもその一人だ!」

 そう言いイエローベージュの髪の男は、ジト目でセルギガをみた。

 「ダイゲン……クソッ、お前までもか!」
 「こうしたらいいんじゃないか……セルギガ一人で、そのエルに勝てるなら認めるってな」
 「それはいい考えだ。オルグスの言う通り、そのガキに勝てるようなら……お前をリーダーって認める」

 ガーガストはそう言うとセルギガ以外の者たちへ視線を向ける。
 それを聞いていた者たちは、その意見に賛同した。

 「フンッ、まあいい……俺が勝てばいいんだよな。そんなの簡単だ! もし俺が勝利したら、なんでも言う事を聞いてもらう」

 そう言いセルギガは睨みを効かせ六人を順にみる。
 だが六人は、それに動じず馬鹿にしたようにセルギガを見据えた。

 ∞✦∞✦∞✦∞

 一方エルは通路を歩きながら各部屋を確認している。

 (なんでこんなに部屋がある? まるで、ここに文明があったみたいだ)
 “あったみたいじゃない。実際に、このダンジョンには文明が存在した。エル……ここまで降りて来て何か感じなかったかい?”
 (んー……そういえば試練をする所にしては、まるで侵入者を追い払う……いや撃退するような罠が多かった気がする)

 そう言いながらエルは部屋の中に入った。

 “その通りだよ。ここに居た者たちは外からの干渉を拒んでいた。まあ何千年も前のことだけどね”
 (グリモエステルス、なんかみて来たような口ぶりだな)
 “そうだね。ここにくるまで忘れていた。なんで覚えていなかったのかは不明だけどな”

 それを聞きエルは不思議に思い首を傾げる。

 (もしかして……グリモエステルスは、ここに存在した古代文明から生まれたのか?)
 “儂だけじゃない。オーパーツと云われる物の全てが、このダグル迷宮に存在した各文明から生まれた”
 (各文明って! 他にも存在したのか?)

 エルは驚きその場に静止し一点をみつめた。

 “そうだね。儂は、この階に来たことがある。だけど別の階層の文明につくられた。ただ、どこの階層か思い出せないけどね”
 (なるほど……だけど、オーパーツは王を決めるための物って言ったよな?)

 そう言い再び部屋の中を歩きだす。

 “勿論そうだよ。このダグル迷宮に存在した文明は各階層ごとに争っていたんだ。そのため治安を良くするためにオーパーツをつくったのさ”
 (それって、おかしくないか? 却って争いが起こるんじゃ)
 “それは一時的にだろ。王が決まれば争いが治まる”

 それを聞きエルは、なるほどと納得する。

 (でもなんで……ここの文明は廃れたんだ?)
 “廃れたか……それは違うよ。とある王となった者が、ここから外へみんなを解き放ったんだ。まあ……病気や色々なことも重なったみたいだけどね”
 (……その言い方だと知らないのか?)

 そう言いエルは首を傾げた。

 “ああ……ずっと眠っていたせいか。ここから外に出た時の記憶が曖昧なんだよ。いつの間にか人間嫌いになっていたしね”
 (……色々あったんだな)
 “まあ、言いたくないこともあるんだけどな”

 そう言われエルは、これ以上この話をしない方がいいと思い話題を変える。
 そしてエルは更に部屋の中を探り歩いたのだった。