「え……?」
 キョトンとしているあたしに、金髪男子はひどくなつかしそうな笑みを浮かべて。
「やっぱりここに来ると、どうしてもこの味が恋しくなるよね。聖良ちゃん」
 どうして? なんであたしの名前――!?
「ステージからでも、すぐに聖良ちゃんだって分かったよ。あのころから、なにもかも変わってないんだもん。そのショートヘアも、キリッとした顔つきも、トロピカルフルーツパンチが好きなとこまでね」
 パチッ、とウインクしたそのやさしげな表情を見て、あたしの心臓がドキン! と大きく鳴った。
 まさか、まさか。
「遥ちゃん……なの?」
 あたしはその背の高い男子をじっと見上げた。
「ずっと隠しててゴメン。はじめて会ったとき、聖良ちゃん、男子キライって言ってたから、どうしてもホントのことが言えなくて」
 そうすまなさそうにほほえむ遥ちゃんは、身長も声も髪の毛の色も昔とはちがうけど、やっぱりあのころの遥ちゃんとおんなじで――。
 さびしさに押しつぶされそうだった心が、フワフワッと舞い上がる。
 遥ちゃん、約束どおりこの町に戻って来たんだ。
 ちゃんと夢をかなえたんだ。
 全国大会に進出できたんだ!
「なんだよ、も~……!」
 あたしは、ようやく遥ちゃんと再会できたことにホッとしたあまり、気がつけばダムが決壊したみたいに、どんどん涙があふれてきて止まらなくなった。