柳は何かを見透かしているような眼差しを持ち合わせていて、優しい温もりに包まれている。
 そんな柳は、何かを抱え込んでいる。気がする。
 
 寒くたって、学校に行く時の気持ちは明るくなる。幸せを噛み締めながら進む足は、いつも軽い。怖いものなんてないし、不安もない。
 学校に行けば、大好きな人がいる。大好きな人のそばにいられる。それだけで嫌なことも楽しめる。それだけで人生最高!と感じる。
 交差点に近づくと、赤信号が青色に変わった。
 ああ、もうすぐ学校に着く。大好きな人に会える。
 周りはいつも通りなのに、違うように見える。いつも通りの学校なのに、明るく見える。輝いて見える。
 
 「おはよ!柳!」
 「おはよう。仲田」
 いつもの優しい笑顔を見せてくれた。少しのことで心がふわっとするのは恋だからだろうか。
 柳の姿を見るだけで心がいっぱいになって、幸せを感じる。
 その幸せの中で、ふと感じた。
 この笑顔は、本物なのだろうか?何だか心配になる。
 「柳さ、嫌だったら嫌って言ってね。何も知らないで傷つけるの、怖いから」
 「うん。わかった」
 「あと、不安なことあったら不安だって言ってね。二人で寄り添い合いながら不安なことに立ち向かった方が、不安じゃなくなるから」
 「うん。ありがとう」
 柳は、ニコッと笑った。やっぱり大好きだな。安心する。たぶん、大丈夫。
 
 心配が的中することをこの時は知らなかった。

 「仲田、聞いてほしいことがある」
 深刻な顔をして、柳は言った。付き合い始めて一週間経った頃だった。帰りのホームルームが終わった後だった。
 「わかった。教室誰もいなくなったら、柳のタイミングで話して。聞いてるから」
 柳は、目を閉じながら頷いた。