美鈴はその後、再びドラギドラスへと両手を翳した。

 《ドラギドラスにかけられた全ての術を『無効化』!!》

 そう言い放つと、ドラギドラスの真下に魔法陣が現れる。それと同時に、眩く発光しドラギドラスを覆った。

 その時、辺りがグラグラと激しく揺れ始める。

 マグドラスは、いきなり揺れ始め驚き戸惑う。いやそれだけではない。ドラギドラスの体から、途轍もないほどの威圧感が放たれ、それを感じとりゾクゾクと身を震わせた。

「いったいこれは……。この感覚かつてどこかで。だが、なぜドラギドラスからこれほどまでの威圧感が……いや、まだ膨れ上がっている」

 その威圧に押されマグドラスは後退する。

「なんなの、この威圧感。これが本来のドラギドラス……」

 美鈴はドラギドラスが放つ眩い光と威圧感に、まともに目を開けていることができない。

 そうこうしていると、ドラギドラスの体が徐々に人型へと変わり縮んでいく。それと共に、ドラギドラスから放たれていた光が弱まる。

 ドラギドラスの体から放たれていた光が、急に一箇所に凝縮されると、パァーンっと大きな音を立て弾け洞窟内に響き渡った。

 マグドラスは、何が起きたのかと驚き目を丸くする。

 片や美鈴も、またその音に驚き尻餅をついた。

 その後マグドラスと美鈴は、恐る恐る目の前にいる者をみる。

 だが、どこにもドラギドラスの姿がみえない。そうそこにいるのは……。


 __見た感じ二十代前半ぐらいで痩せている。だが、見た目より筋肉質でがたいがいい。しかしその割には、褐色の肌で優しい顔だちだ。

 緑色の長い髪。前髪は真ん中分けで目よりも長い、左右二箇所ずつ黄色のメッシュ。頭の両脇に銀色のツノが内側の向きに生えている。

 そして体から発している威圧感は、かなり強いことを証明していた。


 __マグドラスは目をこらえ、その者を見据える。と同時に、更に驚き声を荒げた。

「ハッ! な、なぜここにドラバルト様が……いや、まさか。そんなことは、あり得ん。あの方は何千年も前に、女神が召喚した勇者により、敗北し息絶えたと風の噂に、」

 一呼吸おくと、気持ちを落ち着かせ再び話し出す。

「……確か、そこにはドラギドラスがいたはず。だが見た目とこの感じは、間違いなくドラバルト様のもの。いったいこれは、どういう事だ」

 そう言いマグドラスは、ドラギドラス……いや、ドラバルトを凝視する。

「ふっ、やはり気づいたようだな。そう我こそは竜人族最強と謳われ、そして魔王テルマ・K・ティム様の配下である四帝が一人ドラバルト・バッセルだっ!!」

 そう言い放ちマグドラスを見下すような目でみた。

 だがまだマグドラスは信じられず、ドラバルトを疑いの目でみる。

(うむ、本当にドラバルト様なのか? そうだとして、なぜ今まであのような姿をしていたのだ……。どうも納得がいかぬ、)

 そう思い自問自答していた。

 美鈴は何がなんだか分からず、呆然とその光景をみている。

(えっと、ちょっと待って。これってどういう事? ドラギドラスがカッコ良くなって。それも……魔王の配下、それも四帝。てことは、かなり強いってことだよね。
 さっきある程度、聞いてはいたけど。まさか、ここで魔王という言葉を聞くとは思わなかった。それに言葉づかいと態度も思いっきり変わってるし、)

 余計に混乱し考えが及ばなくなり美鈴は、頭を抱えうずくまった。

 その後もドラバルトは理由を話す。

「……いや、やはり信じられん。……そうだな、こうしよう。もし本物のドラバルト様なら、儂の攻撃など容易く交わせるはずだ」

 そう言うとマグドラスは、ドラバルトに決闘を申し込んだ。

 ドラバルトはそれを聞きニヤリと口角をあげる。

「ああ、いいだろう。それに面白そうだ。その申し出、受けようではないか」

 そして洞窟内を再び重々しい空気が漂い始めたのだった。