そしてもちろん、ヨシュアもボロ負けで終わった。
ただし、1分保たなかったカズンやユーグレンと違って、5分持ち堪えていたのはさすがといえる。
普段の騎士団の訓練で、団員同士の試合が5分保たないとなれば訓練指導者のゲンコツが待っているものだが、今回ばかりは誰もがヨシュアを讃えた。
「あの魔王相手に、5分も持ち堪えられたとは……!」
「さすがは最年少魔法剣士! そこに痺れる憧れるうううう!」
「よっ、竜殺し! ドラゴンスレイヤー!!」
「ハグしてあげたーいっ!」
「むしろお前こそが勝者だー!!!」
「………………」
なお、ヨシュアは試合後の歓声には俯いて、いっさい応えなかった。
「これにてランクアップ試験を修了とする。試験官のリースト子爵ルシウスから結果発表だ!」
会場でそのまま王太女グレイシアが修了宣言し、その場でルシウスからの結果発表となった。
「ユーグレン王子、カズン・アルトレイ、ヨシュア・リースト。3名の結果発表を行う」
厳かなルシウスの低い美声に、カズンたちは固唾を飲んで次の言葉を待った。
「試験の結果、全員に適切なランクへのランクアップを認める。ユーグレン王子とカズン・アルトレイはランクEから2段階アップでランクCへ。ヨシュア・リーストも同じくランクCから2段階アップでランクAに昇格するものとする。異論がある者はいるか?」
ルシウスが会場の軍部の要職にある者たちを見回す。
即ち王太女グレイシア、その伴侶クロレオ。
王都騎士団の団長と副団長。なお副団長はカズンの親友ライルの父、ホーライル侯爵だ。
そのライルは今日はグレンとまたダンジョンに潜っていて今回は不参加だ。彼らは冒険者活動で問題なくランクアップできるということもある。
そんな彼ら全員が無言だった。
ということは異論なしだ。
カズン、ユーグレン、ヨシュア。
三人、圧倒的な壁に挑んだ甲斐は充分あったといえよう。
その後、王宮で王太女グレイシアが催してくれた慰労会では、半泣きのヨシュアという珍しいものが見られた。
「ううっ、本当に何で叔父様が当主じゃないんでしょう? オレより絶対、叔父様のほうが相応しいですよね?」
「仕方なかろう。リースト伯爵家の当主は、本家筋の“最も魔法剣の本数が多い者”がなるんだ。お前は100本以上、私はたった1本。ほら、もう勝負はついている」
「その1本でオレの魔法剣ぜんぶ凌駕してるくせに!」
「ヨシュア……ほら落ち着け、美味しいもの沢山あるぞ?」
普段はヨシュアを引っ張り回すばかりのカズンがヨシュアの宥め役に回っているという、これまた珍しい光景があった。
ちなみにヨシュアはカズンと違って、美味しいもの程度では誤魔化されることがない。
「慰めのハグを所望します」
「なぜだ。僕だって負けてるのだから僕こそ慰めが欲しい。鮭! 魚卵はどうしたヨシュア!」
「……そこで素直にハグしてくれない、そんなあなたも大好きですよ、カズン様」
何だか切ない顔で微笑まれてしまった。
一方、ユーグレンとその家族はといえば。
「うむ……まあ、あのルシウス相手によくやったと褒めてやるぞ、愚息よ」
「……次はもっと長く戦って見せます」
「まあ無理するな、一生かけてもあやつに勝つのは無理だ」
「ですよね……」
せめて五手ぐらい試合えると思っていた頃がユーグレンにもあった。具体的には試験の寸前までは。
実に甘かった。
「ルシウス君は相変わらずですねえ。何事にも手を抜かないところは昔から変わっていない」
氷入りのレモネードのグラスを息子に差し出しながら、王太女の伴侶でユーグレンの父クロレオが優しく微笑みながら、しみじみ呟いている。
ただし、1分保たなかったカズンやユーグレンと違って、5分持ち堪えていたのはさすがといえる。
普段の騎士団の訓練で、団員同士の試合が5分保たないとなれば訓練指導者のゲンコツが待っているものだが、今回ばかりは誰もがヨシュアを讃えた。
「あの魔王相手に、5分も持ち堪えられたとは……!」
「さすがは最年少魔法剣士! そこに痺れる憧れるうううう!」
「よっ、竜殺し! ドラゴンスレイヤー!!」
「ハグしてあげたーいっ!」
「むしろお前こそが勝者だー!!!」
「………………」
なお、ヨシュアは試合後の歓声には俯いて、いっさい応えなかった。
「これにてランクアップ試験を修了とする。試験官のリースト子爵ルシウスから結果発表だ!」
会場でそのまま王太女グレイシアが修了宣言し、その場でルシウスからの結果発表となった。
「ユーグレン王子、カズン・アルトレイ、ヨシュア・リースト。3名の結果発表を行う」
厳かなルシウスの低い美声に、カズンたちは固唾を飲んで次の言葉を待った。
「試験の結果、全員に適切なランクへのランクアップを認める。ユーグレン王子とカズン・アルトレイはランクEから2段階アップでランクCへ。ヨシュア・リーストも同じくランクCから2段階アップでランクAに昇格するものとする。異論がある者はいるか?」
ルシウスが会場の軍部の要職にある者たちを見回す。
即ち王太女グレイシア、その伴侶クロレオ。
王都騎士団の団長と副団長。なお副団長はカズンの親友ライルの父、ホーライル侯爵だ。
そのライルは今日はグレンとまたダンジョンに潜っていて今回は不参加だ。彼らは冒険者活動で問題なくランクアップできるということもある。
そんな彼ら全員が無言だった。
ということは異論なしだ。
カズン、ユーグレン、ヨシュア。
三人、圧倒的な壁に挑んだ甲斐は充分あったといえよう。
その後、王宮で王太女グレイシアが催してくれた慰労会では、半泣きのヨシュアという珍しいものが見られた。
「ううっ、本当に何で叔父様が当主じゃないんでしょう? オレより絶対、叔父様のほうが相応しいですよね?」
「仕方なかろう。リースト伯爵家の当主は、本家筋の“最も魔法剣の本数が多い者”がなるんだ。お前は100本以上、私はたった1本。ほら、もう勝負はついている」
「その1本でオレの魔法剣ぜんぶ凌駕してるくせに!」
「ヨシュア……ほら落ち着け、美味しいもの沢山あるぞ?」
普段はヨシュアを引っ張り回すばかりのカズンがヨシュアの宥め役に回っているという、これまた珍しい光景があった。
ちなみにヨシュアはカズンと違って、美味しいもの程度では誤魔化されることがない。
「慰めのハグを所望します」
「なぜだ。僕だって負けてるのだから僕こそ慰めが欲しい。鮭! 魚卵はどうしたヨシュア!」
「……そこで素直にハグしてくれない、そんなあなたも大好きですよ、カズン様」
何だか切ない顔で微笑まれてしまった。
一方、ユーグレンとその家族はといえば。
「うむ……まあ、あのルシウス相手によくやったと褒めてやるぞ、愚息よ」
「……次はもっと長く戦って見せます」
「まあ無理するな、一生かけてもあやつに勝つのは無理だ」
「ですよね……」
せめて五手ぐらい試合えると思っていた頃がユーグレンにもあった。具体的には試験の寸前までは。
実に甘かった。
「ルシウス君は相変わらずですねえ。何事にも手を抜かないところは昔から変わっていない」
氷入りのレモネードのグラスを息子に差し出しながら、王太女の伴侶でユーグレンの父クロレオが優しく微笑みながら、しみじみ呟いている。