週末は楽しみにしていた朝美とのデートだ。前に話していたタイムトラベル物の映画を見に行った。CGがリアルで、脚本が緻密だったので、まるで現実のようだった。僕は楽しかったね、と無邪気に笑う朝美がとても好きだ。
実家暮らしの朝美は、帰りがけに両親にお土産にケーキを買った。僕と違って、両親を大切にしている。
「お父さんはチーズケーキが好きで、お母さんはモンブランが好きなんだよ」
僕は両親の好きな食べ物なんて分からないけれど、朝美はちゃんと両親の好みを知っている。いつか朝美の家に手土産を持っていく時までちゃんと覚えていよう。
朝美は実家暮らし、ふと思い立って朝美に子供の頃の写真が見たいとお願いしてみた。朝美は快く承諾してくれた。
夜、LINEで写真が送られてきた。アルバムと一緒に、小さい頃に書いた「お父さんお母さん大好き」なんて手紙が大事にとってあったと聞いて、本当に朝美は愛されて育ったのだなと思った。僕も高校生の時の大掃除の時に、幼稚園の時に両親に宛てて書いた手紙がとってあるのを見たことはあるけれど。
庭で子犬と戯れるショートカットの美少女が映っていた。少し大人びていて髪の長さこそ違うけれど、そっくりだった。間違いない、あーちゃんは髪を切る前の朝美だ。どの時間に家を出ても毎日毎日同じ女の子が話しかけてくるなんて偶然よりもタイムトラベルの方がよっぽど自然な事象に思えた。
僕は、そのことを朝美にもあーちゃんにも言わなかった。とても野暮なことに思えたからだ。それに、言ってしまったらあーちゃんはもう会いに来てくれなくなる気がした。
あーちゃんとは他愛のない話をたくさんした。少し前まで学校ではドロケイが流行っていたようだが、今は凍り鬼が流行っているらしい。
キャラメルが大好きなあーちゃんは飼っている犬の名前もキャラメルだと教えてくれた。以前言っていた「大好きなキャラメル」はお菓子じゃなくて犬のことだったと気づいた。
小学校が夏休みに入っても、大人は仕事を休めない。僕は実家に今年も帰れない。罪悪感はあるものの、気まずさから「帰れない」という連絡すら入れていない。母からは体にだけは気を付けてねというLINEが来ていた。
学校が夏休みになったあーちゃんはランドセルをプール用のバッグに持ち替えて元気な声で毎朝僕に「おはよう」と言う。あーちゃんは真夏の太陽のようにとても眩しい。
両親とは全然連絡を取っていないが、朝美とはあの日以来、日常の一コマや昔の写真をやり取りするようになった。直接会うとよくしゃべるけれども、朝美は文章が苦手なので画像単体で送られてくることが多い。よく映っている子犬は“キャラメル”の子供だろうか。毛並みがよく似ていた。
今日は庭のひまわりの写真を送ってきた。花を愛する人に悪い人はいない。朝美もあーちゃんも、花が好きな心優しい女の子だ。僕は少し前に撮った、あーちゃんが綺麗だと言った花の写真を送った。朝美は絶対に喜んでくれるだろうけれど、男が花の写真を送るのは照れくさくて、質問形式で送った。
「これ、ちょっと前に見たから撮ったけど、何て名前の花なの?」
「葵。花言葉は優しさ。私の一番好きな花」
たまたま撮った花が彼女の好きな花で嬉しかった。いや、あーちゃんが「優しい色」の花だと言っていたから偶然ではないのだろう。
「私ね、子供ができたら葵って名前にしたいの。男の子でも女の子でも」
葵、素敵な名前だ。そう遠くない未来に僕たちは結婚し、葵という子供が産まれる。僕はそう確信した。絶対に朝美を幸せにする。
実家暮らしの朝美は、帰りがけに両親にお土産にケーキを買った。僕と違って、両親を大切にしている。
「お父さんはチーズケーキが好きで、お母さんはモンブランが好きなんだよ」
僕は両親の好きな食べ物なんて分からないけれど、朝美はちゃんと両親の好みを知っている。いつか朝美の家に手土産を持っていく時までちゃんと覚えていよう。
朝美は実家暮らし、ふと思い立って朝美に子供の頃の写真が見たいとお願いしてみた。朝美は快く承諾してくれた。
夜、LINEで写真が送られてきた。アルバムと一緒に、小さい頃に書いた「お父さんお母さん大好き」なんて手紙が大事にとってあったと聞いて、本当に朝美は愛されて育ったのだなと思った。僕も高校生の時の大掃除の時に、幼稚園の時に両親に宛てて書いた手紙がとってあるのを見たことはあるけれど。
庭で子犬と戯れるショートカットの美少女が映っていた。少し大人びていて髪の長さこそ違うけれど、そっくりだった。間違いない、あーちゃんは髪を切る前の朝美だ。どの時間に家を出ても毎日毎日同じ女の子が話しかけてくるなんて偶然よりもタイムトラベルの方がよっぽど自然な事象に思えた。
僕は、そのことを朝美にもあーちゃんにも言わなかった。とても野暮なことに思えたからだ。それに、言ってしまったらあーちゃんはもう会いに来てくれなくなる気がした。
あーちゃんとは他愛のない話をたくさんした。少し前まで学校ではドロケイが流行っていたようだが、今は凍り鬼が流行っているらしい。
キャラメルが大好きなあーちゃんは飼っている犬の名前もキャラメルだと教えてくれた。以前言っていた「大好きなキャラメル」はお菓子じゃなくて犬のことだったと気づいた。
小学校が夏休みに入っても、大人は仕事を休めない。僕は実家に今年も帰れない。罪悪感はあるものの、気まずさから「帰れない」という連絡すら入れていない。母からは体にだけは気を付けてねというLINEが来ていた。
学校が夏休みになったあーちゃんはランドセルをプール用のバッグに持ち替えて元気な声で毎朝僕に「おはよう」と言う。あーちゃんは真夏の太陽のようにとても眩しい。
両親とは全然連絡を取っていないが、朝美とはあの日以来、日常の一コマや昔の写真をやり取りするようになった。直接会うとよくしゃべるけれども、朝美は文章が苦手なので画像単体で送られてくることが多い。よく映っている子犬は“キャラメル”の子供だろうか。毛並みがよく似ていた。
今日は庭のひまわりの写真を送ってきた。花を愛する人に悪い人はいない。朝美もあーちゃんも、花が好きな心優しい女の子だ。僕は少し前に撮った、あーちゃんが綺麗だと言った花の写真を送った。朝美は絶対に喜んでくれるだろうけれど、男が花の写真を送るのは照れくさくて、質問形式で送った。
「これ、ちょっと前に見たから撮ったけど、何て名前の花なの?」
「葵。花言葉は優しさ。私の一番好きな花」
たまたま撮った花が彼女の好きな花で嬉しかった。いや、あーちゃんが「優しい色」の花だと言っていたから偶然ではないのだろう。
「私ね、子供ができたら葵って名前にしたいの。男の子でも女の子でも」
葵、素敵な名前だ。そう遠くない未来に僕たちは結婚し、葵という子供が産まれる。僕はそう確信した。絶対に朝美を幸せにする。