「……本当によろしいのですか?」
「ええ。うちのお店にはリリアやランジェさんもいますし、冒険者ギルドとも協力関係にあります。普通の商店よりは安全だと思いますよ」
俺自身にはアンジュさんを守る力なんてないが、うちのお店には頼りになる従業員がいる。それに何か問題があったとしても、きっとライザックさんとパトリスさんが力になってくれるはずだ。他力本願であるが、俺の周りには頼りになる人が大勢いるからな。
「テツヤならそう言うと思っていたぞ! アンジュ、安心してくれ。アンジュに付きまとう男が現れたら、私達で何とかする!」
「うん、僕もリリアもいるからね! 大船に乗ったつもりで任せておいてよ!」
2人とも頼もしい限りである。
「みなさん……ありがとうございます! ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「テツヤさん、今日からよろしくお願いします!」
「うん、アンジュさん、こちらこそよろしくね」
「アンジュで大丈夫です。みなさんもお気軽に呼び捨てで呼んでくださいね」
今週の休日、アンジュがお店へとやってきた。今日は休日を使ってアンジュの新人研修をすることになった。そしてアンジュが来るということで、当然ながら……
「うん、似合っているぞ、アンジュ! お兄ちゃんがなんでも教えるから任せておいてくれ!」
「はあ……兄さんは離れて見ていてください」
シスコンの兄であるドルファも呼んでいないのにお店へやってきている。まあ仕事を教える手伝いをしてくれるのならありがたいか。
アンジュもウインドブレーカーに、このお店のマークの刺繍を入れたお店の制服を着用している。今日のために急いで仕上げてくれたみたいだ。俺達が今使っている制服も、以前にアンジュ達が作ってくれたものだからな。
「接客を鍛えるなら、僕に任せておいてね!」
いや、この店ではランジェさんが一番仕事を始めてから日が浅いんだけどね……
ランジェさんは今週も引き続きお店で働くと言ってくれた。アンジュがお店を移ってすぐに例のストーカー男が姿を現す可能性もあるし、なにより初めて自分の後輩ができて張り切っているのかもしれない。
「私もいるから、分からないことがあれば何でも聞いてくれ」
「はい。ランジェさん、リリアさん、いろいろとご迷惑をお掛けすると思いますが、どうぞよろしくお願いします!」
「うん、まったく問題なさそうだね。今みたいな感じで接客してもらえれば大丈夫だよ」
「はい、ありがとうございます」
「……うん、僕が教えることは何もなかったみたいだね」
「私も精進しなければ……」
まあアンジュは今までずっと商店や飲食店で働いていたらしいし、接客業を始めてからまだ1ヶ月も経っていないランジェさんよりも接客がうまいのは当然と言えば当然だ。もうこのお店の店員として板のついてきたリリアにとってもいい刺激となったみたいだ。
「ああ、さすがアンジュだ! まるで天使のように美しい! しかし、こんなに美しい店員がいるなら、必ず邪な思いを持つ男がいるはずだ。常に目を光らせておかなければ!」
「「「………………」」」
どちらかというとアンジュの接客よりも、アンジュに対するドルファの反応のほうが問題になりそうだ。
「……兄さん、分かっているとは思うけれど、何か問題を起こしたら私達ふたりともクビになるのよ。絶対に軽率な行動だけは取らないでね!」
「あ、ああ……分かっているさ!」
一応ドルファのアンジュに対する過保護な対応については知っているが、それについてはアンジュのほうが長年付き合ってきたこともあり慣れているだろう。
もちろんよっぽどの問題を起こさない限りは、2人をクビにするなんてことはしないが、ドルファにはしっかりと釘を刺しておかないといけない。
このお店のお客さんの大半は男性冒険者なので、綺麗な容姿をしているアンジュに声をかける人も多いだろう。さすがにその度にお客さんへ突っかかられては困る。その場合には本当にアンジュを雇うのを見送らければならなくなってしまう。
「……何かあったらリリアとランジェさんに任せるけれど大丈夫?」
「ああ、とりあえず止めることならできると思うぞ」
「僕もそれくらいなら大丈夫かな」
アンジュに害を与えたり、セクハラをするようなお客さんがいたらぶっ飛ばしてもいいとは思うが、さすがにやり過ぎてしまってはドルファ自身が逮捕されてしまう可能性もある。その場合はリリアやランジェさんに全力で止めてもらうしかない。
こっちの世界は元の世界とは違って、殴ったら即傷害罪で逮捕みたいなことはないが、やり過ぎれば衛兵に捕まってしまうからな。
「……重ね重ねご迷惑をおかけします」
「そのあたりも含めてアンジュを雇うわけだから、そこまで気にしないでいいからね」
とりあえずドルファと同じで一週間の試用期間になるから、どうなるか様子を見てだ。少しずつ矯正できそうならそれでいいとは思う。
それにしてもストーカーかあ……アンジュも綺麗な女性だからな、綺麗な子は綺麗な子でいろいろと大変らしい。
そしてアンジュがお店に入ったことにより、より一層俺のフツメン具合が際立ってしまうことになる。ドルファとランジェさんは強いイケメンだし、リリアとアンジュは美人、フィアちゃんは可愛い女の子だし、店長の俺の影がますます薄くなるような……いや、気のせいに違いない。
「ええ。うちのお店にはリリアやランジェさんもいますし、冒険者ギルドとも協力関係にあります。普通の商店よりは安全だと思いますよ」
俺自身にはアンジュさんを守る力なんてないが、うちのお店には頼りになる従業員がいる。それに何か問題があったとしても、きっとライザックさんとパトリスさんが力になってくれるはずだ。他力本願であるが、俺の周りには頼りになる人が大勢いるからな。
「テツヤならそう言うと思っていたぞ! アンジュ、安心してくれ。アンジュに付きまとう男が現れたら、私達で何とかする!」
「うん、僕もリリアもいるからね! 大船に乗ったつもりで任せておいてよ!」
2人とも頼もしい限りである。
「みなさん……ありがとうございます! ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「テツヤさん、今日からよろしくお願いします!」
「うん、アンジュさん、こちらこそよろしくね」
「アンジュで大丈夫です。みなさんもお気軽に呼び捨てで呼んでくださいね」
今週の休日、アンジュがお店へとやってきた。今日は休日を使ってアンジュの新人研修をすることになった。そしてアンジュが来るということで、当然ながら……
「うん、似合っているぞ、アンジュ! お兄ちゃんがなんでも教えるから任せておいてくれ!」
「はあ……兄さんは離れて見ていてください」
シスコンの兄であるドルファも呼んでいないのにお店へやってきている。まあ仕事を教える手伝いをしてくれるのならありがたいか。
アンジュもウインドブレーカーに、このお店のマークの刺繍を入れたお店の制服を着用している。今日のために急いで仕上げてくれたみたいだ。俺達が今使っている制服も、以前にアンジュ達が作ってくれたものだからな。
「接客を鍛えるなら、僕に任せておいてね!」
いや、この店ではランジェさんが一番仕事を始めてから日が浅いんだけどね……
ランジェさんは今週も引き続きお店で働くと言ってくれた。アンジュがお店を移ってすぐに例のストーカー男が姿を現す可能性もあるし、なにより初めて自分の後輩ができて張り切っているのかもしれない。
「私もいるから、分からないことがあれば何でも聞いてくれ」
「はい。ランジェさん、リリアさん、いろいろとご迷惑をお掛けすると思いますが、どうぞよろしくお願いします!」
「うん、まったく問題なさそうだね。今みたいな感じで接客してもらえれば大丈夫だよ」
「はい、ありがとうございます」
「……うん、僕が教えることは何もなかったみたいだね」
「私も精進しなければ……」
まあアンジュは今までずっと商店や飲食店で働いていたらしいし、接客業を始めてからまだ1ヶ月も経っていないランジェさんよりも接客がうまいのは当然と言えば当然だ。もうこのお店の店員として板のついてきたリリアにとってもいい刺激となったみたいだ。
「ああ、さすがアンジュだ! まるで天使のように美しい! しかし、こんなに美しい店員がいるなら、必ず邪な思いを持つ男がいるはずだ。常に目を光らせておかなければ!」
「「「………………」」」
どちらかというとアンジュの接客よりも、アンジュに対するドルファの反応のほうが問題になりそうだ。
「……兄さん、分かっているとは思うけれど、何か問題を起こしたら私達ふたりともクビになるのよ。絶対に軽率な行動だけは取らないでね!」
「あ、ああ……分かっているさ!」
一応ドルファのアンジュに対する過保護な対応については知っているが、それについてはアンジュのほうが長年付き合ってきたこともあり慣れているだろう。
もちろんよっぽどの問題を起こさない限りは、2人をクビにするなんてことはしないが、ドルファにはしっかりと釘を刺しておかないといけない。
このお店のお客さんの大半は男性冒険者なので、綺麗な容姿をしているアンジュに声をかける人も多いだろう。さすがにその度にお客さんへ突っかかられては困る。その場合には本当にアンジュを雇うのを見送らければならなくなってしまう。
「……何かあったらリリアとランジェさんに任せるけれど大丈夫?」
「ああ、とりあえず止めることならできると思うぞ」
「僕もそれくらいなら大丈夫かな」
アンジュに害を与えたり、セクハラをするようなお客さんがいたらぶっ飛ばしてもいいとは思うが、さすがにやり過ぎてしまってはドルファ自身が逮捕されてしまう可能性もある。その場合はリリアやランジェさんに全力で止めてもらうしかない。
こっちの世界は元の世界とは違って、殴ったら即傷害罪で逮捕みたいなことはないが、やり過ぎれば衛兵に捕まってしまうからな。
「……重ね重ねご迷惑をおかけします」
「そのあたりも含めてアンジュを雇うわけだから、そこまで気にしないでいいからね」
とりあえずドルファと同じで一週間の試用期間になるから、どうなるか様子を見てだ。少しずつ矯正できそうならそれでいいとは思う。
それにしてもストーカーかあ……アンジュも綺麗な女性だからな、綺麗な子は綺麗な子でいろいろと大変らしい。
そしてアンジュがお店に入ったことにより、より一層俺のフツメン具合が際立ってしまうことになる。ドルファとランジェさんは強いイケメンだし、リリアとアンジュは美人、フィアちゃんは可愛い女の子だし、店長の俺の影がますます薄くなるような……いや、気のせいに違いない。