「よし、お客さんも引いたし、今日のお店の営業はここまでにしておこう」
「は、はい」
昨日と同じくらいに日が暮れ始めた頃、ちょうどキリが良くお客さんもいなくなったので、お店を閉めた。
「お疲れさま、今日は本当にありがとうね。フィアちゃんのおかげでなんとかなったよ。これ、今日の給金だよ」
「えっ!? テツヤお兄ちゃん、これ金貨1枚もありますよ!」
「今日はフィアちゃんがいてくれて本当に助かったからね。多い分はおまけだからとっておいて」
昨日の予想通り、今日は昨日以上に大勢のお客さんがお店にやってきてくれた。もしも俺ひとりだったら間違いなく手が回らなかっただろう。
「で、でも多すぎるよ。銀貨5枚でも十分多いのに……」
「フィアちゃんがいなかったら、俺ひとりで店が回らなくてお客さんや周りの屋台の人にも迷惑をかけていたからね。それにすっごく真面目に働いてくれたし、助かったよ」
フィアちゃんはまだ子供なのに、お金の計算もちゃんとできたし、前半は少しあがっていたが後半はバッチリの接客だった。それに忙しい中、ほとんど休まずに熱心に働いてくれた。多少相場よりは高いと思うが、金貨1枚を受け取ってもらう資格は十分にある。
「でも……」
「あとニコレのことは許してあげてくれ。怖かったかもしれないけれど、あの3人は俺の命の恩人で悪いやつらじゃないんだ。ちゃんと3人に言って、もう同じことはさせないから」
「あっ、それは大丈夫です。ちょっと怖かったけど、女の人だったし、本当に触ってはこなかったですから」
……触らなかったのは結構ギリギリだった気もするけどな。
「とにかく、お母さんの具合が悪いんだから、なおさら遠慮なくもらっておいて。それにできれば明日からもフィアちゃんにこの店で働いてほしいと思っているから、先行投資ってやつだよ。できれば明日以降もこの店を手伝ってほしい」
「テツヤお兄ちゃん……本当にありがとう! フィアからもお願いします、明日からもこのお店で働かせてください!」
「うん、こちらこそありがとう。明日からもよろしくね!」
フィアちゃんは俺が渡した金貨を大切そうに懐にしまう。そして右手とフサフサとした尻尾をこれでもかと俺に向かって振り、お店を後にした。
よしよし。これで明日からの従業員の確保もできた。それに加えてフィアちゃんの母親の手助けもできる。うん、子供なのに給金が多い? 病気の母親がいるなんて定番の作り話かもしれない? 俺が自分で納得しているからいいんだよ。十分過ぎるほど働いてくれたし、病気の母親もいないならそれでいい。
宿に戻って今日の売り上げを計算してみると、なんと利益が金貨15枚分にもなった。屋台代やフィアちゃんに支払った金貨1枚を引いても金貨13枚以上の利益だ。
明日のキャンプギアの仕入れを終えた段階でアウトドアショップの次のレベルアップまで約金貨32枚となった。
よくよく考えてみると、手持ちの金貨すべてを使ってキャンプギアを購入すれば、明日にはレベルアップが可能になるかもしれない。さすがに手持ちの金貨も少しは残したいし、キャンプギアで宿の部屋がいっぱいになってしまうから、現実的には明後日といったところだろうか。
フィアちゃんを従業員として雇えることになったし、今のところとても順調だ。アウトドアショップのレベルが上がって商品が増えて、さらにお金が貯まってきたら、屋台ではなくて店舗を借りてみてもいいかもしれない。
住居付きの店舗を借りれば、今の宿のように商品にするキャンプギアを多く購入し過ぎても置き場に困ることもないし、自炊もできる。今の宿の食事にそこまで不満があるわけではないが、まだ見たことも食べたこともない異世界の食材が山ほどあるんだ。せっかくなら自分でいろいろな料理を作ってみたい。
元の世界でも料理は趣味でしていたし、キャンプに行ってはいろいろと料理していた。そろそろ元の世界の料理も恋しくなってきたし、台所のある住居は必須だな。それに売り場も増えるから今の屋台では置くことができなかった細々としたキャンプギアも置くことができる。
まだ先のことになるが、明日の午前中にでも店舗の借り方やいくらで借りられるかを調べておくことにしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そして次の日、フィアちゃんとは昼過ぎに店の前で落ち合う約束をしているので、先に商業ギルドへ行って情報を調べてきた。
貸店舗の大きさや立地によって月の賃貸料金は様々なようだ。立地については分かりやすく、冒険者ギルドか街の入り口に近くなるほど賃貸料金が高くなり、その外側へ行くほど安くなっている。
商業ギルドに登録して入れば、すぐに借りることができるが、最初は2ヶ月分の家賃を先払いで払わなければならない。立地よりも大きさや住居があることを優先するとしても一月で金貨10〜20枚、2ヶ月分で20〜40枚は必要になる。アウトドアショップのレベルアップもあるし、もう少しお金を貯めないといけないな。
「あ、テツヤお兄ちゃん!」
「おはよう、フィアちゃん。今日もよろしくね」
「はいです!」
「おっともうお客さんがいるのか。すみません、すぐに用意しますから少しだけお待ちください」
昨日と同じ時間帯にお店に行くと、フィアちゃんとお客さんがすでに待っていた。お客さんのほうは先着順のファイヤースターターを狙ってきているっぽいな。
「お待たせしました。アウトドアショップ、オープンします!」
「は、はい」
昨日と同じくらいに日が暮れ始めた頃、ちょうどキリが良くお客さんもいなくなったので、お店を閉めた。
「お疲れさま、今日は本当にありがとうね。フィアちゃんのおかげでなんとかなったよ。これ、今日の給金だよ」
「えっ!? テツヤお兄ちゃん、これ金貨1枚もありますよ!」
「今日はフィアちゃんがいてくれて本当に助かったからね。多い分はおまけだからとっておいて」
昨日の予想通り、今日は昨日以上に大勢のお客さんがお店にやってきてくれた。もしも俺ひとりだったら間違いなく手が回らなかっただろう。
「で、でも多すぎるよ。銀貨5枚でも十分多いのに……」
「フィアちゃんがいなかったら、俺ひとりで店が回らなくてお客さんや周りの屋台の人にも迷惑をかけていたからね。それにすっごく真面目に働いてくれたし、助かったよ」
フィアちゃんはまだ子供なのに、お金の計算もちゃんとできたし、前半は少しあがっていたが後半はバッチリの接客だった。それに忙しい中、ほとんど休まずに熱心に働いてくれた。多少相場よりは高いと思うが、金貨1枚を受け取ってもらう資格は十分にある。
「でも……」
「あとニコレのことは許してあげてくれ。怖かったかもしれないけれど、あの3人は俺の命の恩人で悪いやつらじゃないんだ。ちゃんと3人に言って、もう同じことはさせないから」
「あっ、それは大丈夫です。ちょっと怖かったけど、女の人だったし、本当に触ってはこなかったですから」
……触らなかったのは結構ギリギリだった気もするけどな。
「とにかく、お母さんの具合が悪いんだから、なおさら遠慮なくもらっておいて。それにできれば明日からもフィアちゃんにこの店で働いてほしいと思っているから、先行投資ってやつだよ。できれば明日以降もこの店を手伝ってほしい」
「テツヤお兄ちゃん……本当にありがとう! フィアからもお願いします、明日からもこのお店で働かせてください!」
「うん、こちらこそありがとう。明日からもよろしくね!」
フィアちゃんは俺が渡した金貨を大切そうに懐にしまう。そして右手とフサフサとした尻尾をこれでもかと俺に向かって振り、お店を後にした。
よしよし。これで明日からの従業員の確保もできた。それに加えてフィアちゃんの母親の手助けもできる。うん、子供なのに給金が多い? 病気の母親がいるなんて定番の作り話かもしれない? 俺が自分で納得しているからいいんだよ。十分過ぎるほど働いてくれたし、病気の母親もいないならそれでいい。
宿に戻って今日の売り上げを計算してみると、なんと利益が金貨15枚分にもなった。屋台代やフィアちゃんに支払った金貨1枚を引いても金貨13枚以上の利益だ。
明日のキャンプギアの仕入れを終えた段階でアウトドアショップの次のレベルアップまで約金貨32枚となった。
よくよく考えてみると、手持ちの金貨すべてを使ってキャンプギアを購入すれば、明日にはレベルアップが可能になるかもしれない。さすがに手持ちの金貨も少しは残したいし、キャンプギアで宿の部屋がいっぱいになってしまうから、現実的には明後日といったところだろうか。
フィアちゃんを従業員として雇えることになったし、今のところとても順調だ。アウトドアショップのレベルが上がって商品が増えて、さらにお金が貯まってきたら、屋台ではなくて店舗を借りてみてもいいかもしれない。
住居付きの店舗を借りれば、今の宿のように商品にするキャンプギアを多く購入し過ぎても置き場に困ることもないし、自炊もできる。今の宿の食事にそこまで不満があるわけではないが、まだ見たことも食べたこともない異世界の食材が山ほどあるんだ。せっかくなら自分でいろいろな料理を作ってみたい。
元の世界でも料理は趣味でしていたし、キャンプに行ってはいろいろと料理していた。そろそろ元の世界の料理も恋しくなってきたし、台所のある住居は必須だな。それに売り場も増えるから今の屋台では置くことができなかった細々としたキャンプギアも置くことができる。
まだ先のことになるが、明日の午前中にでも店舗の借り方やいくらで借りられるかを調べておくことにしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そして次の日、フィアちゃんとは昼過ぎに店の前で落ち合う約束をしているので、先に商業ギルドへ行って情報を調べてきた。
貸店舗の大きさや立地によって月の賃貸料金は様々なようだ。立地については分かりやすく、冒険者ギルドか街の入り口に近くなるほど賃貸料金が高くなり、その外側へ行くほど安くなっている。
商業ギルドに登録して入れば、すぐに借りることができるが、最初は2ヶ月分の家賃を先払いで払わなければならない。立地よりも大きさや住居があることを優先するとしても一月で金貨10〜20枚、2ヶ月分で20〜40枚は必要になる。アウトドアショップのレベルアップもあるし、もう少しお金を貯めないといけないな。
「あ、テツヤお兄ちゃん!」
「おはよう、フィアちゃん。今日もよろしくね」
「はいです!」
「おっともうお客さんがいるのか。すみません、すぐに用意しますから少しだけお待ちください」
昨日と同じ時間帯にお店に行くと、フィアちゃんとお客さんがすでに待っていた。お客さんのほうは先着順のファイヤースターターを狙ってきているっぽいな。
「お待たせしました。アウトドアショップ、オープンします!」