「泣かないでよ、聖良ちゃん。せっかくまた会えたんだから。今まで離ればなれになってた分、これからいっぱい、いっぱい話をしよう。これからはずっと、聖良ちゃんのそばにいるから」
 ワンワン泣いているあたしを、遥ちゃんがギュッと抱きしめる。
「すっかりイケメンになっちゃって、もう『遥ちゃん』なんて呼べないじゃん」
 グシグシと涙声でつぶやくあたしの背中に、遥ちゃんはやさしくポン、ポンと手をやって。
「ずっと『遥ちゃん』のままでいいよ。ほら、再会を祝して乾杯しよう」
 と、トロピカルフルーツパンチの缶をつき出した。
 カツン、と缶と缶とが合わさったあと、あたしたちはゴクゴクとトロピカルフルーツパンチを飲んだ。
 久しぶりに飲んだトロピカルフルーツパンチは、とっても甘くて、かすかに酸っぱくて。
 味はあのころと同じなはずなのに、飲んでいるとなぜか胸の奥が切なくなった。
「ねぇ、飲みきれなくなったら、聖良ちゃんオレの分飲んでくれるよね?」
 遥ちゃんのいたずらっぽい声に、思わずあたしは飲みかけのパンチをふき出す。
「オレとか言わないでよっ!」
 怒るあたしの耳元で、遥ちゃんの明るい笑い声が響く。
 
 久々の再会は、すっごくうれしくて。でも、ちょっぴり刺激的で。
 胸のなかにはじけた、このシュワシュワッとした甘酸っぱい気持ちを、どう遥ちゃんに伝えればいいか、あたしはまだうまく言葉にできないでいたのでした。
 
 おわり。