「えっ、転校?」
 遥ちゃんといっしょに練習することが、すっかり日常の一部となりつつあった矢先のこと。
「そうなの。お父さんの仕事の関係で」
 遥ちゃんが声を落とす。
「どこに? ここから遠いの?」
 飛行機じゃないと行けないくらい離れちゃうのかな……。
「それが、ロサンゼルスなの」
「ロサンゼルス!?」
 って、アメリカの???
「わたし、おばあちゃんちで暮らすことになったんだ」
 そういえば、前に遥ちゃん、おばあちゃんがアメリカ人って言ってたもんね。
 アメリカなんて……大人ならともかく、子どもの力じゃとても会いに行けないよ。
 どうしよう。もう二度と、遥ちゃんには会えないのかな?
「あのねっ、聖良ちゃん!」
 遥ちゃんは、まっすぐあたしの顔を見て、
「しばらく会えなくなるけど、わたし、必ずこの町に戻って来るから。もし、五年後、おたがいに夢をあきらめないでいたら、この公園で開催されるストリートダンス選手権、観に来てくれないかな? わたし……絶対に出場するから。そのとき、また会おう!」
 と、あたしに手を伸ばした。
 あたしは、その手をギュッとにぎりしめて答えた。
「うん! もちろん。必ず会いに行くよ!」
 遥ちゃんは、ホッとしたような笑みを浮かべて。
「よかった! きっと、約束だからね」
 そして、あたしたちはおたがいに笑顔のままで、そのときはサヨナラしたんだ。