ここは古びた倉庫内の正面入口付近。

 メーメルが倉庫の中に入るほんの数秒前に、グレイフェズはここに来ていた。


 そして時は、そこまで巻き戻る……。


 倉庫内の入り口付近。グレイフェズは、気づかれないように警戒しながらそっと建物の中に入った。

(この辺には、見張りがいない。……手を抜いてるのか? それとも人数が少ないのか……)

 そう思いグレイフェズは、薄暗い建物内を気配を探りながらブローチの反応を頼りに進む。

(もう少し先か?)

 更に奥へと向かった。

「……!?」

 誰かの気配を感じ静止する。そしてグレイフェズは、咄嗟に近くの荷箱の物陰に隠れた。

(二人……こっちにくる)

 こっちに向かってくる二人組を目で追う。と同時に、耳を澄ます。

「惜しいな。滅多にあれだけの上玉にあえねぇぞ」

「ああ、確かにだ。だが、アイツらみたいに死にたくないしな」

「ホントにな。でも、ソイツらの前にしくじった三人組は逃げたって聞いたが」

「……らしいな。しかし、みつけ出され殺されるのも時間の問題だと思うぞ」

 そう言いながら二人の男はグレイフェズが居る方へ向かってくる。

(なるほど……だが、それをあのコルザ様が指示した。まだ、納得できない。もしそうだとして、いったいなんでこんなことをしているんだ。あの人の意思とも思えない。
 何か起きてるとしか……今はそれを考えている余裕はない、な。そのことは、ルイと商人の娘を救い出してから考えるか)

 グレイフェズの目の前を二人の男が通りかかった。その瞬間、グレイフェズは動く。

 自分から近い男の体を掴み、顔を思いっきり殴り気絶させると床に無造作に置く。

 すかさず低姿勢になりもう一人の男の背後にまわった。瞬時に後ろから手をまわし口を塞ぐと、睡眠の魔法で眠らせる。

 それは、ほんの一瞬で行われた。

(これでいい。あとは……)

 二人を荷箱の物陰まで運んだ。その後、布で口を覆い魔法が掛けられている縄で拘束する。

(この奥に、ルイがいる。早く助けなきゃな)

 そう思い二人組が来た方を向いた。それと同時に、慎重に警戒しながら歩き始める。


 グレイフェズは色々考えながら歩いていたが、立ちどまった。すると、荷箱の物陰に隠れる。

(ブローチが強く反応した。それにこの気配は……)

 そっと荷箱の物陰から気配が感じた方を見据えた。

 リーダー風の男が泪の顔を丁度のぞき込んでいる所である。

 それをみてグレイフェズは、怒りがこみ上げて来ていた。

(あの野郎っ! ルイに何をするつもりだ)

 そう思うも、なんとか冷静になり辺りを見回してみる。

(メーメルの気配がする。ってことは、動いても大丈夫そうだな)

 メーメルが来てることを確認すると泪が居る方をみた。