ETROの史料によれば高度成長期に、出どころの怪しい水産物が、日本中、アメリカ中の人々に売られていた。
琉球列島の埋め立てを検討していた政府は、カンフー商会に産地の確認を依頼した。
カンフー商会は、水揚げされた魚介類は産地不明だが、新鮮でおいしいと評判だったという。
それを証明するには、自分たちが釣った魚でなければならないという。
しかし、カンフー商会は1970年代初頭、仕入れルートの解明を拒否した。
政府は、「これは全部詐欺だ」と思い始めた。
しかし、カンフー・トレーディング・カンパニーは、1970年代の終わりまでそれを頑と黙殺していた。
1980年代に入ると、警察がこの事件を調査するようになった。
この事件は、大量の冷凍された人間の遺体が発見されたことで解決した。
遺体は骨の髄まで凍りついた状態であった。
だが暴対法のない時代。
複雑怪奇な力学が働いて事件は不起訴処分になった。
目撃者の話によれば遺体はまだ生きていて、冷凍庫に入れられていたという噂があった。
この話は資料も乏しく確証も少なく、鮫島事件に準ずる扱いを受けていた。
ところが平成28年10月20日、カンフー商会跡地で殺人事件が起こった。
犯人が逮捕されて事件の概要が明らかになった。
事件の犯人である鶴見区在住の男が逮捕されたとき所持していた携帯電話のメモリーを調べたところカンフー商会の名前が浮かび上がった。
男は「ゲンちゃんを殺した」と供述している。
警察はカンフー商会に捜査の手を伸ばすことにした。
警察がカンフー商会に乗り込んだところ、社長である竜胆正雄が応接室に通された。
そこで待っていたのは一人の老人だった。
竜胆が名刺を渡すと「鶴見警察署刑事課警部の熊田です」と名乗る。
竜胆が「ご用件は何でしょうか?」と言うと、鶴見署の警部は、カンフー商会が不法投棄した冷凍庫の白骨死体はあなたたちの仕業ですか?と言った。
竜胆は、そのとおりだと答えた。
すると鶴見署の警部は、証拠はあるのか、と竜胆を問い詰めた。
竜胆は証拠ならあります、と答えてポケットからビニール袋を取り出した。
中にはエイの巨大白骨遺体が入っていた。
鶴見署の警部は、それが何なのか説明しろ、と言い放った。
竜胆は説明しようとしたが、さっぱり要領を得ない。
祟りだの呪いだの不明瞭な供述が続く。
警察は骨のDNA鑑定によるエイの産地特定に着手するとともに、取引先や水産関係者の家宅捜索令状を取った。
どこかの漁船が捕獲したものの売り物にならず処分に困って捨てたか東京湾に迷い込んだ可能性があるからだ。
後者の場合はカンフー商会にとって災難だっただろう。
だが、それならそうで然るべき報告をして行政と相談すべきであった。
自治体や国も鬼ではないので一企業に負担をかけることもない。
公費で処分できた可能性だったあるのだ。
鶴見署の警部はカンフー商会を糾弾したが当の竜胆は「そんなこと知らない」の一点張りだ。
その態度に業を煮やした鶴見署の警部はカンフー商会の本社に乗り込み専務を逮捕した。
竜胆の証言によると、その男こそカンフー商会の実質的な経営者だった。
カンフー商会の実権を握っていたのはその男で、会長でも副社長でもなかった。
その事実が判明した以上、警察の出番はないはずだ。
しかし、鶴見署の警部は「どうせ、お前らの仕業だろ!」と決めつけてカンフー商会を家宅捜索した。
そしてエイの死体の骨片を押収して鑑識に回したところ、エイの白骨死体の骨片と一致することが判明した。
こうして事件は解決したかに見えた。
その後、竜胆は自殺を図り重傷を負った。
取り調べは難航した。
竜胆は「自分はやってない」の一点張りだ。