「テツヤ、おはよう」
「おっす」
「おはよう」
「ああ、みんなおはよう」
次の日の朝、早めに冒険者ギルドにやってきたつもりだったが、ロイヤ達3人はすでに先にいて俺を待っていた。
「もうひとりの冒険者も来ているぜ」
クイッと後ろを指すロイヤの先には、ひとりの女性がいた。
「……初めまして、テツヤと申します。本日はよろしくお願いします」
一瞬だけ言い淀んでしまったのは、この女性冒険者の左肩から先がなかったからだ。先天性のものか、事故によるものなのかはわからないが、彼女は隻腕の冒険者であった。
「ああ、あんたが依頼主のテツヤさんか。私はBランク冒険者のリリアだ、よろしくな」
「よろしくお願いします。……って、Bランク冒険者なんですか!?」
綺麗な金髪のショートカットの髪型で、女性にしては背がとても高く、175cmくらいある俺と同じくらいの身長だ。年齢は俺と同じくらいで、モデルのようなスタイルのとても綺麗な女性だ。腰には長めのロングソードを携えている。
「ああ、依頼料はCランク冒険者と変わらないから安心してくれ。Bランク冒険者といっても、見ての通り左腕を魔物にやられてしまってもうすぐ引退予定さ。今は久しぶりにこの街に戻ってきて、駆け出し冒険者の面倒を見るように頼まれているんだ。
この始まりの街でCランク以上の冒険者をやっているやつは、みんな私と同じようになんらかの理由があることが多い。片腕とはいえ、戦闘力はそのあたりのCランク冒険者には負けないから安心してくれ」
……なるほど、この始まりの街と呼ばれる場所にCランク以上の冒険者がいるのはそういうわけか。一種のボランティア活動なのかもしれない。
「わかりました。Bランク冒険者の方に護衛してもらえるなんてラッキーですね。よろしくお願いします」
リリアさんに右手を差し出す。この世界でも握手という行為は元の世界と同じ意味だと聞いている。
「……変わったやつだな。大抵のやつはBランク冒険者というよりもこの隻腕を気味悪がったり、同情したりするもんなんだがな。リリアでいいし、敬語も不要だ。よろしくな」
俺の差し出した右手を握り返してくれる。
左腕がないのは驚いたけど、こういう危険な世界ということはすでにわかっているし、気味悪がったりすることはなかった。
「わかった、俺もテツヤでいいよ。よろしくなリリア」
「じゃあな、気をつけて行ってこいよ」
「はい、ありがとうございます」
全員で冒険者ギルドから移動し、アレフレアの街の入り口までやってきた。できたばかりの商業ギルドカードを門番の人に見せ、街の外に出る。
「それじゃあ今日は薬草の採取だな。一応私が今回のパーティリーダーを務めるが、依頼は薬草の採取だし、そこまで指示を出すつもりもない。何かあったら遠慮なく話して相談しよう。
テツヤの依頼は駆け出し冒険者の行動を見学したいということだから、午前中は平原を回って、午後は森に移動し、1日で2箇所回ろうと思う。ここまでは大丈夫か?」
「「「はい」」」
「平原の方はたぶん大丈夫だと思うが、森の方ではモンスターに遭遇する可能性が高い。陣形としては普段のロイヤ達パーティの後ろにテツヤがつき、そのさらに後ろに私がつくことになる。もし戦闘がきついと思ったらすぐに代わるから、遠慮なく言ってくれ」
「「「はい」」」
「よし、それでは平原の方へ向かうとしよう」
俺達に的確に指示を出してくれるリリア。さすが経験豊富な冒険者だ。やはりロイヤ達の教育も兼ねているのだろう。
「あれ、ファルのリュックの横になにか紐で結んでいるの?」
「ああ、これは解体や剥ぎ取り用のナイフだ。よく使うからリュックの中じゃなくて横に紐で結んであるんだよ」
ファルのリュックの横には鞘のついた小型のナイフが紐で結ばれている。鞘の部分に紐の輪っかを繋げて、リュックの横にある隙間に紐を通している。
「そんな時にはこれ、テレレテッテレ〜、『カラビナ』!」
「テレレテッテ……?」
「ああごめん、そっちはどうでもいいから忘れて。紐だと千切れたりするし、いちいち結び直すのは面倒だろう。このカラビナという道具は金属でできていて切れないし、こんな感じで手軽に付けたり外したりできる。見た目よりも重くないしな」
「おおっ!」
「へえ〜!」
カラビナは手軽にキャンプギアをリュックやバッグに取り付けるのに便利だ。俺のリュックにもカラビナでマグカップや買い物袋を取り付けたりしていた。
「うん、確かにこれは便利だ。ここが手を離すと戻ってくる仕組みになっているんだな」
「これなら簡単に取り外しできていいわね!」
「それにカラビナが複数あれば、こんなふうにひとつのところにいくつも物をひっかけられるんだ」
「すごいなテツヤ! これなら頑丈そうだし、便利だぞ!」
「ちなみにひとつ銀貨1枚くらいだとどうだ?」
「ああ、それくらいなら買うと思うぞ」
「そうね、私もほしい!」
「ふむふむ、勉強になるな。あ、いくつかあるからみんなも使ってみて、あとで感想を教えてくれ」
リュックからアウトドアショップをレベルアップするためにたくさん買ったカラビナを取り出してみんなに手渡す。
「……これは便利だな。銀貨1枚か……テツヤあとでこれを5個くらい売ってくれないか? なにぶん片腕だと紐を結ぶことができなくてな。これなら簡単に紐を結ぶ代わりができる」
なるほど、確かに片腕では紐を結べない。それに手先が不器用な人や、指先が太くて紐を結べない種族もいるかもしれないから、そんな人達にこのカラビナは売れそうだ。
「ああ、もちろんだよ」
とりあえずカラビナは十分商品になりそうだということはわかった。こんな感じで、持ってきたキャンプギアをみんなにレビューしてもらい、お店で売る商品を選んでいく予定だ。
「おっす」
「おはよう」
「ああ、みんなおはよう」
次の日の朝、早めに冒険者ギルドにやってきたつもりだったが、ロイヤ達3人はすでに先にいて俺を待っていた。
「もうひとりの冒険者も来ているぜ」
クイッと後ろを指すロイヤの先には、ひとりの女性がいた。
「……初めまして、テツヤと申します。本日はよろしくお願いします」
一瞬だけ言い淀んでしまったのは、この女性冒険者の左肩から先がなかったからだ。先天性のものか、事故によるものなのかはわからないが、彼女は隻腕の冒険者であった。
「ああ、あんたが依頼主のテツヤさんか。私はBランク冒険者のリリアだ、よろしくな」
「よろしくお願いします。……って、Bランク冒険者なんですか!?」
綺麗な金髪のショートカットの髪型で、女性にしては背がとても高く、175cmくらいある俺と同じくらいの身長だ。年齢は俺と同じくらいで、モデルのようなスタイルのとても綺麗な女性だ。腰には長めのロングソードを携えている。
「ああ、依頼料はCランク冒険者と変わらないから安心してくれ。Bランク冒険者といっても、見ての通り左腕を魔物にやられてしまってもうすぐ引退予定さ。今は久しぶりにこの街に戻ってきて、駆け出し冒険者の面倒を見るように頼まれているんだ。
この始まりの街でCランク以上の冒険者をやっているやつは、みんな私と同じようになんらかの理由があることが多い。片腕とはいえ、戦闘力はそのあたりのCランク冒険者には負けないから安心してくれ」
……なるほど、この始まりの街と呼ばれる場所にCランク以上の冒険者がいるのはそういうわけか。一種のボランティア活動なのかもしれない。
「わかりました。Bランク冒険者の方に護衛してもらえるなんてラッキーですね。よろしくお願いします」
リリアさんに右手を差し出す。この世界でも握手という行為は元の世界と同じ意味だと聞いている。
「……変わったやつだな。大抵のやつはBランク冒険者というよりもこの隻腕を気味悪がったり、同情したりするもんなんだがな。リリアでいいし、敬語も不要だ。よろしくな」
俺の差し出した右手を握り返してくれる。
左腕がないのは驚いたけど、こういう危険な世界ということはすでにわかっているし、気味悪がったりすることはなかった。
「わかった、俺もテツヤでいいよ。よろしくなリリア」
「じゃあな、気をつけて行ってこいよ」
「はい、ありがとうございます」
全員で冒険者ギルドから移動し、アレフレアの街の入り口までやってきた。できたばかりの商業ギルドカードを門番の人に見せ、街の外に出る。
「それじゃあ今日は薬草の採取だな。一応私が今回のパーティリーダーを務めるが、依頼は薬草の採取だし、そこまで指示を出すつもりもない。何かあったら遠慮なく話して相談しよう。
テツヤの依頼は駆け出し冒険者の行動を見学したいということだから、午前中は平原を回って、午後は森に移動し、1日で2箇所回ろうと思う。ここまでは大丈夫か?」
「「「はい」」」
「平原の方はたぶん大丈夫だと思うが、森の方ではモンスターに遭遇する可能性が高い。陣形としては普段のロイヤ達パーティの後ろにテツヤがつき、そのさらに後ろに私がつくことになる。もし戦闘がきついと思ったらすぐに代わるから、遠慮なく言ってくれ」
「「「はい」」」
「よし、それでは平原の方へ向かうとしよう」
俺達に的確に指示を出してくれるリリア。さすが経験豊富な冒険者だ。やはりロイヤ達の教育も兼ねているのだろう。
「あれ、ファルのリュックの横になにか紐で結んでいるの?」
「ああ、これは解体や剥ぎ取り用のナイフだ。よく使うからリュックの中じゃなくて横に紐で結んであるんだよ」
ファルのリュックの横には鞘のついた小型のナイフが紐で結ばれている。鞘の部分に紐の輪っかを繋げて、リュックの横にある隙間に紐を通している。
「そんな時にはこれ、テレレテッテレ〜、『カラビナ』!」
「テレレテッテ……?」
「ああごめん、そっちはどうでもいいから忘れて。紐だと千切れたりするし、いちいち結び直すのは面倒だろう。このカラビナという道具は金属でできていて切れないし、こんな感じで手軽に付けたり外したりできる。見た目よりも重くないしな」
「おおっ!」
「へえ〜!」
カラビナは手軽にキャンプギアをリュックやバッグに取り付けるのに便利だ。俺のリュックにもカラビナでマグカップや買い物袋を取り付けたりしていた。
「うん、確かにこれは便利だ。ここが手を離すと戻ってくる仕組みになっているんだな」
「これなら簡単に取り外しできていいわね!」
「それにカラビナが複数あれば、こんなふうにひとつのところにいくつも物をひっかけられるんだ」
「すごいなテツヤ! これなら頑丈そうだし、便利だぞ!」
「ちなみにひとつ銀貨1枚くらいだとどうだ?」
「ああ、それくらいなら買うと思うぞ」
「そうね、私もほしい!」
「ふむふむ、勉強になるな。あ、いくつかあるからみんなも使ってみて、あとで感想を教えてくれ」
リュックからアウトドアショップをレベルアップするためにたくさん買ったカラビナを取り出してみんなに手渡す。
「……これは便利だな。銀貨1枚か……テツヤあとでこれを5個くらい売ってくれないか? なにぶん片腕だと紐を結ぶことができなくてな。これなら簡単に紐を結ぶ代わりができる」
なるほど、確かに片腕では紐を結べない。それに手先が不器用な人や、指先が太くて紐を結べない種族もいるかもしれないから、そんな人達にこのカラビナは売れそうだ。
「ああ、もちろんだよ」
とりあえずカラビナは十分商品になりそうだということはわかった。こんな感じで、持ってきたキャンプギアをみんなにレビューしてもらい、お店で売る商品を選んでいく予定だ。