ここはサイアル城。翌日になり美咲と司は特別に用意された一室へ来ていた。勿論、泪も籠に入れられここに来ている。

 因みに泪の籠は専用の台の上に置かれていた。

 (うわぁー……高くて眺めがいいなぁ。まるで高貴な鳥になった気分。
 そういえば……こう云うの良くアニメとかテレビでみたことあったけど実際は、こんな感じなんだね)

 上機嫌で泪は籠の中で翼を、バサバサと羽ばたかせている。

 「なんかルイが暴れてる」

 どうしたのかと思い美咲は泪の籠の方へ歩み寄った。

 「慣れない所で驚いているだけじゃないのか」

 そう言うも心配で司も泪の籠のそばへとくる。

 「そうなの? それだけならいいけど……外に出たいんじゃないのかな」

 「外にか……部屋の中から出さなければ大丈夫だろう」

 籠の窓を司が開けると泪は、いいのかなと思いながら外へでてみた。

 「なんか、キョロキョロしてるね。出たくなかったのかな?」

 「どうだろうな。何ヶ月も籠の中に居たから不安になったのかもしれない」

 「そういえば体を洗う時だけしか籠から出してあげてなかった」

 美咲は手を泪へ向けると「おいで」と優しく声をかける。

 それを聞き泪は喜び飛び立ち美咲の手へ降り立った。

 (美咲さんの手のひら……久しぶりだなぁ。それに籠から出て飛ぶのも。久々すぎて飛ぶのが怖かったけどね)

 泪をみて美咲は、ニコニコと笑みを浮かべている。

 「こう云うのもいいな。だけど、この部屋に居られるのも数日だけだ」

 「うん、早く終わらせたい。でも、ここには居たい気もする。まあ昼間だけだけどね」

 「そうだな……さてと、仕事をするか」

 机の方へと向かい司は歩き出した。

 「私は小説の続き書くね」

 泪を籠の中に戻す。その後、籠を持ちソファの方へ向かった。

 籠をテーブルに置くと美咲は、ソファに座りバッグの中からペンと紙を取り出して置いた。

 「んー……何処まで書いたっけ?」

 書いた方の紙を確認すると美咲は読み直している。その後、新しい紙に続きを書き始めた。

 それを泪は籠の中からみている。

 (いつ完成するのかな? 私がここに居る間に完結してほしい。だって元に戻ったら読めないかもしれないし)

 そう思いながら泪は美咲が書く小説を読んでいた。


 ▼△★△▼☆▼△


 司は机に向かい書類をみている。

 (よくもこんなに沢山の欲しい物を思い付くな。それも殆どが、この世界にないような物ばかりで無理難題もいいところだ。
 あのなさそうな頭の何処で考えてるんだ? まあ、それだけ欲の塊ってことか。とりあえず創れそうなのを選ぶか)

 書類を一枚ずつ確認し始め可能な物と無理な物を仕分けした。


 ▼△★△▼☆▼△


 場所はベンデアの書斎。ここにはベンデアの他にガルディスがいる。

 二人はソファに並んで座っていた。

 目の前には、お茶やお菓子などが置かれている。

 「ベンデア様、お話とはなんでしょうか?」

 「出世はしたくないか?」

 「できるのであればしたい。ですが簡単にできるものではありません」

 真剣な表情でガルディスはベンデアを見据えた。

 「確かに簡単ではないわね。だけどワタシが口添えすれば爵位を与えることなど容易いわ」

 「なるほど……ですが何も貢献もせずに位を与えて頂いても周囲の反感をかうだけかと」

 「そんなのは権力で、ねじ伏せればいいのよ」

 ニヤリと笑みを浮かべてベンデアはガルディスをみる。

 「申し訳ありません。気持ちは嬉しいのですが、もう過去のような過ちをおかしたくないのです」

 思いつめた表情でガルディスは立ち上がった。

 「見た目と違い……硬いわね。まあいいわ、それよりも……楽しい話をしましょう」

 「失礼する。いえ、すみません……今日は宿舎に戻ります」

 そう言いガルディスは扉まで行くと部屋をでる。

 「使えないわね。ラギルノ……硬そうだけど駄目もとで誘ってみようかしら」

 扉の近くにいる従者を自分の方へ呼びつけた。その後ラギルノを連れてくるように指示をだす。

 その間ベンデアはソファで寛いでいたのだった。