今にも心に雨が降りそうなくらい気持ちが深く沈んでる。
 もう帰ろう。ここにいてもつらくなるばっかりだから。
 足早に公園を出ようとすると、
「あっ」
 いつも、練習のあとに利用してた自販機が目に入った。
 まだあのトロピカルフルーツパンチ売ってるんだ。
 悲しみが広がっていた胸が少しだけホッコリする。
 よく遥ちゃんといっしょに飲んでたっけ。
 遥ちゃんが飲みきれない分、あたしってばちゃっかりもらってたんだよね。
 なつかしさに吸い寄せられて、一本買おうと自販機に手を伸ばすと。
 あたしとほぼ同時に、別の手が自販機にふれようとしていた。
 顔をあげると、そこには、さっきステージで優勝トロフィーを抱えていた、長身の金髪男子。
 オレンジ色の夕陽を浴びて、金色の髪の毛がいっそうまぶしく光り輝いている。
「ゴメンなさい、お先にどうぞ!」
 順番をゆずると、金髪男子はトロピカルフルーツパンチのボタンを押した。
 あれれ、二本……?
 誰かの分もついでに買ったのかな?
 ボーッと様子をながめていると、金髪男子は、なぜかあたしにトロピカルフルーツパンチの缶を一本手渡してきた。