ここはバールドア城の用水路。

 清美はサクリスとこの城から脱走するためここにいた。

 あれから警備の目をかいくぐり、なんとかここまでくる。そうここは、用水路の出入口だ。

「チッ、流石に正規ルートだと警備が多い」

 壁の隙間から出入口の方を見据え、サクリスは小声でそう言う。

「じゃあ、どうするの?」

 小声で清美が、そう問いかける。

「別のルートを行く」

「他にもあるの?」

 そう聞かれサクリスは、無言のまま頷いた。

 その後、二人はこの場から離れ別の場所へと向かう。



 ――場所は変わり、タータム草原――


「これは……まさか、あの白銀の髪をしている男……」

 木の上からエルフの女性ララファルは、少し先にいる泪たちをみている。

(もしそうなら……長老に知らせないと。だけど、先程の様子だと能力が使えないようにみえました。何か訳があるのでしょうか?
 そうですね、少し様子をみた方がいいかもしれません。それからでも、遅くありませんし)

 そう考えがまとまるとララファルは、泪たちの尾行をすることにした。そして、木の上で監視を続ける。



 ――場面は移り、タータム草原の泪たちが居る地点――


 あれからムドルさんとメーメルは、私たちの方にきた。グレイは頭を抱え蹲って(うずくまって)いる。

「さて、これからどうしましょう、か。グレイ?」

 意地悪気味に言うとムドルさんは、ニヤリと口角を上げグレイをみた。

「そ、そうだな」

 そう言いながらグレイは立ち上がる。若干、まだ顔を引きつらせていた。

 とりあえず私は、二人の話を黙って聞いていようと思う。

「グレイ、その前になのだがのう。お前、もしや……」

「メーメル、それは……」

 グレイは言うのをためらっている。

「フゥー、腹を括るしかねえか。恐らく、メーメルが思っている通りだ」

「なるほど、やはりそういう事か……」

「メーメル様、どういう事なのですか? 私には、何がなんだか分からないのですが」

 そう聞かれグレイとメーメルは俯いた。


 どうしたんだろう? メーメルとグレイ、急に黙っちゃった。そんなに話しづらいことなのかな。確かに、私も驚いたけど。


 そう思いながらグレイをみる。……空気が重い。

「私も知りたい。お願いグレイ、それにメーメルも……話して! 何を聞いても驚かないから」

「そうですね。私もルイさんと同じ気持ちです」

 そうムドルさんが言うとグレイとメーメルは、お互い見合わせ頷く。

「そうだな」

「うむ、隠せないという事じゃ」

 グレイとメーメルは、そう言い重い口を開き話し始める。それを私とムドルさんは、黙って聞いていた。