ここはドルムスの屋敷付近の建物。その物陰からセフィルディはドルムスの屋敷をみている。

 (これは……天の助けか。ああ、これでドルムス様は助かるだろう。ですが、あの男女の二人組……。男性の方は、無詠唱で炎を出していた。
 いえ、アレは魔法ではありません。そうなると……あの二人は、異世界の者となりますね。……まさかと思いますが、勇者さまと聖女さま)

 そう思いセフィルディは美咲をみた。

 (そうだとすれば、ドルムス様と一緒に居る方が聖女さま。……屋敷に入っていった方が勇者さまですね。
 んー確か、勇者さまは指名手配されていたはず。まぁ……一つの城を崩壊させてしまったのですから、当然でしょう。
 さて、どうしましょうか? ……この働き次第では……。ドルムス様が、どう判断するかになりますけれども)

 そう思考を巡らせている。


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 ここは屋敷の中。

 現在、司は目の前に居る男をみて顔を引きつらせていた。その男はエメラルドグリーンの髪で眼鏡をかけたゴツイ体格をしている。

 「なぜ司、お前がここにいる!?」

 そう言いその男は司をみて驚きビクついていた。

 「それは俺の台詞だ! なんでラギルノが、生きている?」

 そう司の目の前に居る男とは、かつてこの世界に来た頃にとある町の鉱山で戦い倒した相手だ。……それが一度目。

 名前はラギルノ・ダルフェである。昔は帝国の四天王、そしてリーダーだった。だが司や美咲と協力国の者たちにより、大陸にあった帝国の領土は占領される。

 その時、司と再戦するが倒された。その後なんども、司とやり合うも全敗だ。……生きているのが不思議なくらいである。

 「おい、それは酷いんじゃないのか。まぁ、死にかけたのは確かだがな」

 「そうか、相変わらず運がいいな。あーいや違うか……体力バカだった」

 そう司に言われラギルノは、頭に血がのぼる。

 「ウグッ……相変わらずだな。だが、今度こそお前を倒す!!」

 そう言いながらラギルノは、司を指差した。

 「あーハイハイ……それ、なんど聞いただろうなぁ」

 司はジト目でラギルノをみる。

 「ふんっ、まあいい。そんな口を聞けなくしてやる!」

 そう言いラギルノは、異空間から斧を取り出した。

 「そういや、ルナセアはどうした?」

 「ルナセアか……国を裏切ってから、どこに行ったか行方不明だ」

 「そうか……あれから、かなり経つからな」

 そう司が言うとラギルノは、呆れた顔をする。

 「お前は相変わらず、お人好しのようだな。そんなんだから、いいように利用されたんだろうが」

 「ああ、そうだな。だが……ほっとけないんだ」

 「まぁ……それがお前の、いいところなんだろうがな」

 それを聞き司は首を傾げる。

 「珍しいな。お前が、俺を褒めるなんて」

 「褒める? いや、嫌みのつもりなんだが」

 「あーそういう事か。まあ、そういう事にしといてやるよ。それはそうと……この件から手を引く気はないか? お前が、俺に勝てる確率はゼロだ」

 そう言われラギルノは考えた。

 (確かに今回の依頼料を考えると……割に合わん。んーよりにもよって、司がこの村にいるとはな。だがこれは……司とのリベンジをするまたとないチャンス)

 そうこうラギルノは思考を巡らせる。

 (考えてるな。上手くいけば、ここは戦わないで済むかもしれない。下手にラギルノとやれば、この屋敷が崩壊……いやそれだけで済めばいい方だ。……村が消し飛ぶ)

 そしてラギルノの返答を待つ間、司は色々と考えていたのだった。