成程、空間魔法ってあんな使い方も出来るのか。

<奴の空間魔法は少し違うな>
「お、ジーク。起きたのか」
<ああ、コイツだけ少しは暇つぶしになりそうだ。奴の空間魔法は全てを吸収している。我の様に空間に留めておく事は出来ない。言わば我の劣化版だ>

 そういう事らしい。まぁそれでもそこそこ厄介なのは変わらないぞ。

「お前何でこんな下らない事しているんだ?」
「は? どこが下らねぇんだよ。こんな効率よく稼げるもの他にねぇだろうが!ヒャハハハ! 頭が弱いみたいだなお前も。俺の部下もあんまり頭が良くねぇ。だからこれを思いついた俺が天才で俺がボスなのさ!
“国王お墨付き”なんだから間違いねぇだろうが。ヒャハハハ!お前強いみたいだから仲間にしてやってもいいぞ?」

 国王のお墨付きだと? 一体何の事だ……。まさかな。

「なんかきな臭い香りがプンプンしてきたぜ。これは俺が思っている以上に闇が深いなきっと」
「何をブツブツ言ってやがる! 仲間にならねぇなら邪魔だから死ねや!」
「お前が死んでくれ――」

 俺は再び連続で魔法を放った。だが奴の空間魔法によって全て吸い込まれてしまった。奴は随分と余裕なのかずっとニヤニヤしている。

「無駄無駄無駄ぁぁ! どれだけ攻撃しても俺には全部聞かねぇんだよ!」
「じゃあ斬る」

 ――ガキィィン!
「……!」
「だから無駄だって言ってるだろアホが! こんなの魔力を纏ってなきゃただの鉄の塊さ!甘く見るな、これでも俺はSSSランクだからなぁ。ヒャハハハ!」

 奴の言う通り、剣に纏っていた雷はどんどん吸い込まれてしまっていた。コイツSSSランクなのか。ちょっとだけ納得。

<ルカ、コイツの魔力量は相当だ。クレーグよりかなり多く吸い取るぞ。まぁ逆を言えば……それだけなのだが>
「そうなのか。なら1発で奴の吸い込める量を上回れば終わりだな」

 奴もSSSランクなら結構力を込めて大丈夫だろ。俺は風魔法で手のひらサイスの小さい圧縮した風の弾を生み出した。そしてそこにこれでもかと魔力を込める。

「ハハハ、出来た。魔力を超圧縮した風のボール」
「余所見してんじゃねぇぞ!」

 奴が俺目掛けて剣を振り下ろそうとしてきたので、そっと風のボールを奴に投げてあげた。すると今まで通り何の疑いもなくボールを吸い込んだ。

「なんだこりゃ、失敗か? 悪いがこっちも暇じゃねぇッ……『――ズパァァァン!』

 皆まで言いかけた次の瞬間、超圧縮のボールを吸い込んだ奴は破裂するかの如く思い切り吹き飛び、建物の壁を貫通して外の地面に散っていった。

「……がはッ……⁉」
「おー、ビックリした。思った以上に勢いよく破裂したぜ」

 突如建物から飛んできた自分達のあられもないボスの姿を見て、残りの残党も慌てて逃げだして行った。これにて終了。呆気なかったな。

「ルカー!」

 空いた壁の穴から下を見ていると、相変わらず元気なレベッカが大きく手を振ってきた。

「――お疲れ様ですルカ君!」
「うわぁぁ⁉ バ、バロさんッ!」

 この人の登場も相変わらず心臓に悪い。もっと思いやりのある出方はないのだろうか……。他の皆もこんな感じなんだよな? しかも待ってましたと言わんばかりのタイミング。絶対監視してただろコレ。

「流石、ドクロシーフを仕留めてくれた様ですね」
「え、ええまぁ一応……」
「では再び国王様からの伝言です――。
ドクロシーフの件はこのまま他の者が後処理を行う為、ルカ君にはフェニックスの長であるバーレーンとの面会をお願いしたいそうです」
「面会って……国王がですか?」
「はい」
「あ、そうだ!それより牢屋にいる人達を出してあげていいですか?約束してあるんで」
「勿論構いません。ですが、囚われていた者達は重要な参考人でもありますので、こちらで安全に保護させて頂きます」
「分かりました。お願いします」

 俺は魔法で牢屋の鍵を壊し、皆を解放してあげた。その後騎士団員や国王団の他の隊が直ぐに来た為、俺とレベッカはニクスとバーレーンがいるヨーハン遺跡に戻った――。

♢♦♢

~ヨーハン遺跡~

「なんだあれ……」

 俺達が戻ってくると、何やらヨーハン遺跡の上空で炎が上がっていた。よく見るとその炎は一瞬で消えたり再び現れたりしている。

「何か飛んでる?……って熱いな!」

 その炎を確認しようと少し近付いたら、辺りは凄い熱波に包まれていた。それでも何とか少しづつ近づいていくと、上空を舞うニクスとザックの姿を確認した。

 どうやらニクスとザックが戦っている……? いや、どう見てもニクスが一歩的に攻撃してる様にしか見えない。全く状況が理解不能だった俺達は、一先ず下で静観しているバーレーンに報告をした。

「あの……。シドクロシーフの片付け終わりました」
「ルカ、レベッカ。ありがとうございます。流石の実力ですね。これで一安心です」
「後、国王が貴方と面会をしたいらしいんですけど……」
「国王がですか?」
「はい。俺も伝言を預かっただけで詳細は知りませんが」
「そうですか。分かりました。面会を快諾すると国王にお伝え下さい」
「あ、ありがとうございます。それであの……ずっと気になっているんですけど、ニクス達は何を……?」

 そう。一応バーレーンに報告をしているが、上で勢いよく炎を吐いているニクスが気になってしょうがない。

「あの子達はですね――」

 バーレーンは俺達がドクロシーフの所へ向かった後の事を教えてくれた。

 そもそも、今回ニクス達がこのヨーハン遺跡を抜け出してしまったのは私の落ち度であると言ったバーレーン。当然彼らフェニックスにはフェニックスの決まりや暮らしがあり、俺達は詳しい事情まで知らない。

 だが、色々思う事のあるバーレーンは、一先ず今回の一連の原因であるザックに対し、ニクスにお詫びをしなさいと言ったそうだ。しかしザックは面白くなかったのだろう。何時も馬鹿にしていたニクスが遺跡に戻って来た事や魔法が使える様になっていた事、そしてザックが悪いにも関わらずバーレーンがニクスを庇っている事に。

 素直に謝れなかったザックは会話の流れで俺達の事を悪く言ったそうだ。そしてそれにニクスが怒りを露にしたらしい。

 突如人化を解き、元のフェニックスの姿に戻ったニクスは、自分で少しずつ魔力のコントロールが出来ていた事もあり、ザックに置き去りにされたあの頃から二回り近く大きなフェニックスの姿に成長していた――。

 バーレーンからそう聞いた時は俺とレベッカも驚いたが、それは上を見れば一目瞭然。空を舞っているニクスの大きさはザックを遥かに上回っていた。

 バーレーンも好き好んで同じ仲間のフェニックス同士を争わせたくなかった。しかもニクスとザックフェニックスの中ではまだ幼鳥。一瞬悩んだバーレーンであったが、聖霊やモンスターも弱肉強食の世界。互いのいざこざの為に、そして今後生きていく1つの経験として、ニクスとザックが正面からぶつかるのを見守る事にしたとの事――。

「ニクス……」

 話を聞いている間もニクス達は戦っていた。そして……。

 ――ズガァン……!
 上を見上げた瞬間、ニクスが鋭い脚でザックを捉えそのまま地上にある岩盤へと押し込んだ。

「ぐッ……ま、待ってくれニクス……ッ!」
「私の事はいい……。でも、ルカさん達を侮辱した事は絶対に許さないわよ!謝りなさいッ!」
「わ、分かった……!ご、ごめんよ……」
「声が小さいッ!」
「ご、ごめんなさい!」

 ザックは泣きながらニクスに謝った。
 それを見て落ち着いたのか、ニクスは再び人の姿に戻っていった。

「次言ったらもう許さないからね!」
「ニクス」
「バーレーン様……」
「ザックがした事は決して許されません。ですが、ザックはあの後直ぐにニクスを迎えに行ったそうですよ」
「え、そうだったの……?」

 まだ泣いているザックにニクスはそう尋ねた。

「ああ……。流石に人に見つかったらマズいと思って……。でも戻ったらもうお前がいなかった……。探しても見つからなくて、怖くなって……。本当にごめん……」

 ザックの声はとても小さかったが、しっかりと気持ちが込められていた。

「ふーん。でもだからって、はいそうですかとは許せないわよ。散々私の事馬鹿にして、辛い目にも遭ったんだから!
でも……そのお陰でルカさんやレベッカさんに会えたのも事実だし、取り敢えず見逃してあげる。
けどバーレーン様、やっぱり私はここには戻りません――」

 ニクスはバーレーンを真っ直ぐみながらそう言った。

「貴方の気持ちは良く分かりましたニクス。彼らなら貴方を任せても大丈夫な様です。私の大切な仲間をを宜しくお願いしますね」
「ああ。ニクスは俺が守るから安心して下さい」

 こうして無事事なきを得た俺達は、王国へと戻ったのだった――。