生きているって素晴らしい。
ここ最近毎日そう思うようになった。
私は生まれつき体が弱かった。
そして中学になると同時に病気を発症した。
聞いたこともない病名を言う先生。
最初は先生は私のことをからかっていると思ってた。
だけど時間が経つにつれて病気であることを実感した。
3年生に進級する時にはもう一人で歩くことさえもできなかった。
多分高校生になることは出来ないだろう。
先生にもそう言われ、私自身もその事実を最近感じてきている。
いつ死んでもおかしくない。
その事は私が一番理解していた。
毎日の夜が一番怖い。
もし次の日を迎えられなかったら・・・・・・
そう思うと怖くて眠ることが出来ない。
だけど私は、まだ死んでは行けない。
その理由がちゃんとある。
私は幼なじみの雅人と約束したのだ。
「光莉! 最後の大会必ず優勝してくる。だから絶対に死ぬな! ずっとずっと俺の事を応援しててくれ!」
小さい時から雅人はずっとサッカーをしていた。
「俺は将来プロサッカー選手になるんだ!」
幼稚園の時からずっと言っていた言葉。
私は彼の夢を一番近くでずっと見てきた。
だからこそ私はまだ死ぬ事は出来ない。
彼が大会で優勝した報告を聞くまでは、私は生きていないといけない。
中学校に入ってから私は彼のサッカーしている姿を見ていない。
本当だったら彼の試合を見に行きたい。
彼が活躍する姿を優勝する瞬間を。
全てを自分の目で見たい。
だけど私は遠くに移動することは出来ない。
辛いけど諦めるしかない。
彼は気づいていないと思うけど、実は私は彼に好意を抱いている。
幼稚園の頃から楽しそうにサッカーをする姿が好きだった。
シュートを決める度に見せる笑顔が。
疲れてても諦めない頑張る姿が。
その全てがかっこよくて気がついたら恋をしていた。
「俺は光莉とサッカーがしたい!」
今でもこの言葉だけは忘れない。
小学1年生の時、いつものように彼は公園でサッカーの練習をしていた。
私は基本いつも彼の見守り役だった。
「光莉も一緒にサッカーしようよ!」
退屈だった私を彼は誘ってくれた。
もちろんサッカーなんてしたことがない私は、ボールをあっちこっち蹴っ飛ばしてしまった。
上手く蹴れない、ボールはどこかに飛んでいく。
そんなことばかりで私は嫌になってしまった。
「もうやだ! サッカー難しいから嫌い!」
そう言って私は一人で砂場の方に行った。
彼はボールを持ってすぐに私を追いかけてきた。
「待って光莉! 俺が教えるからさ! もっかいやろ!」
彼はそう言ってくれたが、私はもう嫌だと思っていた。
「私とやっても楽しくないでしょ!」
「そんなことない! 俺は光莉とサッカーがしたい!」
私はすっごく嬉しかった。
いつもサッカーだけで私になんか興味無いと思っていた彼が、私とサッカーがしたいと言ってくれたから。
それから私は彼に好意を持ち始めた。
彼のサッカーの試合がある日はお母さんと一緒に応援しに行ったりもした。
だけど彼は超がつくほど鈍感だ。
きっと私の恋心に気づいてないだろう。
私は病室に置かれたスケッチブックを手に取る。
このスケッチブックは私が小学校の時から使ってる。
最近は病院から見える風景や、空想の世界を描いたりしていた。
最初の方のページを開くと、小学生の時に描いた彼の絵がある。
「なつかしい・・・・・・雅人こんなにちっちゃかったのか・・・・・・」
懐かしさで涙が込み上げてきた。
最初から10ページぐらいは全部彼の絵だった。
あの頃はサッカーをしている彼の絵を描くのが好きだった。
もう一度彼の姿を描きたいな・・・・・・
──コンコン
病室のドアがノックされる。
誰だろう。
「久しぶり光莉。今日は部活がオフだから来たよ」
来てくれたのは私が一番逢いたかった人。
「来てくれてありがとう」
「全然いいよ、それより具合はどう?」
すぐに心配をしてくれる彼。
やっぱり昔から変わらず優しい。
「それよりもうすぐ中総体でしょ。練習しなくて大丈夫なの?」
「もう少ししたら練習に行くよ」
彼は部活がオフの日でも1人で練習をしている。
なんでそのことを私が知っているかと言うと、彼が練習している公園が私の病室から見えるからだ。
オフの日はいつも決まってそこで練習をしていた。
私はそんな彼を見て応援することしか出来なかった。
だけど彼の成長は私が1番知っている。
小学校の時とは見違えるほどにドリブルのセンスも、シュートのセンスも良くなっている。
サッカーについて詳しくない私でさえも、彼のプレイはすごいと思える。
それもそうだ。
小学校いやもっと前からずっとサッカーを続けているんだ。
聞いた話だとサッカー部の中でも雅人が1番上手いらしい。
私はそれを聞いた時に自分の事のように喜んでしまった。
「今から練習するのにわざわざ来てくれてありがとね」
私は嬉しさの反面申し訳なさも持っていた。
「光莉のこと心配だし、約束忘れてないか確認したかったから」
「約束なら忘れるわけないよ。必ず優勝してきてね」
私は彼が優勝するまで待ち続ける。
「おうよ! それじゃあもう行くわ。何かあったら連絡しろよ」
「わかったよ、がんばってね」
彼は最後まで私の心配をしてくれていた。
本当に彼が幼なじみでよかった。
いつものように彼は公園で一人で練習していた。
私は彼の姿を見て思い出した。
そうだ、彼の絵を描こう。
私はテーブルに置いたスケッチブックを手に取り、空白のページを開く。
鉛筆を持ってスケッチブックに彼の姿を描いていく。
久々の人物画だったため、なかなか上手く描くことは出来なかった。
やっぱり彼の練習姿はかっこいい。
私はもっとこの姿を見たいと思っていた。
学校で彼の姿を見たい。
彼の試合を見たい。
それでも見に行けないということがとても悔しい。
私も彼の力になりたい。
何か出来ることがないか考えることにした。
考えた末、出した答えは、キーホルダーを作ることにした。
手がまだ使えるうちに彼のために作りたかった。
お母さんに連絡してキーホルダーを作るための材料を買ってきてもらった。
インターネットでよく見るような、名前の刺繍入りのキーホルダー。
それを作ることにした。
中総体まであと2週間をきっている。
それまでに完成させて彼に渡す。
どんなデザインにするか決まらずに困っていた。
サッカー部だからサッカーボールにすればいいのか。
それともかわいい動物などにすればいいのか。
結局決まらないまま、ただ日にちだけが過ぎていく。
彼の力になれるもの。
あっ・・・・・・
私は一つ思いついた。
彼の力になるかはわからない、だけど私が見てきた中で1番好きな彼の姿。
私は早速材料を手に取り作り始める。
一日で作るのは難しかったため、何日かにかけて作った。
思い通りに手が動かなくて、苦戦もしたがなかなかの仕上がりになった。
「雅人喜んでくれるかな」
「きっと喜んでくれるよ」
看病に来てくれたお母さんがそう言ってくれた。
「雅人くんの試合お母さんが見に行って、動画を取ってきてあげようか」
「大丈夫だよ。雅人動画とか撮られるの嫌いって言ってたから」
彼は昔から試合の時に動画を取られるのを嫌っていた。
だから私はいつも自分の目で見に行ってた。
それに彼の姿を見たら、もっと生きたいって思ってしまうから・・・・・・
雅人の試合の日まであと3日をきっていた。
彼は相変わらず夜遅くまで公園で練習している。
その時だった。
「うぅ・・・・・・おかあ・・・・・・さん。くる、しい・・・・・・」
突然襲ってくる胸の痛み。
次第に意識も朦朧としていく。
私の言葉に動揺を隠せないお母さん。
「いま先生を呼んでくるから!」
お母さんは病室を早足で出る。
すぐに先生がやってくる。
「光莉さん? 光莉さん? 大丈夫かい?」
先生の声が微かに聞こえた。
だけど返事をする気力はなかった。
私は手術室へと運ばれる。
気が付くと私の視界は真っ暗だった。
そんな中私の脳裏に浮かんだのは、ある日の記憶。
「ねぇ雅人、なんでいつも友達とじゃなくて私と帰ってくれるの」
小学校3年生ぐらいの時の話。
雅人はいつどんな時でも私と帰っていた。
決して友達がいない訳でもない。
むしろ友達は多かった。
なのに彼はいつも私のことを家まで送ってくれた。
「なんでって、光莉の事が心配だからに決まってるだろ」
あの時から彼は変わっていない。
中学校になっても定期的に私のお見舞いに来てくれる。
それと同時にもう一つ私の脳裏に浮かぶ死という文字。
生きたい・・・・・・生きたい・・・・・・
何度も願った。
せめて・・・・・・彼の優勝したことを聞いてから・・・・・・
私はそう神様にお願いした。
「光莉さん、光莉さん聞こえるかい?」
声をかけられ私は目を覚ます。
よかった・・・・・・生きていた・・・・・・
だけど深刻な顔をする先生。
お母さんは涙を流していた。
3日後には雅人の中総体が始まる。
何としても彼の結果を聞かないといけない。
それまで死ぬ事は出来ない。
中総体前日、私は体が動かなかった。
どうしようも無いほどの睡魔に襲われ一日中寝ていた。
それでも微かに聞こえた雅人の声。
彼が来てくれたんだ。
「これね・・・・・・光莉から雅人くんへだって」
「光莉・・・・・・」
「光莉は雅人くんのサッカーしている姿が一番好きだったんだって、だから明日は頑張ってね」
「ありがとうございます・・・・・・光莉・・・・・・本当にありがとう・・・・・・」
私も雅人の顔が見たい。
雅人と話したい。
でも体が動かない。
私は声を振り絞る。
「雅人・・・・・・がんばって・・・・・・」
だけど私の声は彼には届かなかった。
そして始まった中総体。
私はベットの上から彼のことを応援していた。
サッカー部は2日間にかけて試合を行う。
負けてしまえば一日で終わってしまう。
だけど私は信じていた。
彼は強い。
だから必ず優勝してくれると。
そして中総体が始まってから2日が経った。
さすがに今日は彼は来ないかな。
18時になった時、病室のドアが開いた。
そして私がずっと待っていた彼がやってきた。
「光莉・・・・・・俺、優勝したんだよ・・・・・・光莉がずっと応援してれたから・・・・・・俺、光莉のことずっと好きだったんだよ・・・・・・」
涙を流しながら話す雅人。
雅人も私のことを好きでいてくれたんだ。
嬉しいな・・・・・・ちゃんと私も好きって伝えたかったな・・・・・・
「約束したのに・・・・・・守らなかったな・・・・・・」
あぁ・・・・・・そっか・・・・・・私・・・・・・
死んじゃったんだんだ。
ここ最近毎日そう思うようになった。
私は生まれつき体が弱かった。
そして中学になると同時に病気を発症した。
聞いたこともない病名を言う先生。
最初は先生は私のことをからかっていると思ってた。
だけど時間が経つにつれて病気であることを実感した。
3年生に進級する時にはもう一人で歩くことさえもできなかった。
多分高校生になることは出来ないだろう。
先生にもそう言われ、私自身もその事実を最近感じてきている。
いつ死んでもおかしくない。
その事は私が一番理解していた。
毎日の夜が一番怖い。
もし次の日を迎えられなかったら・・・・・・
そう思うと怖くて眠ることが出来ない。
だけど私は、まだ死んでは行けない。
その理由がちゃんとある。
私は幼なじみの雅人と約束したのだ。
「光莉! 最後の大会必ず優勝してくる。だから絶対に死ぬな! ずっとずっと俺の事を応援しててくれ!」
小さい時から雅人はずっとサッカーをしていた。
「俺は将来プロサッカー選手になるんだ!」
幼稚園の時からずっと言っていた言葉。
私は彼の夢を一番近くでずっと見てきた。
だからこそ私はまだ死ぬ事は出来ない。
彼が大会で優勝した報告を聞くまでは、私は生きていないといけない。
中学校に入ってから私は彼のサッカーしている姿を見ていない。
本当だったら彼の試合を見に行きたい。
彼が活躍する姿を優勝する瞬間を。
全てを自分の目で見たい。
だけど私は遠くに移動することは出来ない。
辛いけど諦めるしかない。
彼は気づいていないと思うけど、実は私は彼に好意を抱いている。
幼稚園の頃から楽しそうにサッカーをする姿が好きだった。
シュートを決める度に見せる笑顔が。
疲れてても諦めない頑張る姿が。
その全てがかっこよくて気がついたら恋をしていた。
「俺は光莉とサッカーがしたい!」
今でもこの言葉だけは忘れない。
小学1年生の時、いつものように彼は公園でサッカーの練習をしていた。
私は基本いつも彼の見守り役だった。
「光莉も一緒にサッカーしようよ!」
退屈だった私を彼は誘ってくれた。
もちろんサッカーなんてしたことがない私は、ボールをあっちこっち蹴っ飛ばしてしまった。
上手く蹴れない、ボールはどこかに飛んでいく。
そんなことばかりで私は嫌になってしまった。
「もうやだ! サッカー難しいから嫌い!」
そう言って私は一人で砂場の方に行った。
彼はボールを持ってすぐに私を追いかけてきた。
「待って光莉! 俺が教えるからさ! もっかいやろ!」
彼はそう言ってくれたが、私はもう嫌だと思っていた。
「私とやっても楽しくないでしょ!」
「そんなことない! 俺は光莉とサッカーがしたい!」
私はすっごく嬉しかった。
いつもサッカーだけで私になんか興味無いと思っていた彼が、私とサッカーがしたいと言ってくれたから。
それから私は彼に好意を持ち始めた。
彼のサッカーの試合がある日はお母さんと一緒に応援しに行ったりもした。
だけど彼は超がつくほど鈍感だ。
きっと私の恋心に気づいてないだろう。
私は病室に置かれたスケッチブックを手に取る。
このスケッチブックは私が小学校の時から使ってる。
最近は病院から見える風景や、空想の世界を描いたりしていた。
最初の方のページを開くと、小学生の時に描いた彼の絵がある。
「なつかしい・・・・・・雅人こんなにちっちゃかったのか・・・・・・」
懐かしさで涙が込み上げてきた。
最初から10ページぐらいは全部彼の絵だった。
あの頃はサッカーをしている彼の絵を描くのが好きだった。
もう一度彼の姿を描きたいな・・・・・・
──コンコン
病室のドアがノックされる。
誰だろう。
「久しぶり光莉。今日は部活がオフだから来たよ」
来てくれたのは私が一番逢いたかった人。
「来てくれてありがとう」
「全然いいよ、それより具合はどう?」
すぐに心配をしてくれる彼。
やっぱり昔から変わらず優しい。
「それよりもうすぐ中総体でしょ。練習しなくて大丈夫なの?」
「もう少ししたら練習に行くよ」
彼は部活がオフの日でも1人で練習をしている。
なんでそのことを私が知っているかと言うと、彼が練習している公園が私の病室から見えるからだ。
オフの日はいつも決まってそこで練習をしていた。
私はそんな彼を見て応援することしか出来なかった。
だけど彼の成長は私が1番知っている。
小学校の時とは見違えるほどにドリブルのセンスも、シュートのセンスも良くなっている。
サッカーについて詳しくない私でさえも、彼のプレイはすごいと思える。
それもそうだ。
小学校いやもっと前からずっとサッカーを続けているんだ。
聞いた話だとサッカー部の中でも雅人が1番上手いらしい。
私はそれを聞いた時に自分の事のように喜んでしまった。
「今から練習するのにわざわざ来てくれてありがとね」
私は嬉しさの反面申し訳なさも持っていた。
「光莉のこと心配だし、約束忘れてないか確認したかったから」
「約束なら忘れるわけないよ。必ず優勝してきてね」
私は彼が優勝するまで待ち続ける。
「おうよ! それじゃあもう行くわ。何かあったら連絡しろよ」
「わかったよ、がんばってね」
彼は最後まで私の心配をしてくれていた。
本当に彼が幼なじみでよかった。
いつものように彼は公園で一人で練習していた。
私は彼の姿を見て思い出した。
そうだ、彼の絵を描こう。
私はテーブルに置いたスケッチブックを手に取り、空白のページを開く。
鉛筆を持ってスケッチブックに彼の姿を描いていく。
久々の人物画だったため、なかなか上手く描くことは出来なかった。
やっぱり彼の練習姿はかっこいい。
私はもっとこの姿を見たいと思っていた。
学校で彼の姿を見たい。
彼の試合を見たい。
それでも見に行けないということがとても悔しい。
私も彼の力になりたい。
何か出来ることがないか考えることにした。
考えた末、出した答えは、キーホルダーを作ることにした。
手がまだ使えるうちに彼のために作りたかった。
お母さんに連絡してキーホルダーを作るための材料を買ってきてもらった。
インターネットでよく見るような、名前の刺繍入りのキーホルダー。
それを作ることにした。
中総体まであと2週間をきっている。
それまでに完成させて彼に渡す。
どんなデザインにするか決まらずに困っていた。
サッカー部だからサッカーボールにすればいいのか。
それともかわいい動物などにすればいいのか。
結局決まらないまま、ただ日にちだけが過ぎていく。
彼の力になれるもの。
あっ・・・・・・
私は一つ思いついた。
彼の力になるかはわからない、だけど私が見てきた中で1番好きな彼の姿。
私は早速材料を手に取り作り始める。
一日で作るのは難しかったため、何日かにかけて作った。
思い通りに手が動かなくて、苦戦もしたがなかなかの仕上がりになった。
「雅人喜んでくれるかな」
「きっと喜んでくれるよ」
看病に来てくれたお母さんがそう言ってくれた。
「雅人くんの試合お母さんが見に行って、動画を取ってきてあげようか」
「大丈夫だよ。雅人動画とか撮られるの嫌いって言ってたから」
彼は昔から試合の時に動画を取られるのを嫌っていた。
だから私はいつも自分の目で見に行ってた。
それに彼の姿を見たら、もっと生きたいって思ってしまうから・・・・・・
雅人の試合の日まであと3日をきっていた。
彼は相変わらず夜遅くまで公園で練習している。
その時だった。
「うぅ・・・・・・おかあ・・・・・・さん。くる、しい・・・・・・」
突然襲ってくる胸の痛み。
次第に意識も朦朧としていく。
私の言葉に動揺を隠せないお母さん。
「いま先生を呼んでくるから!」
お母さんは病室を早足で出る。
すぐに先生がやってくる。
「光莉さん? 光莉さん? 大丈夫かい?」
先生の声が微かに聞こえた。
だけど返事をする気力はなかった。
私は手術室へと運ばれる。
気が付くと私の視界は真っ暗だった。
そんな中私の脳裏に浮かんだのは、ある日の記憶。
「ねぇ雅人、なんでいつも友達とじゃなくて私と帰ってくれるの」
小学校3年生ぐらいの時の話。
雅人はいつどんな時でも私と帰っていた。
決して友達がいない訳でもない。
むしろ友達は多かった。
なのに彼はいつも私のことを家まで送ってくれた。
「なんでって、光莉の事が心配だからに決まってるだろ」
あの時から彼は変わっていない。
中学校になっても定期的に私のお見舞いに来てくれる。
それと同時にもう一つ私の脳裏に浮かぶ死という文字。
生きたい・・・・・・生きたい・・・・・・
何度も願った。
せめて・・・・・・彼の優勝したことを聞いてから・・・・・・
私はそう神様にお願いした。
「光莉さん、光莉さん聞こえるかい?」
声をかけられ私は目を覚ます。
よかった・・・・・・生きていた・・・・・・
だけど深刻な顔をする先生。
お母さんは涙を流していた。
3日後には雅人の中総体が始まる。
何としても彼の結果を聞かないといけない。
それまで死ぬ事は出来ない。
中総体前日、私は体が動かなかった。
どうしようも無いほどの睡魔に襲われ一日中寝ていた。
それでも微かに聞こえた雅人の声。
彼が来てくれたんだ。
「これね・・・・・・光莉から雅人くんへだって」
「光莉・・・・・・」
「光莉は雅人くんのサッカーしている姿が一番好きだったんだって、だから明日は頑張ってね」
「ありがとうございます・・・・・・光莉・・・・・・本当にありがとう・・・・・・」
私も雅人の顔が見たい。
雅人と話したい。
でも体が動かない。
私は声を振り絞る。
「雅人・・・・・・がんばって・・・・・・」
だけど私の声は彼には届かなかった。
そして始まった中総体。
私はベットの上から彼のことを応援していた。
サッカー部は2日間にかけて試合を行う。
負けてしまえば一日で終わってしまう。
だけど私は信じていた。
彼は強い。
だから必ず優勝してくれると。
そして中総体が始まってから2日が経った。
さすがに今日は彼は来ないかな。
18時になった時、病室のドアが開いた。
そして私がずっと待っていた彼がやってきた。
「光莉・・・・・・俺、優勝したんだよ・・・・・・光莉がずっと応援してれたから・・・・・・俺、光莉のことずっと好きだったんだよ・・・・・・」
涙を流しながら話す雅人。
雅人も私のことを好きでいてくれたんだ。
嬉しいな・・・・・・ちゃんと私も好きって伝えたかったな・・・・・・
「約束したのに・・・・・・守らなかったな・・・・・・」
あぁ・・・・・・そっか・・・・・・私・・・・・・
死んじゃったんだんだ。