~リューティス王国・玉座の間~
部屋の奥に存在する王の玉座に静かに座っている1人の男。
頭には黄金の冠を乗せ、背からは気品のあるマント垂らしている。鋭い眼光と髭をたくわえた威圧感のあるその老人は、他でもないリューティス王国の国王である。
玉座に座る国王の前には騎士魔法団の甲冑やローブを纏った者達がいた。数は全部で20数人。その全員に施されている王国の紋章は赤色。スキル覚醒者であり、全員がそれぞれ騎士魔法団の団長の証である“金色のブローチ”を胸元に付けている。
「――国王様。 辺境の森近くにある村にて確認された白銀のモンスターと謎の青年の新たな情報でありますが、村にいた第八騎士団のラシェル団長を攻撃した後に白銀のモンスター共に逃亡。それ以降の行方は今現在新たな目撃情報が入っておりません。
更にノーバディの巣であると思われる遺跡に向かったオレオールの魔法団エンビア団長率いる第十魔法団ですが、討伐に向かった当日から突如連絡が途絶えており、先程他の団員が確認しに行った所、ノーバディの巣と思われる洞窟が崩落しており落石の下敷きになった者やノーバディに襲われたと見られる遺体が多く転がっていたそうです。
まだエンビア団長の姿は確認されておりませんが、現場では彼女の壊れた杖が既に見つかっております。報告は以上です」
団長の1人が国王にそう伝えると、玉座に座っている国王が静かに口を開いた。
「成程、報告ご苦労であった。それにしても、まさかエンビア団長がやられるとはな。彼女はオレオールや此処の王都でも確か名が知られていた実力者であっただろう?」
「はい」
「実に貴重な戦力を失ってしまったな。やはり終焉の影響は凄まじい。エンビア団長がやられたという事は、そこにいたノーバディはどうなったのだ? まさか王国内を散歩している訳ではなかろうな」
「いえ。報告によりますと、洞窟内にいたノーバディは本体ではなかったそうですが、“頭部”を持つ上位クラスのノーバディと確認されております。
現場で斬られた頭2つと胴体に残ったままの頭が2つ。恐らく元は4つ頭だったと見られる上位ノーバディの残骸があったとの事です」
「ほお。それは一体“誰”が倒したのだ? 斬られたのならばエンビア団長ではないと思うが――」
真意に迫る国王の目つきが鋭くなった。
「国王様の仰る通り、現場の調査ではノーバディが倒されたのは恐らく鋭い“剣”か何かであろうと。エンビア団長は風魔法の使い手でありますが、彼女の魔法攻撃によるものとは異なると調べが出ています。
これは今可能性として追っている段階でありますが、洞窟にいた4つ頭のノーバディを倒したのは恐らく白銀のモンスターと共に行方をくらましている、例の謎の青年かと――。
彼が剣を使っていた事は既に幾つか確認されておりますので」
団長がそう報告をし終えた時、国王には“ある人物”の顔が一瞬脳裏を過っていた。
「そうか。分かった。引き続き白銀のモンスターを最優先で探し出せ。それを連れている男もな。事態は一刻を争っている。何が何でも見つけるのだ!」
「「はッ!!」」
国王の命により、その場にいた団長達は直ぐに玉座の間を後にした。
(辺境の森の周辺……。謎の青年に……剣……。今の報告を聞いて何故一瞬“彼”の顔が浮かんだのだ?
もうかれこれ8年ぐらいになるか。
由緒あるレオハート家とこのリューティス王国の面汚しとして辺境の森に飛ばしたグリードの“息子”。流石に奴の息子であったとしても、スキル未覚醒の子供が辺境の森で生き抜くなど到底有り得ぬわ。
こんな下らぬ事を一瞬でも考えてしまうなど、私も随分歳を取ったか
――)
国王が1人そんな事を思っていると、玉座の間に待機している家来が口を開いた。
「国王様。白銀のモンスター討伐に向かわせようとしておりました“七聖天《しちせいてん》”の2人ですが、1人は上位クラスのノーバディと戦っており、それを倒した後にもすぐ隣のフィンスター都市に現れたノーバディの討伐に行かねばならず対応出来ないとの事。
ですが、もう1人の……「――お呼びですか国王様?」
「おお。来てくれたか“ユリマ”」
突如現れた1人の女。
スラっとした細身の体系で紫色の長い髪を結んでおり、手には淡く光る分厚い“書”が握られていた。
彼女の名は“ユリマ・サーゲノム”。
リューティス王国が誇る“7つの神器”の内の1つである『魔道賢書ノアズ』を与えられた七聖天の1人。七聖天は他国にも名を轟かせるリューティス王国の騎士魔法団団長達の更に上の実力を持つ選ばれし者達である。
「今日は“予知通り”此処まで足を運ばせて頂きました。他の七聖天の方々も皆ノーバディと懸命に戦っております故、今国王様の命を受けられるのは私だけです」
ユリマはそう言いながら静かに笑った。
「フハハハ。流石、神器を与えられた選ばれし者であるなユリマ。何時もの如く其方には“全てお見通し”という訳か」
「はい。既に私は白銀のモンスターと彼らの居場所も知っております。王国の害となる彼らを消すという事で宜しいのですよね」
「その通りだ。話が早くて助かるぞユリマよ。其方の力ならば必ずや遂行出来るだろう。後は頼む」
「分かりました――」
国王からの命を受け、再び笑みを浮かべたユリマは玉座の間を後にした。
リューティス王国最大の力である七聖天が1人、ユリマ・サーゲノムの影がグリム達に忍び寄る――。
部屋の奥に存在する王の玉座に静かに座っている1人の男。
頭には黄金の冠を乗せ、背からは気品のあるマント垂らしている。鋭い眼光と髭をたくわえた威圧感のあるその老人は、他でもないリューティス王国の国王である。
玉座に座る国王の前には騎士魔法団の甲冑やローブを纏った者達がいた。数は全部で20数人。その全員に施されている王国の紋章は赤色。スキル覚醒者であり、全員がそれぞれ騎士魔法団の団長の証である“金色のブローチ”を胸元に付けている。
「――国王様。 辺境の森近くにある村にて確認された白銀のモンスターと謎の青年の新たな情報でありますが、村にいた第八騎士団のラシェル団長を攻撃した後に白銀のモンスター共に逃亡。それ以降の行方は今現在新たな目撃情報が入っておりません。
更にノーバディの巣であると思われる遺跡に向かったオレオールの魔法団エンビア団長率いる第十魔法団ですが、討伐に向かった当日から突如連絡が途絶えており、先程他の団員が確認しに行った所、ノーバディの巣と思われる洞窟が崩落しており落石の下敷きになった者やノーバディに襲われたと見られる遺体が多く転がっていたそうです。
まだエンビア団長の姿は確認されておりませんが、現場では彼女の壊れた杖が既に見つかっております。報告は以上です」
団長の1人が国王にそう伝えると、玉座に座っている国王が静かに口を開いた。
「成程、報告ご苦労であった。それにしても、まさかエンビア団長がやられるとはな。彼女はオレオールや此処の王都でも確か名が知られていた実力者であっただろう?」
「はい」
「実に貴重な戦力を失ってしまったな。やはり終焉の影響は凄まじい。エンビア団長がやられたという事は、そこにいたノーバディはどうなったのだ? まさか王国内を散歩している訳ではなかろうな」
「いえ。報告によりますと、洞窟内にいたノーバディは本体ではなかったそうですが、“頭部”を持つ上位クラスのノーバディと確認されております。
現場で斬られた頭2つと胴体に残ったままの頭が2つ。恐らく元は4つ頭だったと見られる上位ノーバディの残骸があったとの事です」
「ほお。それは一体“誰”が倒したのだ? 斬られたのならばエンビア団長ではないと思うが――」
真意に迫る国王の目つきが鋭くなった。
「国王様の仰る通り、現場の調査ではノーバディが倒されたのは恐らく鋭い“剣”か何かであろうと。エンビア団長は風魔法の使い手でありますが、彼女の魔法攻撃によるものとは異なると調べが出ています。
これは今可能性として追っている段階でありますが、洞窟にいた4つ頭のノーバディを倒したのは恐らく白銀のモンスターと共に行方をくらましている、例の謎の青年かと――。
彼が剣を使っていた事は既に幾つか確認されておりますので」
団長がそう報告をし終えた時、国王には“ある人物”の顔が一瞬脳裏を過っていた。
「そうか。分かった。引き続き白銀のモンスターを最優先で探し出せ。それを連れている男もな。事態は一刻を争っている。何が何でも見つけるのだ!」
「「はッ!!」」
国王の命により、その場にいた団長達は直ぐに玉座の間を後にした。
(辺境の森の周辺……。謎の青年に……剣……。今の報告を聞いて何故一瞬“彼”の顔が浮かんだのだ?
もうかれこれ8年ぐらいになるか。
由緒あるレオハート家とこのリューティス王国の面汚しとして辺境の森に飛ばしたグリードの“息子”。流石に奴の息子であったとしても、スキル未覚醒の子供が辺境の森で生き抜くなど到底有り得ぬわ。
こんな下らぬ事を一瞬でも考えてしまうなど、私も随分歳を取ったか
――)
国王が1人そんな事を思っていると、玉座の間に待機している家来が口を開いた。
「国王様。白銀のモンスター討伐に向かわせようとしておりました“七聖天《しちせいてん》”の2人ですが、1人は上位クラスのノーバディと戦っており、それを倒した後にもすぐ隣のフィンスター都市に現れたノーバディの討伐に行かねばならず対応出来ないとの事。
ですが、もう1人の……「――お呼びですか国王様?」
「おお。来てくれたか“ユリマ”」
突如現れた1人の女。
スラっとした細身の体系で紫色の長い髪を結んでおり、手には淡く光る分厚い“書”が握られていた。
彼女の名は“ユリマ・サーゲノム”。
リューティス王国が誇る“7つの神器”の内の1つである『魔道賢書ノアズ』を与えられた七聖天の1人。七聖天は他国にも名を轟かせるリューティス王国の騎士魔法団団長達の更に上の実力を持つ選ばれし者達である。
「今日は“予知通り”此処まで足を運ばせて頂きました。他の七聖天の方々も皆ノーバディと懸命に戦っております故、今国王様の命を受けられるのは私だけです」
ユリマはそう言いながら静かに笑った。
「フハハハ。流石、神器を与えられた選ばれし者であるなユリマ。何時もの如く其方には“全てお見通し”という訳か」
「はい。既に私は白銀のモンスターと彼らの居場所も知っております。王国の害となる彼らを消すという事で宜しいのですよね」
「その通りだ。話が早くて助かるぞユリマよ。其方の力ならば必ずや遂行出来るだろう。後は頼む」
「分かりました――」
国王からの命を受け、再び笑みを浮かべたユリマは玉座の間を後にした。
リューティス王国最大の力である七聖天が1人、ユリマ・サーゲノムの影がグリム達に忍び寄る――。