川崎大和。
 幸のお姉さんの彼氏。これは偶然なのか。
 八代に殺された人と、同姓同名だ。
 自室のベッドで横になって考える。
 いや、偶然じゃなくて運命だ。

 川崎大和さんとこの時代でどうにか知り合いになって、八代と今後の人生で関わらせないようにすることがミッションに違いない。
 殺害方法からして、八代は深い憎しみを大和さんに持っていたと予想できる。だから妻も殺して、大和さんの全てを奪ってやりたかったんだ。

 八代はもう大和さんと面識があるのだろうか。彼氏を家に連れて来たお姉さんが紹介した可能性がある。
 本人にメッセージで尋ねよう。
 携帯を引き寄せてアプリを開く。文字を入力しようとしたときに、八代の方からメッセージがきた。

 『今日家に来た後輩っぽい奴いただろ』
 『いたね。それがどうかしたの?』
 『そいつが、折野だったんだ』
 「えっ」

 中学で幸を盗難事件の犯人に仕立て上げた、折野マミ。
 彼女が、幸の家に来ていた? どの面下げて?

 『幸の姉貴と卒業後も仲良かったみたいだな』
 『幸がいるのに家に上がって顔を見せるなんてどんな神経してんの!』
 『まったく悪びれてないんだろ。幸を舐めてんのかもな』
 『何も言えないだろ~どうせって? 後ろめたさとか皆無みたいだね、腹立つ!』
 怒りのあまり枕をボスボスと叩く。ホコリが舞うが、そんなことはどうでも良かった。
 『本当にクソだよ』

 文面から送信主の苦々しい顔が浮かんでくるようだった。

 『もう来ないことを祈るね』
 『だな。学校では何もしてこないんだよな?』
 『うん。まったく近づいてこない。隠れて嫌がらせとかしてる様子もない』
 『それが続いてくれるといいんだが……』
 『大丈夫。なんかあったら私が追い払うから』
 『頼もしいな。ありがたい』

 マミが性悪だと幸のお姉さんにも知らせたい。お姉さんがマミと絶縁すれば、家には確実に来ないだろうし。

 『ねぇ。八代は幸のお姉さんと同じ中学の同級生なんだよね?』
 『そうだな。同じクラスだったこともある。幸ほど話したことはないけど』
 『幸と幼馴染みなら必然的にお姉さんとも仲良いかもって思ってたけど。同い年だし』
 『小さい頃は3人で遊んだけど、最近は家にもあまり帰ってきてないほど、他の交流が忙しいみたいだしなあ』

 そうなのか。彼氏と同棲うんぬんとか聞こえたから、恋愛に夢中なんだろうな。

 『お姉さんってマミと仲良いんだね。中学の先輩後輩って卒業したらもう関わらないもんだと思ってたよ』
 『折野はよく懐いてたよ。中学のときに、学年が違うのにこっちの教室に来てたりした』
 『先輩にわざわざ会いに? それは珍しいかも』
 『ああ。樹里亜センパ~イってよく呼び掛けてたよ』

 え?
 『樹里亜って幸のお姉さんの名前?』
 『そうだけど』
 樹里亜。川崎大和さんの妻と同じ名前。字も一致している。 

 幸のお姉さんは、大和さんといずれ結婚して家庭を作る。
 薄井樹里亜が、川崎樹里亜になる。
 樹里亜さんと八代に面識があったのなら……現代の八代の憎しみの対象は、大和さんじゃなくて樹里亜さんだったのかもしれない?
 これは八代に実際に会って確かめたい。

 『今度一緒にご飯でも行こうよ』
 『いいぞ』
 速攻でオーケーがくる。
 よし!

 対面して聞きださないと。メッセージだとはぐらかされる可能性大だ。
 樹里亜さんが憎いか。
 もしそうなら、何故なのか。何か決定的な出来事があったのか。
 何も起こってないなら、これから防げば良い。

 すでに出来事が起きたなら――八代を薄井家から引き離すしかない。
 どうやるかは全然思いつかないが。とにかく八代に訊ねてから判断しよう。
 川崎大和さんか樹里亜さんのどちらか――あるいは両方に殺意を抱いたことはあるか。