――……一週間後。

 ここは司と美咲の屋敷だ。

 あれから美咲は、いくつか簡単なプロットを書いた。そして悩んだ挙句、自分たちのことを題材にした物語を書くことにする。勿論、色々盛ってだ。


 そしてここは美咲の部屋である。

 昼間だというのに美咲は机に向かい物語を書いていた。

 その近くでは机上に置かれた籠の中から泪が美咲をみている。

 「んー……読み直してみるか」

 そう言い美咲は最初から読み始めた。


 ――【とある世界からこの地に若い男女が降り立つ……。その男女は、とある城の庭で目覚める。その後この城の兵士たちにみつかり問い詰められた。
 そのため、その男女は訳を話すが兵士たちに信用してもらえず牢に入れられてしまう。
 しかし、この城の王が興味を持ち別世界から来た男女に会いたいと言った。
 その後、異世界から来た男女は謁見の間で王と大臣と話をする。そして話を終えると異世界から来た男女は部屋を用意してもらった。勿論、別々の部屋だ。
 因みに異世界の男女は好き合っていない。どちらかといえば男性の方が一方的に女性のことをストーカーまがいをするぐらい好きなのだ。
 異世界の男女は数日後、庭を歩いていると兵士に呼び止められ大臣が呼んでいると言われ向かった。
 そして異世界の男女は大臣が待つ部屋にくると話を聞きたいと言われる。
 そのため自分たちのことを話しながら置かれていたお菓子を食べたり飲み物を飲んだ。
 だが、そのあと異世界の男女は途轍もない眠気に襲われ眠ってしまう。そう、飲食物に眠り薬が入れられていたのである。
 眠ったことを確認すると大臣は異世界の男性を縄で縛り拘束した。その後、兵士を呼び用意していた部屋に運ばせる。
 それが済むと大臣は異世界の女性を抱きかかえ部屋をでた。そして儀式が行われる祭壇がある山の麓へと向かう。
 そう毎年この時期に龍神祭が行われ女性を生贄に龍神に差し出すことになっているのだ。
 そのため偶然この世界に来た異世界の女性を生贄にと考えたのである。要は自分の国の者を生贄にしたくないという事なのだ。最低である。
 龍神祭が行われるとされる山の麓では祭壇の準備が整っていた。そこに異世界の女性を抱えた大臣が姿を現せる。
 一方城では異世界の男性がベッドの上で目覚めた。そして自分におかれている状況を把握し拘束している縄を解こうと暴れる。だが解けない。
 そうこうしていると部屋の外から見張りの兵士たちの声が聞こえてくる。その兵士たちは龍神祭のことと異世界の女性のことを話していた。
 それを聞き異世界の男性は必死で拘束の縄を解こうとする。その時、偶然に異世界の男性の手に炎が現れた。
 そうこの時、最初の能力である炎の具現化が発現したのである。
 異世界の男性は、その炎のお陰で縄を焼き切ることができた。
 その後、異世界の男性は部屋の扉を焼き壊すと通路へでる。そして通路に居た兵士を殴り倒すと急ぎ山の麓へと駆け出した】――

 書いたところまで読むと美咲は再び考えながら書き始める。

 (凄いね。まだ途中だけど……これが本当なら美咲さんは生贄にされた。でも今ここに居るってことは……助かったんだよね? んー……でも、どうやって助かったんだろう)

 そう思いながら泪は美咲へ視線を向けた。