「……止まって!」
「っ!?」
先頭を歩くニコレが小声で話しつつ、手を広げて止まれの合図を出す。ロイヤとファルも止まり、腰にある武器に手をかける。
「……前方にゴブリンが3匹。周囲に他の敵はいなそうね」
「……ゴブリン3匹を確認した。武器も棒切れだけ、俺達だけで倒せそうだ」
この世界のゴブリン達は女性を孕ませたりはしないようだが、人を襲ったり村などで家畜を奪っていく害獣だ。その上繁殖力が非常に高いため、すぐに増えてしまう。冒険者がゴブリンを発見した場合には、無理のない範囲内で駆除することが義務付けられている。
とはいえ油断をしてやられたり、人から奪った武器を持っていて返り討ちにあったりと、冒険者の被害は後を絶たないようだ。
「……リリア」
パーティのリーダーであるロイヤがリリアに確認をし、それに対してコクリとリリアが頷いた。どうやらロイヤ達3人がゴブリンと戦うようだ。
「オラァ!」
ザンッ
「ギャギャ!」
「せいっ!」
「ギャア!」
「ゲギャギャ!?」
ヒュンッ
「ゲギャア……」
「もういっちょ!」
「ギャ……」
「……よし、3体の討伐を確認」
「……うん、今回はちゃんと倒れているゴブリンにもとどめを刺したわね」
「ああ、もう油断はしねえよ」
「そうだな、同じ失敗を繰り返さないことが大事だ」
どうやら無事に戦闘が終わったらしい。
「3人ともすごかったよ!」
「ふむ、感覚の鋭い獣人のニコレが魔物を察知し、近接のロイヤが敵を急襲、注意がロイヤに向いたところで、身軽さを活かしたニコレが別方向から攻撃、遠距離よりファルが弓で攻撃か。いいパーティだな、これならすぐに次のDランクまで上がれると思うぞ」
遠くから戦いを見ていた俺にもいい連携に見えた。Bランク冒険者のリリアがそういうのならその通りなのだろう。リリアはあんまりお世辞とか言わなそうなタイプだしな。
「本当っすか!」
「やった!」
「うし!」
「ああ。とはいえ油断は絶対に禁物だぞ。どんな強者でも一瞬の油断で命を落とす……それも冒険者だからな」
そう自嘲気味に笑いながら、自分の無くなった左腕を見せ、ロイヤ達に忠告をする。リリアが腕を失ったのは油断かどうかは分からないが、冒険者は一瞬の油断でこうなるぞ、と言いたかったのだろう。
「おす!」
「はい!」
「うす!」
そのあとにも2回ほどゴブリンに遭遇した。この広い森の中で3回もゴブリン達と遭遇するとは、かなりの数がいるようだ。倒したゴブリン達は耳を剥ぎ取り、遺体は地面に埋めていく。
薬草を探しながら方位磁石の方角を確認しつつ、ある程度森の奥までやってきた。今のところ方位磁石はどこでも正常な方角を指し示している。
「今のところ方位磁石は問題なさそうだな」
「それにしてもこれはすごい道具だな。この森だけでなく、他の場所でも使えるのだろう?」
「ああ。でもさっきも言ったように、これが使えなくなる場所もあるんだ。そうか、これを売る時にはちゃんとそのあたりを説明しないといけないな」
ちゃんと口頭か注意書きでこの森では使えるが、使えない場所もあると伝えておかないといけないな。
「この森で使えるってだけでだいぶ助かるぜ。この辺りまで来ると道もだいぶ減ってくるし、元の道を示す赤い布もほとんどなくなってくるからな」
確かに森に入った時の道よりもだいぶ細く、わかれている道もなくなってきた。ここまでこの森の奥に入ってくる人はほとんどいないらしい。
「私達もこんなに森の奥に来るのは初めてね」
「ああ。確かにこの辺りで魔物に襲われて道がわからなくなったら、遭難してもおかしくないな。今回はテツヤのこれがあるから大丈夫だと思うけど」
結構森の奥深くまで進んできたというのに、まだまだ森は続いている。それに景色はほとんど変わらないから、戦闘などで道を外れると迷ってしまってもおかしくない。だからこそ、ここまで来ている冒険者はほとんどいないのだろう。現に森の入り口には大勢いた冒険者達が、今では俺達しかいない。
「これ以上先に進む冒険者はほとんどいないだろうな。この森は奥に行けば行くほど魔物の数も増え、強い魔物も増えてくる。もうひとつの依頼である薬草も十分な量を確保できた。テツヤ、この辺りで引き返すことを提案したいのだがどうだ?」
「そうですね、方位磁石の検証も十分なので、この辺りで引き上げましょう」
強い魔物が増えてくるなら尚更だ。それに体力のない俺のために休憩を多く取ってもらっているが、帰り道のことを考えるとそろそろ体力がもたない。戦闘も剥ぎ取りも手伝っていないのにこれだからな……やはり俺に冒険者は無理ということも再確認できた。
「帰りは来た道を引き返すだけだから安心だな」
「バカロイヤ、気を抜くなってば!」
「まだ帰り道も半分残っているんだぞ!」
「ニコレとファルの言う通りだぞ。それに今回は護衛依頼も含まれている。少なくとも依頼人を安全な場所に連れていくまでは、一瞬たりとも気を抜いてはいけない」
「す、すんません!!」
うん、さすがに気を抜き過ぎだ。それに今のは完全にフラグにしか聞こえ……
ガサガサッ
「……っ!?」
突然俺の背後の草むらからなにかが飛び出した。
「っ!?」
先頭を歩くニコレが小声で話しつつ、手を広げて止まれの合図を出す。ロイヤとファルも止まり、腰にある武器に手をかける。
「……前方にゴブリンが3匹。周囲に他の敵はいなそうね」
「……ゴブリン3匹を確認した。武器も棒切れだけ、俺達だけで倒せそうだ」
この世界のゴブリン達は女性を孕ませたりはしないようだが、人を襲ったり村などで家畜を奪っていく害獣だ。その上繁殖力が非常に高いため、すぐに増えてしまう。冒険者がゴブリンを発見した場合には、無理のない範囲内で駆除することが義務付けられている。
とはいえ油断をしてやられたり、人から奪った武器を持っていて返り討ちにあったりと、冒険者の被害は後を絶たないようだ。
「……リリア」
パーティのリーダーであるロイヤがリリアに確認をし、それに対してコクリとリリアが頷いた。どうやらロイヤ達3人がゴブリンと戦うようだ。
「オラァ!」
ザンッ
「ギャギャ!」
「せいっ!」
「ギャア!」
「ゲギャギャ!?」
ヒュンッ
「ゲギャア……」
「もういっちょ!」
「ギャ……」
「……よし、3体の討伐を確認」
「……うん、今回はちゃんと倒れているゴブリンにもとどめを刺したわね」
「ああ、もう油断はしねえよ」
「そうだな、同じ失敗を繰り返さないことが大事だ」
どうやら無事に戦闘が終わったらしい。
「3人ともすごかったよ!」
「ふむ、感覚の鋭い獣人のニコレが魔物を察知し、近接のロイヤが敵を急襲、注意がロイヤに向いたところで、身軽さを活かしたニコレが別方向から攻撃、遠距離よりファルが弓で攻撃か。いいパーティだな、これならすぐに次のDランクまで上がれると思うぞ」
遠くから戦いを見ていた俺にもいい連携に見えた。Bランク冒険者のリリアがそういうのならその通りなのだろう。リリアはあんまりお世辞とか言わなそうなタイプだしな。
「本当っすか!」
「やった!」
「うし!」
「ああ。とはいえ油断は絶対に禁物だぞ。どんな強者でも一瞬の油断で命を落とす……それも冒険者だからな」
そう自嘲気味に笑いながら、自分の無くなった左腕を見せ、ロイヤ達に忠告をする。リリアが腕を失ったのは油断かどうかは分からないが、冒険者は一瞬の油断でこうなるぞ、と言いたかったのだろう。
「おす!」
「はい!」
「うす!」
そのあとにも2回ほどゴブリンに遭遇した。この広い森の中で3回もゴブリン達と遭遇するとは、かなりの数がいるようだ。倒したゴブリン達は耳を剥ぎ取り、遺体は地面に埋めていく。
薬草を探しながら方位磁石の方角を確認しつつ、ある程度森の奥までやってきた。今のところ方位磁石はどこでも正常な方角を指し示している。
「今のところ方位磁石は問題なさそうだな」
「それにしてもこれはすごい道具だな。この森だけでなく、他の場所でも使えるのだろう?」
「ああ。でもさっきも言ったように、これが使えなくなる場所もあるんだ。そうか、これを売る時にはちゃんとそのあたりを説明しないといけないな」
ちゃんと口頭か注意書きでこの森では使えるが、使えない場所もあると伝えておかないといけないな。
「この森で使えるってだけでだいぶ助かるぜ。この辺りまで来ると道もだいぶ減ってくるし、元の道を示す赤い布もほとんどなくなってくるからな」
確かに森に入った時の道よりもだいぶ細く、わかれている道もなくなってきた。ここまでこの森の奥に入ってくる人はほとんどいないらしい。
「私達もこんなに森の奥に来るのは初めてね」
「ああ。確かにこの辺りで魔物に襲われて道がわからなくなったら、遭難してもおかしくないな。今回はテツヤのこれがあるから大丈夫だと思うけど」
結構森の奥深くまで進んできたというのに、まだまだ森は続いている。それに景色はほとんど変わらないから、戦闘などで道を外れると迷ってしまってもおかしくない。だからこそ、ここまで来ている冒険者はほとんどいないのだろう。現に森の入り口には大勢いた冒険者達が、今では俺達しかいない。
「これ以上先に進む冒険者はほとんどいないだろうな。この森は奥に行けば行くほど魔物の数も増え、強い魔物も増えてくる。もうひとつの依頼である薬草も十分な量を確保できた。テツヤ、この辺りで引き返すことを提案したいのだがどうだ?」
「そうですね、方位磁石の検証も十分なので、この辺りで引き上げましょう」
強い魔物が増えてくるなら尚更だ。それに体力のない俺のために休憩を多く取ってもらっているが、帰り道のことを考えるとそろそろ体力がもたない。戦闘も剥ぎ取りも手伝っていないのにこれだからな……やはり俺に冒険者は無理ということも再確認できた。
「帰りは来た道を引き返すだけだから安心だな」
「バカロイヤ、気を抜くなってば!」
「まだ帰り道も半分残っているんだぞ!」
「ニコレとファルの言う通りだぞ。それに今回は護衛依頼も含まれている。少なくとも依頼人を安全な場所に連れていくまでは、一瞬たりとも気を抜いてはいけない」
「す、すんません!!」
うん、さすがに気を抜き過ぎだ。それに今のは完全にフラグにしか聞こえ……
ガサガサッ
「……っ!?」
突然俺の背後の草むらからなにかが飛び出した。