先週は再びAランク冒険者であるベルナさんとフェリーさんがこの街に訪れてきた。そのことをお店が開く前に従業員のみんなに話したのだが、とても羨ましそうな様子で話を聞いていた。
「フィアもベルナお姉ちゃんとフェリーお姉ちゃんにまた会いたかったなあ……」
「私もまたお会いしたかったですね」
「ごめん、ごめん。さすがに昨日と一昨日はお店が休日だったからね。でも、もしかしたら2人にはこれからいろいろと頼むことになるかもしれないし、友達のリリアもいるからまた来てくれると思うよ」
「おお、すごいな。あの2人に依頼をするってことになるのか?」
「もしかしたらだけどね。フェリーさんは収納魔法を使えるらしいから、王都や王都までに寄れる街に食品系を輸送してもらえればと思って」
「Aランク冒険者への依頼となると依頼料がとても高額になってしまいそうでけれど大丈夫なんですか?」
「……ちょっと特別な条件だけど、今のところは大丈夫そうかな」
今のところはランジェさんと同様に棒状ラーメンやアルファ米、インスタントカレー、お菓子などを定期的に渡すだけでいいと言っていたが、本当にそれでいいのだろうか……
それに加えて2人分のアレフレアの街から王都までの交通費でお願いしようかなと思っている。当然その分販売する商品の値段がこの街で売るよりも高額になってしまうが、この街よりも物価は高いそうなので、ちょうどいいのかもしれない。
同様に王都や他の街に卸す予定の方位磁石や浄水器なんかも、輸送費の分や現地で販売する人件費の分だけ値段を上乗せする予定である。
「まあ、まだしばらくしないとどうなるか分からないけれどね」
どちらにせよ、まずは保存パックが問題ないかを確認して、生産ができてからの話だ。
それにしても、みんなもベルナさんとフェリーさんには会いたかったらしい。さすがにお店の休日にわざわざ声を掛ける必要はないと思っていたが、今度2人が来た時には一応声を掛けるとするかな。
やはりあの2人はこの世界でアイドル的な存在であることに間違いはないようだ。
「それと2人からはまたいいお肉をもらったから、燻製にしておいたよ。また今日の帰りに渡すから持って帰って楽しんでね」
俺がそう言うとみんなとても喜んでくれていた。やはりおいしいものはみんなで食べるのがいいよね。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「いらっしゃいませ!」
最近はお店のほうもとても順調だ。相変わらず朝一だけは並んでいるお客さんも多いが、それ以外の時間帯は落ち着いてきているし、従業員のみんなの接客もだんだんと上手になってきているからな。
「……っ!? テツヤお兄ちゃん、4番お願いします!」
「っ! 了解!」
フィアちゃんの一言から、そんな平穏な営業の一日が一転した。元の世界の飲食店などで使われていた〇番という隠語だが、ここアウトドアショップでも使用している。
飲食店の隠語だが、トイレや休憩を取る時に、お客様を不快にさせないように店員さん同士だけで伝え合う暗号のようなものだ。俺も実際に飲食店では働いたことがないので正しい順番かは分からないが、1番はトイレ、2番は休憩、3番は品出しといった感じで番号を振っている。
そもそもこのアウトドアショップではそんな番号で言いあう必要はないのだが、この4番のために番号を振っていると言っても過言ではない。
「……テツヤ、行ってくる」
「ああ、頼む!」
リリアがお店の商品をチェックしているフリをして、今店内に入ってきた男の近くへと寄っていく。
……なるほど、確かにアンジュから聞いていた通りの容姿だ。
そう、この4番という番号はアンジュのストーカーらしき人がお店へやってきた時に使う緊急の番号である。
「……テツヤさん、間違いないです」
「……了解」
以前よりアンジュからみんなに共有してもらったストーカーの容姿に似ている男がアウトドアショップにやってきた場合、戦闘能力のあるリリアかランジェさんが、相手に気付かれない程度に近付いて様子を見る。
そしてアンジュはこっそりと陰からその容姿をした男が、本当に前に勤めていた職場にいたストーカーであるかを確認して他の人へ伝えるようにしてもらっている。
これまでに3回ほどその男に似ている男が来店したのだが、実際にアンジュが確認したところ別人であった。しかし、今回はどうやら本物のストーカーのようだ。
「……予定通りアンジュはランジェさんと一緒に会計を頼むよ」
「……はい、わかりました」
会計に入っているランジェさんとフィアちゃんのほうへ移動するアンジュ。今ストーカーは商品の棚を見ているところだ。
実際にストーカーがお店に来た時の対応はすでに決めてある。万が一ストーカーが暴走してきた時のため、アンジュには戦闘能力のあるランジェさんかリリアと一緒に会計へ入ってもらう。
フィアちゃんはできる限り距離をとった場所で控えてもらい、俺は少し離れた場所で相手にバレないように様子を窺う。
ちなみにドルファにだけ4番は今やっているお店の作業を変えてほしいという合図だと伝えている。ドルファへのカモフラージュのために腰が痛いから作業を変わってほしいと数回俺が使ったくらいだ。
アンジュのストーカーが店に来たなんて伝えたら、相手が何もしていなくても、こちらからボコボコにしてしまう可能性が高いからな。
「フィアもベルナお姉ちゃんとフェリーお姉ちゃんにまた会いたかったなあ……」
「私もまたお会いしたかったですね」
「ごめん、ごめん。さすがに昨日と一昨日はお店が休日だったからね。でも、もしかしたら2人にはこれからいろいろと頼むことになるかもしれないし、友達のリリアもいるからまた来てくれると思うよ」
「おお、すごいな。あの2人に依頼をするってことになるのか?」
「もしかしたらだけどね。フェリーさんは収納魔法を使えるらしいから、王都や王都までに寄れる街に食品系を輸送してもらえればと思って」
「Aランク冒険者への依頼となると依頼料がとても高額になってしまいそうでけれど大丈夫なんですか?」
「……ちょっと特別な条件だけど、今のところは大丈夫そうかな」
今のところはランジェさんと同様に棒状ラーメンやアルファ米、インスタントカレー、お菓子などを定期的に渡すだけでいいと言っていたが、本当にそれでいいのだろうか……
それに加えて2人分のアレフレアの街から王都までの交通費でお願いしようかなと思っている。当然その分販売する商品の値段がこの街で売るよりも高額になってしまうが、この街よりも物価は高いそうなので、ちょうどいいのかもしれない。
同様に王都や他の街に卸す予定の方位磁石や浄水器なんかも、輸送費の分や現地で販売する人件費の分だけ値段を上乗せする予定である。
「まあ、まだしばらくしないとどうなるか分からないけれどね」
どちらにせよ、まずは保存パックが問題ないかを確認して、生産ができてからの話だ。
それにしても、みんなもベルナさんとフェリーさんには会いたかったらしい。さすがにお店の休日にわざわざ声を掛ける必要はないと思っていたが、今度2人が来た時には一応声を掛けるとするかな。
やはりあの2人はこの世界でアイドル的な存在であることに間違いはないようだ。
「それと2人からはまたいいお肉をもらったから、燻製にしておいたよ。また今日の帰りに渡すから持って帰って楽しんでね」
俺がそう言うとみんなとても喜んでくれていた。やはりおいしいものはみんなで食べるのがいいよね。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「いらっしゃいませ!」
最近はお店のほうもとても順調だ。相変わらず朝一だけは並んでいるお客さんも多いが、それ以外の時間帯は落ち着いてきているし、従業員のみんなの接客もだんだんと上手になってきているからな。
「……っ!? テツヤお兄ちゃん、4番お願いします!」
「っ! 了解!」
フィアちゃんの一言から、そんな平穏な営業の一日が一転した。元の世界の飲食店などで使われていた〇番という隠語だが、ここアウトドアショップでも使用している。
飲食店の隠語だが、トイレや休憩を取る時に、お客様を不快にさせないように店員さん同士だけで伝え合う暗号のようなものだ。俺も実際に飲食店では働いたことがないので正しい順番かは分からないが、1番はトイレ、2番は休憩、3番は品出しといった感じで番号を振っている。
そもそもこのアウトドアショップではそんな番号で言いあう必要はないのだが、この4番のために番号を振っていると言っても過言ではない。
「……テツヤ、行ってくる」
「ああ、頼む!」
リリアがお店の商品をチェックしているフリをして、今店内に入ってきた男の近くへと寄っていく。
……なるほど、確かにアンジュから聞いていた通りの容姿だ。
そう、この4番という番号はアンジュのストーカーらしき人がお店へやってきた時に使う緊急の番号である。
「……テツヤさん、間違いないです」
「……了解」
以前よりアンジュからみんなに共有してもらったストーカーの容姿に似ている男がアウトドアショップにやってきた場合、戦闘能力のあるリリアかランジェさんが、相手に気付かれない程度に近付いて様子を見る。
そしてアンジュはこっそりと陰からその容姿をした男が、本当に前に勤めていた職場にいたストーカーであるかを確認して他の人へ伝えるようにしてもらっている。
これまでに3回ほどその男に似ている男が来店したのだが、実際にアンジュが確認したところ別人であった。しかし、今回はどうやら本物のストーカーのようだ。
「……予定通りアンジュはランジェさんと一緒に会計を頼むよ」
「……はい、わかりました」
会計に入っているランジェさんとフィアちゃんのほうへ移動するアンジュ。今ストーカーは商品の棚を見ているところだ。
実際にストーカーがお店に来た時の対応はすでに決めてある。万が一ストーカーが暴走してきた時のため、アンジュには戦闘能力のあるランジェさんかリリアと一緒に会計へ入ってもらう。
フィアちゃんはできる限り距離をとった場所で控えてもらい、俺は少し離れた場所で相手にバレないように様子を窺う。
ちなみにドルファにだけ4番は今やっているお店の作業を変えてほしいという合図だと伝えている。ドルファへのカモフラージュのために腰が痛いから作業を変わってほしいと数回俺が使ったくらいだ。
アンジュのストーカーが店に来たなんて伝えたら、相手が何もしていなくても、こちらからボコボコにしてしまう可能性が高いからな。