ここはダグル迷宮。
 あれからエルは地下八階層に降りる。
 その後、地下八階層の魔物たちを倒しながら地下九階層に向かった。
 九階層に降りたエルは巨大な魔物に襲われるも、なんとか倒すことができ先に進んだ。
 十階層に降りる出入口までくると手紙をみつける。
 その手紙は、かつてここに来た冒険者の物だった。
 それを読んだあとエルは、あとでギルドに持っていくことにしバッグに仕舞い地下十階層へと降りる。
 十階層に来たエルは更に魔獣や魔物が多くなっていることに驚いた。
 だが躊躇してる余裕はない。苦戦するも魔獣や魔物を倒しながら先へ進んだ。
 十一階層へ降りたエルは、ここだけ魔獣や魔物が居なかったため不思議に思った。

 (どうなってるんだ? 白い空間で何もないし魔獣や魔物の気配がない。トラップが仕掛けられてるのか?)
 “どうだろうね。その可能性もあるかもしれないよ”
 (……グリモエステルス、知ってるんだよな?)

 そう言いながらエルは周囲を見回す。

 “ああ、さっきも言ったけど……知ってるけど言わない”
 (そうだった。仕方ない魔法を使うか)

 エルは両手を上に掲げる。

 《エステルス・エリアトラップサーチ!!》

 そう唱えると魔法陣が展開された。その魔法陣から光が放たれ確認できる範囲の全体に広がる。
 それを確認するとエルは少しずつ警戒しながら前に進んだ。

 (反応がない。どういう事なんだ?)
 “エル、これだけは教えておいた方がいいか。ダンジョンには安全な階層がある”
 (なるほど……それが、この階層って訳か)

 そう言いながらエルは先へと進み歩いた。

 “ああ、そうだね。でも……そういう階層は冒険者が集まりやすい……言ってること分かるな”
 (そうか……じゃあ通過するのはないな)
 “そういう事だ。居るかどうかは分からない……だけど探した方が間違いないよ”

 エルはそう言われ軽く頷くと、この階層を探し歩くことにする。

 ∞✦∞✦∞✦∞

 ここは地下十一階層の奥にある部屋。ここも安全な場所だ。
 現在この場所にはセルギガと仲間の七人がいる。その中の一人は地面に横たわっていた。そうエルにやられた赤髪の男だ。
 その奥にはシルフィアとログスとララファにキキョウが拘束され眠っている。

 「まさかエミルスがやられるとはな」

 伸びている赤髪の男はエミルスと云うらしい。それと、かろうじて死んではいないようだ。

 「セルギガ、あのエルってヤツは……もしかしてエルムスの息子なんじゃないのか?」

 黄緑色の髪の男はそうセルギガに問いかける。

 「ザルグベ、お前がそれを知る必要はない」
 「ちょっと待てセルギガ、ザルグベが言ったことは本当なのか?」
 「ハベスゼ、それはどうだろうな。いや、そんなことはどうでもいい」

 それを聞きハベスゼは水色の髪をかき上げたあとセルギガを睨んだ。

 「関係ない訳がないだろ!? アイツに子供が居たなら権利は……」
 「ああ……ハベスゼの言う通りだ。本当の正当な権利者はエルムスの息子なんじゃないのか?」

 そう言いオレンジ色の髪の男はセルギガに詰め寄った。

 「クソッ、オルグスまでもか。あーうるさいっ! どいつもこいつも……エルムス、エルムスか。俺と何が違うって云うんだっ!?」
 「セルギガ、前に言ったよな。エルムスとマルセの村に行ったら既に二人は死んでたって、アレ嘘だったのか?」

 そう言い紺色の男は、セルギガを疑いの目でみる。

 「ガーガスト、俺が嘘を言うと思うのか? あのエルがエルムスの子供な訳がない」
 「どうだかな……あのガキの顔をみたが、エルムスにどことなく似ていたぞ」

 そう言いイエローベージュの髪の男は馬鹿にした表情でセルギガをみた。

 「クッ、もしそうだったらどうするつもりだ。今の所有者は、この俺だ!」

 そう言いセルギガは、キッと鋭い眼光で仲間の六人を睨んだ。
 それをみた六人は、セルギガを睨み返す。
 そしてその後も言い合いは続いたのだった。