背丈は人間よりも二回りはデカい。更に頭には2つの目玉あり、他にも鼻と口らしきものも確認出来る……。2本の足で立つそのシルエットだけを見れば確かに人であるが、人間に見えると同時にその存在が人外である事も直ぐに理解出来る。
そして……奴の異常な程悍ましい強大な魔力が、一瞬にしてこの場にいる全員に戦慄を走らせた――。
「……か、か、体が……」
「化け物だ……!」
「何なんだコイツ……⁉」
「た……た、助けてくれ……ッ!」
場が恐怖で凍りつく。
有象無象の冒険者は当然の如く、鍛錬された騎士魔法団員であってさえも恐怖や困惑が生まれていた。目の前にいる相手は間違いなく今まで出会った中で最強の存在。
「これは相当な強者……!」
「グリム……アレは異常だよ……。石碑で倒したラグナレクよりも更に魔力が強いよ」
「ああ。俺も考えが甘かった。まさかここまでのやつとはな――」
「どう? ゾクゾクするでしょ」
久々に嫌な汗を掻いている。
初めて辺境の森に飛ばされたあの日、スカルウルフに襲われ死を覚悟した時に匹敵するぐらいヤバい感じだ。それこそ死を覚悟で全力を振り絞って勝てるかどうか。こりゃいよいよドミナトルに頼る他ないかもな。
「と、止まるなぁぁッ! 砲撃開始! 撃てェェェ!」
震える声ながらも、その場の指揮を任されていたであろう団員が、凍りついた静寂の場を破るかの如く大声を上げた。その掛け声でハッと我に返った団員達が即座に反応し、準備していた大砲や弓を一斉にラグナレク目掛けて放った。
ラグナレクは静かに直立不動していたが、団員達の一斉攻撃とほぼ同じタイミングでゆっくりと歩き出していた。
流石鍛えられた団員達。この緊迫する中でも、放った無数の弾や弓がほぼ全て正確にラグナレクに向かっている。そして、瞬く間に攻撃の雨が奴に降り注いだ。
――ズドドドドドドドドドドッ!!
「撃て撃て撃てェェ! 攻撃の手を緩めるな!」
団員達の攻撃を皮切りに、冒険者達も慣れない手つきで大砲を撃ちまくっている。更にその周りでは魔法団員が魔力を練り上げ……火の玉、火の矢、水の玉、氷の矢、風の刃、雷の玉、雷の矢など無数の様々な魔法攻撃がラグナレク目掛けて飛んで行く。
最初の攻撃からまだ十数秒。
既に星の数程の攻撃がラグナレクに向かって放たれかなりの数が奴に直撃してたが、これはやはりと言うべきかラグナレクはそれだけの攻撃を食らいながらも変わらずこちらに向かってゆっくりと歩みを進めていた――。
「まるで効いていないな」
「攻撃は確かに直撃しているが、まるですり抜けている様に見える」
「元々あの程度の攻撃ではダメージになっていない上に、ラグナレクの自己再生能力が異常なのよ……。だから降り注いでいる攻撃がすり抜けている様に見えるの。
まるで実体の無い水や煙に攻撃しているみたいにね……」
「フフフフ。そりゃ私の王2級魔法でも無傷なんだから無理よね」
ラグナレクに攻撃が全く効いていないのは明らかであったが、前線はその攻撃の手を休める事無く更に攻撃を重ねた。
「着実に奴にはダメージになっている筈だ! 奴を倒せば、お前達には一生遊んで暮らせる報酬が王家から約束されている! 総員かかれェェッ!」
「「うおぉぉぉぉぉぉッ!!」」
前線を任されていた団員が再び指示を出して場の士気を上げた。その指示によって前線に待機していた大勢の冒険者達が武器を振りかぶりながらラグナレクに突撃して行く。そしてその直ぐ後ろからも騎士団員達も後を追う様に突っ込んで行った。周りには砲撃部隊、弓部隊、そして魔法団員達も配置されている。
「うらぁぁぁ!」
「コイツを倒せば大金持ちぞ皆ッ!」
「死ね化け物!!」
最前線の冒険者達の中でも更に先頭を走っていた者が1人、2人、3人……最初にラグナレクの元へ辿り着いた数名がほぼ同時に手にしていた武器を奴に振り下ろした――。
だが次の刹那。
冒険者達の振り下ろした武器の切っ先がラグナレクに届く寸前、奴が突如大きく口を開け、神々しい青白い光は纏った凄まじい咆哮を放ったのだった。
――ズボォォォォォォッ!!
「「……⁉⁉」」
まるで流れ星かの如く放たれたラグナレクの一筋の咆哮は、その青白い強い光が一瞬で消え去ると同時に、大地と“そこいた筈”の大勢の者達を塵1つ残さず消滅させてしまっていた――。
「嘘……ッ」
「これは思った以上にマズいかもね。持つかしら?」
やはり洞窟と石碑で相手にしたラグナレクとは比にならない。最早天災レベルの威力だぞこんなの。
その破壊的な咆哮から運良く逃れた者達もいたが、全員が一点を見つめながら体を小刻み震わせ絶望の表情を浮かべていた。
「に、逃げなきゃ……」
冒険者の1人が消えそうな声でそう呟くと、我に返った冒険者や団員達は瞬く間にラグナレクを背を向け逃げ走った。
「「逃げろぉぉぉぉぉッ!!」」
皆が一斉に逃げ惑う。
それを見たラグナレクは体の重心を低くするや否や、逃げる者達の先頭まで一瞬にして移動した。
そして奴は静かに右腕を振りかぶり、その鋭い鉤爪の生えた腕で眼前の集団をまとめて薙ぎ払おうとした。
――ガキィィンッ!
「「……⁉」」
「あら、いつの間に?」
「重ッ……!」
奴の腕が振り下ろされる寸前、反射的に飛び出していた俺は剣で奴の攻撃を防いだ。
「グリムッ⁉」
「出遅れた。俺も手合わせ願おうラグナレク!」
軽く振った様に見えたラグナレクの攻撃はかなり重かった。こんなのまともに食らったら即死だな。
攻撃を受け止めた俺は奴の腕を払い、一旦距離を取った。
「こりゃ命が幾らあっても割に合わん。命の無駄使いだ」
「抜け駆けは許さんぞグリム。次は俺だ」
「いや、どう考えても今そういう状況じゃねぇだろフーリン……」
「2人共絶対に無理はしないで! 私も出来る限りサポートするから!」
「バウワウ!」
「フフフ。どうやら前座はもう終わり……いきなり大将戦ね」
目の前には第5形態ラグナレク。
俺とフーリンは武器を構えて奴と正面から対峙する。
そして、俺達を“敵”と認識したラグナレクは、空気が震える程のけたたましい雄叫びを上げながらこっちに飛び掛かってきた――。
そして……奴の異常な程悍ましい強大な魔力が、一瞬にしてこの場にいる全員に戦慄を走らせた――。
「……か、か、体が……」
「化け物だ……!」
「何なんだコイツ……⁉」
「た……た、助けてくれ……ッ!」
場が恐怖で凍りつく。
有象無象の冒険者は当然の如く、鍛錬された騎士魔法団員であってさえも恐怖や困惑が生まれていた。目の前にいる相手は間違いなく今まで出会った中で最強の存在。
「これは相当な強者……!」
「グリム……アレは異常だよ……。石碑で倒したラグナレクよりも更に魔力が強いよ」
「ああ。俺も考えが甘かった。まさかここまでのやつとはな――」
「どう? ゾクゾクするでしょ」
久々に嫌な汗を掻いている。
初めて辺境の森に飛ばされたあの日、スカルウルフに襲われ死を覚悟した時に匹敵するぐらいヤバい感じだ。それこそ死を覚悟で全力を振り絞って勝てるかどうか。こりゃいよいよドミナトルに頼る他ないかもな。
「と、止まるなぁぁッ! 砲撃開始! 撃てェェェ!」
震える声ながらも、その場の指揮を任されていたであろう団員が、凍りついた静寂の場を破るかの如く大声を上げた。その掛け声でハッと我に返った団員達が即座に反応し、準備していた大砲や弓を一斉にラグナレク目掛けて放った。
ラグナレクは静かに直立不動していたが、団員達の一斉攻撃とほぼ同じタイミングでゆっくりと歩き出していた。
流石鍛えられた団員達。この緊迫する中でも、放った無数の弾や弓がほぼ全て正確にラグナレクに向かっている。そして、瞬く間に攻撃の雨が奴に降り注いだ。
――ズドドドドドドドドドドッ!!
「撃て撃て撃てェェ! 攻撃の手を緩めるな!」
団員達の攻撃を皮切りに、冒険者達も慣れない手つきで大砲を撃ちまくっている。更にその周りでは魔法団員が魔力を練り上げ……火の玉、火の矢、水の玉、氷の矢、風の刃、雷の玉、雷の矢など無数の様々な魔法攻撃がラグナレク目掛けて飛んで行く。
最初の攻撃からまだ十数秒。
既に星の数程の攻撃がラグナレクに向かって放たれかなりの数が奴に直撃してたが、これはやはりと言うべきかラグナレクはそれだけの攻撃を食らいながらも変わらずこちらに向かってゆっくりと歩みを進めていた――。
「まるで効いていないな」
「攻撃は確かに直撃しているが、まるですり抜けている様に見える」
「元々あの程度の攻撃ではダメージになっていない上に、ラグナレクの自己再生能力が異常なのよ……。だから降り注いでいる攻撃がすり抜けている様に見えるの。
まるで実体の無い水や煙に攻撃しているみたいにね……」
「フフフフ。そりゃ私の王2級魔法でも無傷なんだから無理よね」
ラグナレクに攻撃が全く効いていないのは明らかであったが、前線はその攻撃の手を休める事無く更に攻撃を重ねた。
「着実に奴にはダメージになっている筈だ! 奴を倒せば、お前達には一生遊んで暮らせる報酬が王家から約束されている! 総員かかれェェッ!」
「「うおぉぉぉぉぉぉッ!!」」
前線を任されていた団員が再び指示を出して場の士気を上げた。その指示によって前線に待機していた大勢の冒険者達が武器を振りかぶりながらラグナレクに突撃して行く。そしてその直ぐ後ろからも騎士団員達も後を追う様に突っ込んで行った。周りには砲撃部隊、弓部隊、そして魔法団員達も配置されている。
「うらぁぁぁ!」
「コイツを倒せば大金持ちぞ皆ッ!」
「死ね化け物!!」
最前線の冒険者達の中でも更に先頭を走っていた者が1人、2人、3人……最初にラグナレクの元へ辿り着いた数名がほぼ同時に手にしていた武器を奴に振り下ろした――。
だが次の刹那。
冒険者達の振り下ろした武器の切っ先がラグナレクに届く寸前、奴が突如大きく口を開け、神々しい青白い光は纏った凄まじい咆哮を放ったのだった。
――ズボォォォォォォッ!!
「「……⁉⁉」」
まるで流れ星かの如く放たれたラグナレクの一筋の咆哮は、その青白い強い光が一瞬で消え去ると同時に、大地と“そこいた筈”の大勢の者達を塵1つ残さず消滅させてしまっていた――。
「嘘……ッ」
「これは思った以上にマズいかもね。持つかしら?」
やはり洞窟と石碑で相手にしたラグナレクとは比にならない。最早天災レベルの威力だぞこんなの。
その破壊的な咆哮から運良く逃れた者達もいたが、全員が一点を見つめながら体を小刻み震わせ絶望の表情を浮かべていた。
「に、逃げなきゃ……」
冒険者の1人が消えそうな声でそう呟くと、我に返った冒険者や団員達は瞬く間にラグナレクを背を向け逃げ走った。
「「逃げろぉぉぉぉぉッ!!」」
皆が一斉に逃げ惑う。
それを見たラグナレクは体の重心を低くするや否や、逃げる者達の先頭まで一瞬にして移動した。
そして奴は静かに右腕を振りかぶり、その鋭い鉤爪の生えた腕で眼前の集団をまとめて薙ぎ払おうとした。
――ガキィィンッ!
「「……⁉」」
「あら、いつの間に?」
「重ッ……!」
奴の腕が振り下ろされる寸前、反射的に飛び出していた俺は剣で奴の攻撃を防いだ。
「グリムッ⁉」
「出遅れた。俺も手合わせ願おうラグナレク!」
軽く振った様に見えたラグナレクの攻撃はかなり重かった。こんなのまともに食らったら即死だな。
攻撃を受け止めた俺は奴の腕を払い、一旦距離を取った。
「こりゃ命が幾らあっても割に合わん。命の無駄使いだ」
「抜け駆けは許さんぞグリム。次は俺だ」
「いや、どう考えても今そういう状況じゃねぇだろフーリン……」
「2人共絶対に無理はしないで! 私も出来る限りサポートするから!」
「バウワウ!」
「フフフ。どうやら前座はもう終わり……いきなり大将戦ね」
目の前には第5形態ラグナレク。
俺とフーリンは武器を構えて奴と正面から対峙する。
そして、俺達を“敵”と認識したラグナレクは、空気が震える程のけたたましい雄叫びを上げながらこっちに飛び掛かってきた――。