「あとはバーナーやライトやランタンみたいなキャンプギアもある。バーナーは販売しないけれど、ライトやランタンはどうしようかな……」

「バーナーはテツヤがいつも料理する時に使っている火を出す魔道具みたいなやつだよね。ライトやランタンっていうのはどういうものなんだい?」

「ちょっと待っててね。確か俺が元の世界から持ってきたライトがあったはず……おっ、あったあった」

 自分の部屋に戻り、この世界に来た時に持っていたリュックの中からライトを持ってきた。

「なにかの棒みたいだな。どうやって使うんだ?」

「見ててね。ここのスイッチを押すと……」

「なにこれ、光魔法!?」

「な、なんだ、この光は!?」

 ライトのスイッチを入れると、ライトの光が灯る。充電式のライトだが、まだ充電が残っていてよかった。商品の中にはソーラー充電があったから、多分あれで充電して使うのだろうな。

「う〜んと、詳しい仕組みは俺にもわからないんだけど、太陽の光をエネルギーに変えて、そのエネルギーを光に変えるのかな」

 ソーラーパネルの仕組みは分からないが、太陽光を電気に変えてくれるんだよな。

「夜に火を起こさずに明かりをつけることができるんだよ。ちなみにこの世界だと魔道具って高価だったりするの?」

「ピンキリって感じかな。ガラクタみたいなものもあれば、国宝級のものもある感じだよ」

「そうだな。量産されている魔道具もあることだし、すべてが高価というわけじゃない。しかし、明かりを照らす魔道具はほとんど見たことがないな」

 一応魔道具のような不思議な道具として売れば、売れないこともないわけか。しかしそこまで需要があるかといえば微妙なところか。

 そもそもこの街の冒険者はそれほど野営をするわけじゃないし、野営をするなら火も起こすだろうからな。

「あとバーナーは俺が使っているのを見たことがあるよね。今まではガス缶だけしか購入できなかったけれど、新しくバーナー本体も購入できるようになっていたよ。ランジェさんも使ってみる?」

「ありがとう! 前々からちょっと興味はあったんだよね! 野営をすることも多いから助かるよ」

「ただ取り扱いには気をつけてよ。下手をすると爆発するからね」

「「えっ!?」」

 2人ともとても驚いた顔をしている。いや、爆発すると言ったけれど、ガス缶を火の中に突っ込むとかしない限りは大丈夫だぞ。

 ガス缶とバーナーについては店では販売しない予定だ。特にガス缶については、取り扱いを誤ると大変なことになる。便利なはずのキャンプギアにも危険なものはあるからな。

 それに故意に爆発させたりと、悪用しようと思えば悪用できてしまう。少なくとも信用できる知り合いにしか渡すつもりはない。

「普通に使う分には大丈夫だよ。あとで使い方を説明するからね」

「そ、そうだね。使い方はちゃんと聞いておかないといけないね!」

 思ったよりも爆発する可能性があるという事実に驚愕しているな。まあバーナーを扱う際は普段以上に注意してもらわないといけない。

「あとは定番のテントに寝袋にチェアも購入できるようになったな。でも品質はそんなに良くはないみたいだ」

 ようやくアウトドアショップっぽい商品が続々と購入できるようになった。しかし購入できる商品は最低限の品質を持つキャンプギアばかりだ。

 テントや寝袋について、最初は高品質の物は必要ないかもしれないが、余裕が出てくるとより高品質な物が欲しくなるんだよなあ。

 いつになるかは分からないが、次のレベルに上がったらもっと良いテントや寝袋が購入できるかもしれない。さすがにテントや寝袋が1種類ということはないだろう。どちらも相当な種類があるからな。

「それでもテツヤが購入できるテントや寝袋には興味があるな。今持っているものは少しいいやつなのだろう?」

「僕も気になるね。テツヤが今持っているテントや寝袋も見たことがないから見せてよ」

 俺が持っているテントは2〜3万円するそこそこのもので、寝袋も2万円くらいする。寒い時期にもキャンプすることが多かったから、ある程度の寒さに耐えられるものを購入した。

 確かにアウトドアショップの能力で購入できるテントや寝袋の品質は見ておきたいところだな。

「そうだね。試しに見てみようか」

 新しくテントと寝袋をひとつずつ購入して、裏庭で俺が持っていたテントと一緒に建ててみる。



「面白い形だね。それに紐でテントを引っ張らなくていいんだ」

 こちらの世界のテントは一本のポールを中心に建てる円錐型か、2本のポールでテントを建てる三角形のテントが多い。

「なるほど、テツヤの持っているテントのほうが布の材質などが良いのだな」

「そうだね。高いテントのほうが材質が良かったり、耐久性があったりするよ」

 テントの値段の違いは主に材質の違いだ。雨などであまり劣化しない素材や、丈夫な素材、室内の温度をできるだけ保てるような素材のほうがより高価になる。

「テツヤのテントのほうが建てやすくて楽だね。それに軽いから持ち運びもしやすいよ」

「テントのほうはこっちでも売れるかもしれないね」

 ランジェさんが持っているテントと比べて、元の世界のテントのほうが設置するのが楽だし、何より軽い。耐久性については確認する必要があるけれど、テントはこちらの世界でも需要が有るかもしれない。

「寝袋の方はそこまで変わらないかな」

「うむ、ランジェが持っているものとそれほど代わりはないように思えるな」

 こちらの世界の寝袋は魔物の羽を使っている。こっちのほうは実際に寒いところで使ってみないと違いがわからないな。

 ランジェさんにお願いして、寒い場所に行った時に違いを確認してもらうとしよう。