「なんじゃ、ちょこまかと……」
赫焔王は不愉快そうに蒼を見上げた。
蒼は腰に手を当て、その愛らしい手でビシッと赫焔王を指さす。その碧い瞳には揺るぎない自信が宿っていた。
「これからお前を殺す。嫌なら僕の奴隷になれ」
あまりに予想外の言葉に思わず笑ってしまう赫焔王。
「ハッハッハ! 頭でもおかしくなったか? お前のどこに我を殺せる力があるんじゃ? ん?」
蒼はスクロールのひもを外すと、無言で赫焔王に突き出し、見せつけた。
「なんじゃ? 最下級のスクロールじゃないか。そんなのでこの我と勝負する気か? ハッハッハ」
「このスクロールは一秒間スキルを無効化するんだよ? それでも笑っていられるかな?」
蒼はドヤ顔で言い放った。
「たった一秒のスキル無効化? それが何だと……。……。ま、まさか……」
赫焔王は蒼の狙いに気がつき、落ち着きなく目を泳がせる。
「これを破いて【即死】をかけるだけで僕の勝ち……。おい、動くなよ? 少しでも動いたら……」
蒼は碧眼をキラリと光らせ、スクロールを少し破いてみせる。
「ちょ、ちょっと。ちょっと待ってくれ!」
赫焔王はさっきまでの威勢はどこへやら、慌てて手を蒼の方に伸ばす。
「動くなって言ってんだろ!」
蒼はさらに少し破いた。
「くぅぅぅぅ……」
赫焔王は頭を抱え必死に対策を考える。
「今すぐ返事をしろ! すぐに返事しないなら破るからね?」
蒼は無慈悲に言い放つ。今まで散々ひどい目に遭わされてきたのだ。こんなところで譲歩する意味もない。
赫焔王は必死に活路を見出そうとするが、どんな攻撃もスクロールを破る速度には追い付かない。
「くぅぅぅ……。まさかこんな小童に……」
予想外の窮地に忌々しそうに蒼をにらみつけた。
「本当はこんなことせずにさっさと殺すのが正解なんだろうけど、無駄な殺生は避けたいんだよね。君にも何か都合があるだろうし?」
赫焔王はガチガチと牙を鳴らし、鼻息荒く叫ぶ。
「我を奴隷にしてどうするつもりじゃ? お主のペットになるくらいならいっそ殺せ!」
「ペットなんて要らないよ。この悪魔みたいに一緒に楽しく暮らせたらいいなってだけ」
おっかなびっくりヨロヨロと飛んできたムーシュを指さす蒼。
「楽しく暮らすじゃと? 馬鹿言うな! 我は不本意ながら呪いに侵されて、殺し続けなければ死んでしまうんじゃ」
蒼は赫焔王の蛮行の目的が謎だったが、暴れ龍にもそんな理不尽な理由があったと知り、少し同情する。
「その呪いってやつは女神の解呪の拳銃で解けるのか?」
「へっ!? お主【神霊の月桂銃】を持っとるのか!?」
「王国の宝物庫にあった月桂樹模様の銀の銃だけど効くの?」
「効くも何もずっと探しとったんじゃ! なんと王国にあったのか、騙されとった……」
赫焔王はうんざりした様子でうなだれた。
「効くならお前に使ってやろう。どうだ、奴隷になるか?」
赫焔王は少し考え、大きく息をつくとうなずいた。
「その小さな身体で良くやっとるよお主は。降参じゃ」
赫焔王はそう言うとボン! と爆発を起こした。
うわっ! な、何!?
爆煙が緩やかに風に舞い上がっていくと、そこには金髪おかっぱの少女が立っていた。彼女は近未来を思わせるシルバーのジャケットをまといながら、悪戯っぽくほほ笑んでいる。
「え……?」「はぁ……?」
二人は唖然とする。変身した人型の赫焔王は、千歳を超えているというが、見た目はただの女子中学生なのだ。確かに真紅の瞳の色は赫焔王のそれと同じではあったが、きゃしゃな体にはあの超絶な威圧感はみじんもなかったのだ。
「ま、まさかお前が赫焔王?」
「いかにも我が千二百五十五歳のドラゴン赫焔王レヴィアじゃ。レヴィアと呼ぶがよいぞ」
レヴィアは腕を組み、ドヤ顔で蒼を見るが、そのあどけない仕草はどこかコミカルで、蒼は思わず口元が緩んでしまう。
ムーシュはけげんそうな顔をしながらレヴィアのところまで飛んだ。
「じゃあ、奴隷の契約をしましょう。私はムーシュ、主様の一番奴隷ですからね?」
レヴィアの手を取り、その甲に六芒星の傷を刻むムーシュ。
「なんじゃ? 我を二番奴隷と呼ぶのか?」
レヴィアは不満そうに口をとがらせる。
「一番も二番もないよ、仲良くやる仲間なんだからさ」
蒼はそう言いながらピョンとレヴィアのところまで降りると、指先の血をレヴィアの六芒星に擦り付けた。
直後、二人はほのかな黄金色の輝きに包まれ、無事、レヴィアは蒼の奴隷となる。
「主殿よろしく頼むぞ」
レヴィアはニカッと笑って右手を差し出し、蒼もモミジのような手でそれに応えた。
こうして、幼女を主とするドラゴン女子中学生と小悪魔の不思議なパーティーが誕生したのだった。
赫焔王は不愉快そうに蒼を見上げた。
蒼は腰に手を当て、その愛らしい手でビシッと赫焔王を指さす。その碧い瞳には揺るぎない自信が宿っていた。
「これからお前を殺す。嫌なら僕の奴隷になれ」
あまりに予想外の言葉に思わず笑ってしまう赫焔王。
「ハッハッハ! 頭でもおかしくなったか? お前のどこに我を殺せる力があるんじゃ? ん?」
蒼はスクロールのひもを外すと、無言で赫焔王に突き出し、見せつけた。
「なんじゃ? 最下級のスクロールじゃないか。そんなのでこの我と勝負する気か? ハッハッハ」
「このスクロールは一秒間スキルを無効化するんだよ? それでも笑っていられるかな?」
蒼はドヤ顔で言い放った。
「たった一秒のスキル無効化? それが何だと……。……。ま、まさか……」
赫焔王は蒼の狙いに気がつき、落ち着きなく目を泳がせる。
「これを破いて【即死】をかけるだけで僕の勝ち……。おい、動くなよ? 少しでも動いたら……」
蒼は碧眼をキラリと光らせ、スクロールを少し破いてみせる。
「ちょ、ちょっと。ちょっと待ってくれ!」
赫焔王はさっきまでの威勢はどこへやら、慌てて手を蒼の方に伸ばす。
「動くなって言ってんだろ!」
蒼はさらに少し破いた。
「くぅぅぅぅ……」
赫焔王は頭を抱え必死に対策を考える。
「今すぐ返事をしろ! すぐに返事しないなら破るからね?」
蒼は無慈悲に言い放つ。今まで散々ひどい目に遭わされてきたのだ。こんなところで譲歩する意味もない。
赫焔王は必死に活路を見出そうとするが、どんな攻撃もスクロールを破る速度には追い付かない。
「くぅぅぅ……。まさかこんな小童に……」
予想外の窮地に忌々しそうに蒼をにらみつけた。
「本当はこんなことせずにさっさと殺すのが正解なんだろうけど、無駄な殺生は避けたいんだよね。君にも何か都合があるだろうし?」
赫焔王はガチガチと牙を鳴らし、鼻息荒く叫ぶ。
「我を奴隷にしてどうするつもりじゃ? お主のペットになるくらいならいっそ殺せ!」
「ペットなんて要らないよ。この悪魔みたいに一緒に楽しく暮らせたらいいなってだけ」
おっかなびっくりヨロヨロと飛んできたムーシュを指さす蒼。
「楽しく暮らすじゃと? 馬鹿言うな! 我は不本意ながら呪いに侵されて、殺し続けなければ死んでしまうんじゃ」
蒼は赫焔王の蛮行の目的が謎だったが、暴れ龍にもそんな理不尽な理由があったと知り、少し同情する。
「その呪いってやつは女神の解呪の拳銃で解けるのか?」
「へっ!? お主【神霊の月桂銃】を持っとるのか!?」
「王国の宝物庫にあった月桂樹模様の銀の銃だけど効くの?」
「効くも何もずっと探しとったんじゃ! なんと王国にあったのか、騙されとった……」
赫焔王はうんざりした様子でうなだれた。
「効くならお前に使ってやろう。どうだ、奴隷になるか?」
赫焔王は少し考え、大きく息をつくとうなずいた。
「その小さな身体で良くやっとるよお主は。降参じゃ」
赫焔王はそう言うとボン! と爆発を起こした。
うわっ! な、何!?
爆煙が緩やかに風に舞い上がっていくと、そこには金髪おかっぱの少女が立っていた。彼女は近未来を思わせるシルバーのジャケットをまといながら、悪戯っぽくほほ笑んでいる。
「え……?」「はぁ……?」
二人は唖然とする。変身した人型の赫焔王は、千歳を超えているというが、見た目はただの女子中学生なのだ。確かに真紅の瞳の色は赫焔王のそれと同じではあったが、きゃしゃな体にはあの超絶な威圧感はみじんもなかったのだ。
「ま、まさかお前が赫焔王?」
「いかにも我が千二百五十五歳のドラゴン赫焔王レヴィアじゃ。レヴィアと呼ぶがよいぞ」
レヴィアは腕を組み、ドヤ顔で蒼を見るが、そのあどけない仕草はどこかコミカルで、蒼は思わず口元が緩んでしまう。
ムーシュはけげんそうな顔をしながらレヴィアのところまで飛んだ。
「じゃあ、奴隷の契約をしましょう。私はムーシュ、主様の一番奴隷ですからね?」
レヴィアの手を取り、その甲に六芒星の傷を刻むムーシュ。
「なんじゃ? 我を二番奴隷と呼ぶのか?」
レヴィアは不満そうに口をとがらせる。
「一番も二番もないよ、仲良くやる仲間なんだからさ」
蒼はそう言いながらピョンとレヴィアのところまで降りると、指先の血をレヴィアの六芒星に擦り付けた。
直後、二人はほのかな黄金色の輝きに包まれ、無事、レヴィアは蒼の奴隷となる。
「主殿よろしく頼むぞ」
レヴィアはニカッと笑って右手を差し出し、蒼もモミジのような手でそれに応えた。
こうして、幼女を主とするドラゴン女子中学生と小悪魔の不思議なパーティーが誕生したのだった。