「こんばんは〜ブライモンさん、マドレットさんいらっしゃいますか?」
「おお、テツヤさんに、リリアさんか」
「あらあら、いらっしゃい。さあ、どうぞ上がってくださいな」
「それでは失礼します」
「お邪魔します」
例の貴族からの遣いが冒険者ギルドマスターであるライザックさんに連行されていき、従業員のみんなと今後のことを話し合ったあと、閉店作業をみんなに任せて、俺とリリアはアウトドアショップの隣にある不動産屋にやってきている。
この不動産屋さんは60代くらいのご夫婦が経営しているお店だ。引っ越しに来た時や新商品の販売を始める時は必ず挨拶に来ている。当然今回は昼間の件についてだ。
「しかし、昼間は災難だったらしいな。こちらの店まで騒ぎが聞こえてきたぞ。従業員のみんなは無事だったようでなによりだ」
「ええ。みんな怪我ひとつなかったのは、不幸中の幸いでした」
「テツヤさんが仰っていたように、すぐに衛兵さんに知らせに行きましたけれど、あれで大丈夫でした?」
「はい、マドレットさん。衛兵を呼びに行ってくれて、本当に助かりました」
結果的には冒険者ギルドのみんなの方が早く到着してくれたが、そのあとにマドレットさんや常連のお客さんが呼んでくれた衛兵達も到着したので、リジムン男爵の遣いの件について事情を説明した。
そのあと衛兵達は連行された遣いの者から話を聞くために、冒険者ギルドへと向かっていった。あの遣いの人達や男爵がどのような処分を受けるかは、ライザックさんとパトリスさんの報告待ちになる。
「なあに近所なんだし、お互いさまだろう。はっはっは!」
「そうそう、うちの店の隣にリリアさんみたいな強い元冒険者の人が来てくれて、私達も安心なんですよ」
「ああ。なにせ老夫婦ふたりでやっている店だからな。いくら治安の良い街であっても、悪いやつはどこにでもいるもんだ。お隣さんに元高ランクの冒険者が引っ越してくれて本当に助かるよ」
確かにこういう世界だからな。お隣さんに強い人が住んでくれるのなら大歓迎なのだろう。
「ああ、何かあったら頼ってくれて構わないぞ。私もできるだけ隣人の力になりたいからな」
相変わらず格好良いリリアである。今日も敵と対面していた時も改めて思ったのだが、とても頼りになるんだよな。リリアがこのお店で働いてくれることになったのは、本当にラッキーだった。
「いつもお店のほうが騒がしくなって申し訳ないです。あっ、これは前回持ってきたのと同じで甘いお菓子です」
伝家の宝刀、ようかんとチョコレートバーである。うむ、営業もそうであるが、接待やお土産を渡すという行為はコミニュケーションを円滑にするために必要なことである。……決して賄賂なんかではない。
「おお、これはありがたいなあ。あんな甘いお菓子を食べるのは初めてだったよ。たぶん貴族様でもこんなお菓子を食べることはできないんじゃないか?」
「ええ。甘くて本当に美味しかったですよ。それにテツヤさん達のお店に並んでいるお客さんが、うちの店の前に貼ってある広告を見ていってくれるから、いつもよりお客さんも店にやってきてくれるんですよ」
お隣さんが不動産屋で良かった。もしも同じような商品を扱っている商店だったら、ここまで友好的な関係にはなれなかっただろう。まあそれもあって、お店はこの場所を選んだんだけどな。
「そう言っていただけると助かります。今後ともどうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」
「ええ、よろしくお願いします」
うん、ご近所さん付き合いも大事だよな。今週はランジェさんがいてくれたから良かったが、もしもランジェさんがいなかったら、ライザックさん達が来てくれるのはもっと遅くなっていたはずだ。
冒険者ギルドや衛兵に知らせに行くのは常連のお客さんやご近所さんに任せることになる。戦闘能力のない俺やフィアちゃんが行くのは危険だ。待ち伏せされている可能性もあるからな。普段のご近所さん付き合いはこれからもマメにしていこう。
ちなみに右隣のお店は薬屋さんで、向かいのお店は服屋さんだ。ブライモンさん達のお店に挨拶をしたあとは、そのままリリアと一緒に反対のお隣さんと向かいのお店へと挨拶しに向かった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
新商品の販売を始めて、いろいろとトラブルがあったが、なんとかこの一週間を無事に乗り越えることができた。
そして休みの日に例の貴族の遣いがどうなったのかと地図の制作状況を聞くために、リリアとランジェさんと一緒に冒険者ギルドを訪れることになった。
「テツヤさんおはようございます。ギルドマスターの部屋へお願いします」
「はい、ありがとうございます」
なんだかんだで冒険者でもないのに冒険者ギルドの職員さんに顔を覚えられてしまった。毎週方位磁石や浄水器などを納めに来てもいるからな。
「おお、テツヤさんに、リリアさんか」
「あらあら、いらっしゃい。さあ、どうぞ上がってくださいな」
「それでは失礼します」
「お邪魔します」
例の貴族からの遣いが冒険者ギルドマスターであるライザックさんに連行されていき、従業員のみんなと今後のことを話し合ったあと、閉店作業をみんなに任せて、俺とリリアはアウトドアショップの隣にある不動産屋にやってきている。
この不動産屋さんは60代くらいのご夫婦が経営しているお店だ。引っ越しに来た時や新商品の販売を始める時は必ず挨拶に来ている。当然今回は昼間の件についてだ。
「しかし、昼間は災難だったらしいな。こちらの店まで騒ぎが聞こえてきたぞ。従業員のみんなは無事だったようでなによりだ」
「ええ。みんな怪我ひとつなかったのは、不幸中の幸いでした」
「テツヤさんが仰っていたように、すぐに衛兵さんに知らせに行きましたけれど、あれで大丈夫でした?」
「はい、マドレットさん。衛兵を呼びに行ってくれて、本当に助かりました」
結果的には冒険者ギルドのみんなの方が早く到着してくれたが、そのあとにマドレットさんや常連のお客さんが呼んでくれた衛兵達も到着したので、リジムン男爵の遣いの件について事情を説明した。
そのあと衛兵達は連行された遣いの者から話を聞くために、冒険者ギルドへと向かっていった。あの遣いの人達や男爵がどのような処分を受けるかは、ライザックさんとパトリスさんの報告待ちになる。
「なあに近所なんだし、お互いさまだろう。はっはっは!」
「そうそう、うちの店の隣にリリアさんみたいな強い元冒険者の人が来てくれて、私達も安心なんですよ」
「ああ。なにせ老夫婦ふたりでやっている店だからな。いくら治安の良い街であっても、悪いやつはどこにでもいるもんだ。お隣さんに元高ランクの冒険者が引っ越してくれて本当に助かるよ」
確かにこういう世界だからな。お隣さんに強い人が住んでくれるのなら大歓迎なのだろう。
「ああ、何かあったら頼ってくれて構わないぞ。私もできるだけ隣人の力になりたいからな」
相変わらず格好良いリリアである。今日も敵と対面していた時も改めて思ったのだが、とても頼りになるんだよな。リリアがこのお店で働いてくれることになったのは、本当にラッキーだった。
「いつもお店のほうが騒がしくなって申し訳ないです。あっ、これは前回持ってきたのと同じで甘いお菓子です」
伝家の宝刀、ようかんとチョコレートバーである。うむ、営業もそうであるが、接待やお土産を渡すという行為はコミニュケーションを円滑にするために必要なことである。……決して賄賂なんかではない。
「おお、これはありがたいなあ。あんな甘いお菓子を食べるのは初めてだったよ。たぶん貴族様でもこんなお菓子を食べることはできないんじゃないか?」
「ええ。甘くて本当に美味しかったですよ。それにテツヤさん達のお店に並んでいるお客さんが、うちの店の前に貼ってある広告を見ていってくれるから、いつもよりお客さんも店にやってきてくれるんですよ」
お隣さんが不動産屋で良かった。もしも同じような商品を扱っている商店だったら、ここまで友好的な関係にはなれなかっただろう。まあそれもあって、お店はこの場所を選んだんだけどな。
「そう言っていただけると助かります。今後ともどうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」
「ええ、よろしくお願いします」
うん、ご近所さん付き合いも大事だよな。今週はランジェさんがいてくれたから良かったが、もしもランジェさんがいなかったら、ライザックさん達が来てくれるのはもっと遅くなっていたはずだ。
冒険者ギルドや衛兵に知らせに行くのは常連のお客さんやご近所さんに任せることになる。戦闘能力のない俺やフィアちゃんが行くのは危険だ。待ち伏せされている可能性もあるからな。普段のご近所さん付き合いはこれからもマメにしていこう。
ちなみに右隣のお店は薬屋さんで、向かいのお店は服屋さんだ。ブライモンさん達のお店に挨拶をしたあとは、そのままリリアと一緒に反対のお隣さんと向かいのお店へと挨拶しに向かった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
新商品の販売を始めて、いろいろとトラブルがあったが、なんとかこの一週間を無事に乗り越えることができた。
そして休みの日に例の貴族の遣いがどうなったのかと地図の制作状況を聞くために、リリアとランジェさんと一緒に冒険者ギルドを訪れることになった。
「テツヤさんおはようございます。ギルドマスターの部屋へお願いします」
「はい、ありがとうございます」
なんだかんだで冒険者でもないのに冒険者ギルドの職員さんに顔を覚えられてしまった。毎週方位磁石や浄水器などを納めに来てもいるからな。