先週はAランク冒険者のベルナさんとフェリーさんがアウトドアショップへとやってくるというハプニングがあったが、結果的には王都の冒険者ギルドにひとつ貸しを作れそうで良かったよ。

 それに新しい従業員のドルファの妹であるアンジュの歓迎会では、2人にもらったワイバーンのお肉をみんなで楽しませてもらった。主役であるアンジュも楽しんでくれていたから何よりだ。

 それにしても高級食材であるワイバーンの肉は本当にうまかったな。王都ではああいった高級食材を販売しているのは羨ましい。お店を長期で休むのは難しいかもしれないが、一度くらい王都に行ってみたいものである。



「今日も朝早くから当店にいらっしゃいまして、誠にありがとうございます!」

 今日もお店には朝から大勢のお客さんが並んでくれている。

「お店を開く前に、本日より新しく販売する商品の説明をさせていただきます」

 今回は特に通知もなく新商品の販売をおこなう。というのも今回新しく販売する商品はそこそこの値段で販売する予定なので、購入しないお客さんも多いと思ったからだ。

 実際のところの需要は販売を開始してみないと分からないが、おそらくは棒状ラーメンや栄養食品ほどまでは売れない気がする。ただし単価のほうは結構高いのでひとつ売れるだけで利益はそこそこある。

「今回販売する商品はこちら! リュックに入れていた火を付ける道具や濡れてはいけない素材、楽しみにしていたお昼ご飯が、突然の雨でビショビショなんてことはありませんか? これさえあればもう安心! こちらは雨などの水をほとんど通さない防水リュックとなります!」

「「「おお~!」」」

「水をはじく特別な素材を使用しておりますので、たとえ大雨が降ってきたとしても安心安全! みなさんの濡れてはいけない大切な荷物をお守りします。こちらの便利な商品がたったの金貨1枚と銀貨5枚! たったの金貨1枚と銀貨5枚で販売となります!」

 この防水リュックはアウトドアショップの能力により銀貨7枚分で購入できる。この商品もビニールのような素材を使用しているため、ブルーシートのように壊れたり不要になったものは銀貨3枚で引き取る予定だ。

 回収のための金額を含めると合計で金貨1枚になるため、ひとつ売れるごとに銀貨5枚の利益となるわけだ。

「へえ~それはすごいですね! 魔物の返り血なんかも染み込まないんですか?」

「はい。液体状のものは通しませんよ。表面をあとで拭いてあげれば大丈夫なので、リュックの中身にある物にまで血の匂いが染みたりすることもございません!」

 アウトドアショップで購入できる防水リュックは結構いい品質のもので、きちんとした防水処理がされているものであることはすでに確認している。

 こういったリュックには撥水(はっすい)加工された物と防水加工された物がある。撥水加工とは水をはじく加工がされているわけだが、その防水能力はそこまで高くないものが多いし、徐々に効果が落ちていく。

 さらに防水加工の上には完全防水と呼ばれるものがあり、ファスナーの部分にまで防水加工がおこなわれている。さすがに今のアウトドアショップの能力ではそこまでの物を購入することができなかった。

 登山や長期間の出かけたりする場合には多少高価でも、しっかりとした防水加工されたリュックを購入するのがおすすめである。

「色や大きさはこれしかないんですか?」

「申し訳ございませんが色や大きさはこれだけになります。ただ、腕を通す部分はこのように調整することが可能ですよ」

「へえ~便利ですね!」

 実際のところアウトドアショップでは他の色や大きさのものを購入する際に選べるのだが、あまり何種類もの商品を置くほどの店のキャパシティがないので、一般的っぽい茶色で中くらいの防水リュックを選択した。

 アウトドアショップの能力がレベル4になって商品数がかなり増えたため、まだまだ新しい商品を置くつもりだからな。もっと大きな店でないと、同じ種類の色違いや大きさ違いの商品を置けないのが辛いところでもある。

「そしてご紹介が遅れましたが、こちらのとても綺麗な女性は先週よりこのお店で働いてくれることになったアンジュさんです!」

「先週よりお世話になっているアンジュと申します。みなさん、どうぞよろしくお願いします」

「「「おおおおお~!」」」

 にっこりと微笑むアンジュを見た男の冒険者から、防水リュックを紹介した時よりも大きな歓声が上がる。……まあ男として分からないでもない。

「くそ、なんであんな綺麗な子に付き合っている野郎がいるんだ!」

「いや、あんなに綺麗だからだろ。しかもすげえ優しくていい子なのになあ……」

「嘘だろ! 聞いてねえぞ!」

 ……どうやらアンジュに付き合っている男がいることはすでに結構広まっているらしい。相変わらずこの世界の口コミ情報は広がるのが早いな。そして申し訳ないが、とどめを刺させてもらうとしよう。

「ええ~彼女にはお付き合いをしている男性がいるので、食事のお誘いなどはご遠慮くださるようお願いします」

「「「うわあああ!」」」

 結構な数の男冒険者がひざを折って絶叫を上げる。きっと彼女にひっそりと好意を持っていた駆け出し冒険者もいたんだろうな。

 他のお店だったら、集客のためにそんなことはお客さんに知らせないのが普通だと思うが、うちの店はお客さんに困っているわけではないので、バッサリと切らせてもらった。

 ……悪いことをしているわけではないのだが、なんだかものすごく申し訳ない気持ちになるな。

「そして彼女の兄もこの店で働いておりまして、セクハラなどしようものならお店から叩き出しますので、ご注意ください」

「へえ~お兄さんって、あの格好いい店員さんでしょ」

「美男美女の兄妹なんだね!」

「リリアさんも綺麗だし、フィアちゃんは可愛いし、このお店って売っている商品だけじゃなくて店員さん達も全員すごいよね!」

 ……ちょっとそこの女性冒険者パーティさん。ここにもそのお店の店長がいることを忘れないでね!