あたしは、ガバッと顔をあげて。
「だからっ! こうして休みの日にこっそり練習してんの。あんなバカ男どもなんかに負けないように」
 と、勢いよくヘディングしてみせた。
「男の子、キライ?」
「んー、選手としての実力は認めるけど、友だちとしてつき合いたくはないかなー。あいつらみんなライバルだし!」
 ふんっ、と鼻息が荒くなる。
「そうなんだ――」

「そうだ、キミもなにかスポーツしてるの?」
 あたしは女の子に目をやった。
 スラッとした長い手足に、淡いパープルのジャージがよく似合ってる。
 女の子はコクンとうなずいて。
「わたし、(はるか)。ストリートダンスやってるの」
「ストリートダンス?」
 どういうのだっけ? 名前は聞いたことあるけど……。

 遥ちゃんがスマホを手にした。
 このごろ大ヒットしているアイドルグループの曲に合わせて、遥ちゃんが踊り出す。
 その瞬間、場の空気が一気に変わった。
 しなやかに動く手足。
 さっきまでの穏やかな印象がウソみたいにキリッとした遥ちゃんの横顔。
 音楽をまとい、いきいきと踊り続ける遥ちゃんの姿に、あたしはただただ圧倒されるばっかりで。
 ダンスが終わった瞬間、胸のなかに一気に熱いものがこみあげてきた。