今の話が全部の真相だとするならば、俺の母さんを殺した元凶がソイツだ。
オロチ……。
どんな奴なのか全く分からないが、絶対にお前を始末してやるからな。
<あのオロチが動き出しているとなると、かなり面倒だ。もう既に奴に先手を打たれているも同然。何が最終的な目的か知らんが、これからは気を引き締めろルカ>
「ああ。お前をハメて母さんを殺した奴なんて絶対見過ごせねぇ。絶対倒すぞジーク!
ヴァン、グレイとオロチって繋がっているのかな? だとしたら奴らはまだペトラ遺跡に?」
直ぐにでも行って奴を倒したい――。
「どうかな……。何が目的かは分からないが、オロチとグレイが一緒にいる可能性はかなり高い。それに一応ペトラ遺跡ではグレイと思われる人物も見つけたからずっと他の隊が監視している。
特に新しい情報が入ってこないから、恐らく奴らはまだペトラ遺跡にいるだろうな」
「だとしたら尚更行こう。場所が分かってるならチャンスじゃないか」
俺が行きかけた瞬間、ヴァンとクレーグに止められた。
「ちょっと待てルカ。その独断はマズイ」
「そうだね。流石に相手があのオロチとなれば、国王に1度報告しないと。ジークリートがハメられたとなると相当ヤバいやつだろう」
「確かにそうだけど……」
「焦るなルカ。奴はちゃんと他の隊が監視してる。やり合うならやり合うで、こちらも総力戦で挑むぐらいの覚悟じゃなきゃ危ない。国民もな」
確かに……。ヴァンとクレーグの言う通りだ。俺だけの独断で関係ない人達にまで危害が及んだら元も子もない。2度と母さんの様な被害を出しちゃいけないんだ――。
「分かりました……」
「大丈夫。僕から直ぐに隊長に報告して、国王にも伝えてもらうから」
「ありがとうございます」
♢♦♢
~特殊隊の寮~
昨日のオロチの話しから一夜明け、今日という日の日が沈んだ頃、徐にクレーグさんが俺のところに来た。
「――ルカごめん。なんかダメみたい。オロチの討伐」
クレーグさんの言葉は余りに意外で俺のやる気を根こそぎ狩った。
「え、どうして⁉」
正直ダメなんて全然思わなかった。寧ろ直ぐに行ってもいいぐらいの勢いだと思ってずっと待っていたのに。何で……⁉
「僕も出来る限りの事は言ったんだけどね、最終的に国王の判断で却下になったみたい」
「そんな……全然納得出来ない」
「まだオロチの実力が不明確な上に、もし仮にオロチを倒しに行くとしても、今行っている任務や他の任務も一時的に中断して戦力を整えないといけない。
確実な勝算が無い限り、そんな危険な方向に舵を取る事は現状出来ないとの事だよ。中でも僕ら特殊隊は国民の為にモンスターを討伐する事が主。みすみす国民を危険に遭わせる可能性があるならば許可出来ないらしい」
なんだそれ……。確かに意見はごもっともだけどさ……。
どうしよう。やっぱ全然納得出来ない。こうなったら……。
「なら俺が国王に直接頼みに行く。図々しく行けば何か変わるかも」
「ハハハ。凄い力技だけど一理あるね。寧ろ最初からその方が君も納得したかもね」
「先ずは隊長に相談します!」
そう言って俺は直ぐにダッジ隊長の部屋に向かった。
~隊長の部屋~
「――今すぐになど無理だ」
「お願いします! ダメならもうこのまま直接行きます!」
無茶苦茶な事を言ってるのは百も承知。でも、目と鼻の先に全ての元凶がいると知った今、とてもじゃないけど気持ちを抑えきれない。
「強情な奴だな……。分かった。ならば2日後だ。俺は国王に報告しなければいけない事があるから、その時にお前も同行しろ」
「分かりました!ありがとうございます!」
本当は今すぐに行きたかったが仕方ない。これ以上は幾ら何でも自己中過ぎるか。急に国王に会える事になっただけ良しとしないとな──。
そして2日後。
俺はダッジ隊長について行き、直接国王と会った。
♢♦︎♢
〜城〜
「──久しぶりであるなルカ。わざわざ志願して隊長について来たそうだがどうした?」
国王は何時もと変わらぬ気品さと真剣な面持ちで俺にそう聞いてきた。
「国王様、急にお時間を取らせてしまい申し訳ございません。本日こうして直談判に来たのは他でもない……オロチの件についてです――」
俺の言葉に国王は特に驚く様子もなかった。恐らく大方の察しは付いていたのだろう。
「成程。その件については先日結論が出た。しかしそれでは不服という事だな?」
「はい……。自分が誠に失礼で勝手な事を言っているのは承知しています。ですが、やはり全ての元凶とも言えるオロチが目の前にいると知ってしまった以上、どうしても奴を倒す事以外考えられません」
国王は俺の申し出に対し、少し悩む様な表情を浮かべた。
無理もない……。全国民や冒険者の命を第一に優先させなければいけない国王と、何の責任もない自己中な俺。国王がそう簡単に判断を下せる訳がない。俺とは違うんだから。
でも国王は最大限俺の意見を尊重してくれようとしている。だから俺もこうしてわざわざ国王に話しをしに来ているんだ。返しきれない程の恩がある国王だからこそ。
「ルカの気持ちは良く分かった。そして私だって奴を倒したいと言う気持ちは当然ある。相手が他でもないあのオロチだからな。ジークリートが君の中にいる以上、最早奴が全モンスターのトップと言っていい存在だろう――。
でもだからこそ、計り知れぬ奴と対抗する為にはこちらも相応の準備が必要となる。まぁ正直君とジークリートが誰かに負けるという事が想像出来ぬが、そのジークリートを奴が封印したのもまた事実だ……。
ルカよ。本音を言うと私は迷っている。
確かに全ての元凶と言っても過言ではないオロチを討ち取れるならば、それい以上の成果はない。だがそれと同時に、奴を倒すからと言ってそこに戦力を注ぎ込む事を直ぐには出来ぬ。王国と国民の安全が掛かっているからな。
よって、もう好きに決めてくれ君が――」
ん……? え、どういう結論なのこれ……。
「なんだ? オロチの討伐許可が欲しくてわざわざ私の所に直談判しに来たのだろう? だから奴の討伐を許可する!
ただし、対オロチ用に特別な命令は勿論出せぬ。動く事は許可するが、奴を討伐しに行く戦力は自身で集めるのだ!」
国王は俺に堂々とそう言い放った。
「戦力を自分で……。それって、俺の身勝手に付き合ってくれる物好きを勝手に誘えって事ですよね? 」
「ああそうだ。君の思う様に動いてオロチ討伐に向かって構わん。だが王国の安全が手薄になったり、他の任務に差し支えが出そうな人選ならば私が止める。それ以外なら後は好きに動いてくれ」
何だそれは。そんなの好きに動ていいと言っておきながら結局は人選も限られてるんじゃ……。
「あの……因みにそれって、俺1人で行ってもいいんですか……?」
「“私は”構わぬ。たった今好きに動いて良いと許可を出したからな」
「私は……?」
何だろう、この含みのある言い方は……っと思った次の瞬間、聞こえたきたのはダッジ隊長の声だった。
「――ルカ。オロチの討伐に行くと言うのならば、勿論隊長である私の許可がなくてはダメだ」
おっと、まさかのパターン。
「え、あの……隊長、俺オロチの討伐行っていいんですよッ……「ダメだ」
「え! 何ででッ……「俺と勝負して勝ったら許可を出そう」
おいおい。何だこの流れは……。取り敢えずオロチの討伐は行っていいのか? そして俺はダッジ隊長と戦わなければいけないって事か?
俺が今の状況を飲み込めずあたふたしていると、国王は何が面白いのか分からないが少し笑っている様に見えるし、ダッジ隊長に限っては本当にやる気満々だ――。
「そうか。ルカとダッジ隊長が戦うか……。これは私個人的にも凄く興味がある。
良かろう! ならば明日、オロチ討伐許可を懸け正式に両者が決闘する事を認めるぞ!」
何故そうなる!
俺の心の叫びも虚しく、話は一気に進んでしまった。
「場所は特殊隊の訓練場にて行う! SSSランク“同士”の戦いだからな、特別に観覧も許可するとしよう。盛り上がりそうだ」
「決まりだなルカ。俺に勝てたら正式に討伐許可を出す。好きに動いていい。それに特殊隊は出来る限りお前のサポートに付いてやる」
こうして、ツッコミどころ満載なまま、俺はダッジ隊長との決闘が正式に決まった――。
……何で??
オロチ……。
どんな奴なのか全く分からないが、絶対にお前を始末してやるからな。
<あのオロチが動き出しているとなると、かなり面倒だ。もう既に奴に先手を打たれているも同然。何が最終的な目的か知らんが、これからは気を引き締めろルカ>
「ああ。お前をハメて母さんを殺した奴なんて絶対見過ごせねぇ。絶対倒すぞジーク!
ヴァン、グレイとオロチって繋がっているのかな? だとしたら奴らはまだペトラ遺跡に?」
直ぐにでも行って奴を倒したい――。
「どうかな……。何が目的かは分からないが、オロチとグレイが一緒にいる可能性はかなり高い。それに一応ペトラ遺跡ではグレイと思われる人物も見つけたからずっと他の隊が監視している。
特に新しい情報が入ってこないから、恐らく奴らはまだペトラ遺跡にいるだろうな」
「だとしたら尚更行こう。場所が分かってるならチャンスじゃないか」
俺が行きかけた瞬間、ヴァンとクレーグに止められた。
「ちょっと待てルカ。その独断はマズイ」
「そうだね。流石に相手があのオロチとなれば、国王に1度報告しないと。ジークリートがハメられたとなると相当ヤバいやつだろう」
「確かにそうだけど……」
「焦るなルカ。奴はちゃんと他の隊が監視してる。やり合うならやり合うで、こちらも総力戦で挑むぐらいの覚悟じゃなきゃ危ない。国民もな」
確かに……。ヴァンとクレーグの言う通りだ。俺だけの独断で関係ない人達にまで危害が及んだら元も子もない。2度と母さんの様な被害を出しちゃいけないんだ――。
「分かりました……」
「大丈夫。僕から直ぐに隊長に報告して、国王にも伝えてもらうから」
「ありがとうございます」
♢♦♢
~特殊隊の寮~
昨日のオロチの話しから一夜明け、今日という日の日が沈んだ頃、徐にクレーグさんが俺のところに来た。
「――ルカごめん。なんかダメみたい。オロチの討伐」
クレーグさんの言葉は余りに意外で俺のやる気を根こそぎ狩った。
「え、どうして⁉」
正直ダメなんて全然思わなかった。寧ろ直ぐに行ってもいいぐらいの勢いだと思ってずっと待っていたのに。何で……⁉
「僕も出来る限りの事は言ったんだけどね、最終的に国王の判断で却下になったみたい」
「そんな……全然納得出来ない」
「まだオロチの実力が不明確な上に、もし仮にオロチを倒しに行くとしても、今行っている任務や他の任務も一時的に中断して戦力を整えないといけない。
確実な勝算が無い限り、そんな危険な方向に舵を取る事は現状出来ないとの事だよ。中でも僕ら特殊隊は国民の為にモンスターを討伐する事が主。みすみす国民を危険に遭わせる可能性があるならば許可出来ないらしい」
なんだそれ……。確かに意見はごもっともだけどさ……。
どうしよう。やっぱ全然納得出来ない。こうなったら……。
「なら俺が国王に直接頼みに行く。図々しく行けば何か変わるかも」
「ハハハ。凄い力技だけど一理あるね。寧ろ最初からその方が君も納得したかもね」
「先ずは隊長に相談します!」
そう言って俺は直ぐにダッジ隊長の部屋に向かった。
~隊長の部屋~
「――今すぐになど無理だ」
「お願いします! ダメならもうこのまま直接行きます!」
無茶苦茶な事を言ってるのは百も承知。でも、目と鼻の先に全ての元凶がいると知った今、とてもじゃないけど気持ちを抑えきれない。
「強情な奴だな……。分かった。ならば2日後だ。俺は国王に報告しなければいけない事があるから、その時にお前も同行しろ」
「分かりました!ありがとうございます!」
本当は今すぐに行きたかったが仕方ない。これ以上は幾ら何でも自己中過ぎるか。急に国王に会える事になっただけ良しとしないとな──。
そして2日後。
俺はダッジ隊長について行き、直接国王と会った。
♢♦︎♢
〜城〜
「──久しぶりであるなルカ。わざわざ志願して隊長について来たそうだがどうした?」
国王は何時もと変わらぬ気品さと真剣な面持ちで俺にそう聞いてきた。
「国王様、急にお時間を取らせてしまい申し訳ございません。本日こうして直談判に来たのは他でもない……オロチの件についてです――」
俺の言葉に国王は特に驚く様子もなかった。恐らく大方の察しは付いていたのだろう。
「成程。その件については先日結論が出た。しかしそれでは不服という事だな?」
「はい……。自分が誠に失礼で勝手な事を言っているのは承知しています。ですが、やはり全ての元凶とも言えるオロチが目の前にいると知ってしまった以上、どうしても奴を倒す事以外考えられません」
国王は俺の申し出に対し、少し悩む様な表情を浮かべた。
無理もない……。全国民や冒険者の命を第一に優先させなければいけない国王と、何の責任もない自己中な俺。国王がそう簡単に判断を下せる訳がない。俺とは違うんだから。
でも国王は最大限俺の意見を尊重してくれようとしている。だから俺もこうしてわざわざ国王に話しをしに来ているんだ。返しきれない程の恩がある国王だからこそ。
「ルカの気持ちは良く分かった。そして私だって奴を倒したいと言う気持ちは当然ある。相手が他でもないあのオロチだからな。ジークリートが君の中にいる以上、最早奴が全モンスターのトップと言っていい存在だろう――。
でもだからこそ、計り知れぬ奴と対抗する為にはこちらも相応の準備が必要となる。まぁ正直君とジークリートが誰かに負けるという事が想像出来ぬが、そのジークリートを奴が封印したのもまた事実だ……。
ルカよ。本音を言うと私は迷っている。
確かに全ての元凶と言っても過言ではないオロチを討ち取れるならば、それい以上の成果はない。だがそれと同時に、奴を倒すからと言ってそこに戦力を注ぎ込む事を直ぐには出来ぬ。王国と国民の安全が掛かっているからな。
よって、もう好きに決めてくれ君が――」
ん……? え、どういう結論なのこれ……。
「なんだ? オロチの討伐許可が欲しくてわざわざ私の所に直談判しに来たのだろう? だから奴の討伐を許可する!
ただし、対オロチ用に特別な命令は勿論出せぬ。動く事は許可するが、奴を討伐しに行く戦力は自身で集めるのだ!」
国王は俺に堂々とそう言い放った。
「戦力を自分で……。それって、俺の身勝手に付き合ってくれる物好きを勝手に誘えって事ですよね? 」
「ああそうだ。君の思う様に動いてオロチ討伐に向かって構わん。だが王国の安全が手薄になったり、他の任務に差し支えが出そうな人選ならば私が止める。それ以外なら後は好きに動いてくれ」
何だそれは。そんなの好きに動ていいと言っておきながら結局は人選も限られてるんじゃ……。
「あの……因みにそれって、俺1人で行ってもいいんですか……?」
「“私は”構わぬ。たった今好きに動いて良いと許可を出したからな」
「私は……?」
何だろう、この含みのある言い方は……っと思った次の瞬間、聞こえたきたのはダッジ隊長の声だった。
「――ルカ。オロチの討伐に行くと言うのならば、勿論隊長である私の許可がなくてはダメだ」
おっと、まさかのパターン。
「え、あの……隊長、俺オロチの討伐行っていいんですよッ……「ダメだ」
「え! 何ででッ……「俺と勝負して勝ったら許可を出そう」
おいおい。何だこの流れは……。取り敢えずオロチの討伐は行っていいのか? そして俺はダッジ隊長と戦わなければいけないって事か?
俺が今の状況を飲み込めずあたふたしていると、国王は何が面白いのか分からないが少し笑っている様に見えるし、ダッジ隊長に限っては本当にやる気満々だ――。
「そうか。ルカとダッジ隊長が戦うか……。これは私個人的にも凄く興味がある。
良かろう! ならば明日、オロチ討伐許可を懸け正式に両者が決闘する事を認めるぞ!」
何故そうなる!
俺の心の叫びも虚しく、話は一気に進んでしまった。
「場所は特殊隊の訓練場にて行う! SSSランク“同士”の戦いだからな、特別に観覧も許可するとしよう。盛り上がりそうだ」
「決まりだなルカ。俺に勝てたら正式に討伐許可を出す。好きに動いていい。それに特殊隊は出来る限りお前のサポートに付いてやる」
こうして、ツッコミどころ満載なまま、俺はダッジ隊長との決闘が正式に決まった――。
……何で??