「4属性姉妹って確か……」

アモルも思い出した。噂で聞いたことを。

「魔法の基本属性の4つ。火、水、風、地。
人によって得意属性が違うけど、血縁関係は同じ属性が得意なことが多い。
だけど、きみたちは……」

「そう! オレは火の魔法が得意な『ヒノ』! よろしくな!」

元気いっぱいの赤髪の少女が先頭に出る。

「わたしは水の魔法が得意の『スイ』。よろしくね」

青い髪で長髪の少女がヒノの後ろから手を振る。

「……風魔法が得意。……『フウ』」

スイのさらに後ろに隠れるように、緑髪の子が顔を出す。

「最後に、ボクは地魔法が得意の『アス』。よろしく」

一番後ろから、茶色の髪の子がゆっくりとアモルの前に近づいた。

「その4属性姉妹の皆さんが、何故ここに?」

アモルの質問にアスが、ラヴ、シオン、エレテの方を、ヒノがアモルの方を見る。

「消灯時間になったのに部屋にいない子たちがいる。
と、連絡が回ってきてね。どう探そうかと思っていたら……」

「アモル、だっけか。お前が走っていくのが見えてな。
何かあったと思って、オレらで後を追った、ってわけだ」

「えっ」

アモルは驚いた。自分は気配には敏感な方だと思っていたからだ。

「よっぽど、その子たちのことが心配だったんだね。
すごく急いでたから、わたしたちに気が付かなかったんじゃないかな」

「うん……」

スイの言葉に同意するようにフウが頷いた。

「それは――」

「アモル、心配してくれたの! 嬉しいなあ」

「うんうん。アモルはそうだって思ってた!」

ラヴとシオンが素直に喜ぶ中、エレテが小声で

「ゆっくりこっちに向かって来てたけど……」

と呟きながら、アモルを見つめた。

「いや、それはね……」

「カッコつけたかったんだろ!」

言葉に詰まるアモルの背をヒノが強くたたく。

「いや、そんなことは……」

「照れんなって!」

ヒノが続けざまにアモルの背をたたく。その勢いにアモルはむせる。

「……そうなの?」

エレテの瞳がアモルをじっと見つめる。
その純粋な目にアモルは――

「……そうです」

認めるしかなかった。

「え、そうなの? アモル?」

「意外、アモルもそういうこと気にするんだ」

ラヴ、シオンも詰め寄ってきて、アモルは恥ずかしさに顔を逸らす。

「ふふっ、アモルくんも男の子ってことだよ。可愛い同級生に弱い、ね」

スイが笑顔でアモルたちを見る。
ラヴ、シオン、エレテは喜びながらアモルを囲む。

「ふむ。まあそれはそれとして君たち、いやボクたちもか。
そろそろ寮に戻った方がいい。他の生徒が心配しているよ」

アスが、喜ぶラヴたちを冷静に諫める。

「あ、そうだった」

「アモル、今日はありがとう!」

「……また明日」

ラヴたち3人は先に駆け出し寮に帰っていく。
アモルはそれを笑顔で見送る。

「お前もだよ、アモル」

ヒノが今度はアモルを急かすようにたたく。

「わ、わかってますよ」

アモルも駆け出し、少し進んだところで4姉妹に振り返った。

「さっきは、ありがとうございました。
ボク一人だったらラヴたちにケガさせてたかもしれないので。それじゃあ!」

そう言うと、アモルは寮に帰っていく。それを見送る4姉妹。

「……どう思うよ。スイ、フウ、アス」

「わたしはいい子だと思うけどな。フウはどう思う?」

「ん……」

スイの問いにフウは笑顔で頷く。

「そう簡単に決めるのは早計だと思うけど……まあ、悪い子ではなさそうだね」

アスもゆっくり頷いた。

「じゃあ、決まりだな」

4姉妹は改めて、もうだいぶ遠くにいるアモルの背中を見る。

「アモルくん。彼が……」

「オレたちの……」

「ボク等の……」

「……運命の子」

そして最後に揃って呟く。

「「「「そしてアモル。彼は……宿命の子」」」」

その声が夜の光に吸い込まれていった。