横断歩道の信号に引っかかった。ここを渡った先のカフェが、彼女との待ち合わせ場所だ。天候は晴天、告白日和。
早く信号が変わらないかな、と足踏みをしていると、僕の視界に見紛うはずのない女性の姿が映った。
彼女だ。カフェに向かって歩いている。秋らしいシックなカラーワンピに黒いボウタイを巻いたフェミニンなコーデ。ストレートなシルエットに思わず見惚れてしまった。
——完全にデートの装いだよね? ただの高校生男子とお茶をするだけなのにそんなオシャレ、普通はしないよね?
都合のいい方に考えるとすごく嬉しくなって、僕は横断歩道の向こう側にいる彼女に大きく手を振っていた。
「おーい! 向坂さーん! おーい!」
彼女が振り向いたと同時に横断歩道の信号が青になった。
「戸田君!」
気づいた彼女が手を振り返してくれる。僕が横断歩道を渡り始めると彼女も反対側から来てくれた。
このまま距離がなくなるほど近づいたら、思わず抱きしめてしまいそうだ。でも、それもいいな。華奢な身体を抱きしめて耳元で「好き」って囁いたら、大人っぽいかな。ドキッとさせられるかな。
そんなことを考えながらゼロ距離になるまであと一メートルを切った時だった。
「危ないっ!」
突然、彼女の声ではない女性の声がした。それと同時に僕たちを照らしていたはずの太陽光が届かなくなった。不思議に思っている暇なんてなかった。
大きなトラックが、僕たちのすぐ横まで来ていた。
「ちづるっ!」
抱きしめようとした自分の手で、彼女の肩を強く押した。今思えばそんなに強く押さなくてもよかったと後悔しているけど、その時の僕はどんな力を使ってでも彼女をトラックから遠ざけないと、と反射的に手が出ていた。
トラックが僕に当たった感覚は全くなかった。痛いとか苦しいとか、負の感情もなかった。当たらなくなっていた太陽の光が、僕の目を突き刺して思わず目を瞑っていた。
身体が浮遊感を覚えた時、彼女がどんな顔で僕を見ていたのかは分からない。見ていたのか見ていなかったのかすら分からない。けど、ひとつだけ確かだったことがある。
「一誠君っ!」
彼女の声は、しっかりと僕に届いていた。彼女のことに関しては、見間違えることもなければ聞き間違えることもない。
——僕たちは両想いだったのだ。
早く信号が変わらないかな、と足踏みをしていると、僕の視界に見紛うはずのない女性の姿が映った。
彼女だ。カフェに向かって歩いている。秋らしいシックなカラーワンピに黒いボウタイを巻いたフェミニンなコーデ。ストレートなシルエットに思わず見惚れてしまった。
——完全にデートの装いだよね? ただの高校生男子とお茶をするだけなのにそんなオシャレ、普通はしないよね?
都合のいい方に考えるとすごく嬉しくなって、僕は横断歩道の向こう側にいる彼女に大きく手を振っていた。
「おーい! 向坂さーん! おーい!」
彼女が振り向いたと同時に横断歩道の信号が青になった。
「戸田君!」
気づいた彼女が手を振り返してくれる。僕が横断歩道を渡り始めると彼女も反対側から来てくれた。
このまま距離がなくなるほど近づいたら、思わず抱きしめてしまいそうだ。でも、それもいいな。華奢な身体を抱きしめて耳元で「好き」って囁いたら、大人っぽいかな。ドキッとさせられるかな。
そんなことを考えながらゼロ距離になるまであと一メートルを切った時だった。
「危ないっ!」
突然、彼女の声ではない女性の声がした。それと同時に僕たちを照らしていたはずの太陽光が届かなくなった。不思議に思っている暇なんてなかった。
大きなトラックが、僕たちのすぐ横まで来ていた。
「ちづるっ!」
抱きしめようとした自分の手で、彼女の肩を強く押した。今思えばそんなに強く押さなくてもよかったと後悔しているけど、その時の僕はどんな力を使ってでも彼女をトラックから遠ざけないと、と反射的に手が出ていた。
トラックが僕に当たった感覚は全くなかった。痛いとか苦しいとか、負の感情もなかった。当たらなくなっていた太陽の光が、僕の目を突き刺して思わず目を瞑っていた。
身体が浮遊感を覚えた時、彼女がどんな顔で僕を見ていたのかは分からない。見ていたのか見ていなかったのかすら分からない。けど、ひとつだけ確かだったことがある。
「一誠君っ!」
彼女の声は、しっかりと僕に届いていた。彼女のことに関しては、見間違えることもなければ聞き間違えることもない。
——僕たちは両想いだったのだ。