「サッカーの練習?」
 ボールを渡されて、あたしはようやくわれに返る。
「う、うん! あたし、土日の午前中はいつもここで練習してて」
 すると、その子は大きく目を見開いた。
「キミ、女の子なの!?」

 そーだよね、驚くよね。
 髪も短くて、こんがり日焼けしてて、着古したジャージ姿のあたし。
 女の子らしさのカケラもないよね。
 あたしはへへへっ、と笑って。
「そーなの。聖良(せいら)っていうんだ。似合わないでしょ?」
 だけど、その子は、ふるふると首を横に振って、
「ううん。とってもステキな名前。よく似合ってると思う」
 って、マジメな顔でそう言ってくれたんだ。
「……ありがと。サッカー部のチームメイトには、よくからかわれるんだけどね。名前と性格が合ってないとか、女子力ゼロだとかさ。ま、ホントのことだから、それについてはあたしも否定しないんだけど――」
「どうしたの?」
 心配そうに首をかしげる女の子。
「うちの部って男女混合で、今はあたしもスタメンで試合に出ることが多いんだけど、たびたび言われるの。そうやってプレイできるのも今のうちだけだ、って。中学生になったら、戦力としては男にかなわなくなるって。ひどいよね、いつもは女子力ゼロだとか言ってくるのに、そういうときだけ女扱いするなんて」
 ダメだダメだ。
 ヘコむから考えないようにしてたのに、つい知らない子にまでグチっちゃった。