「それはコルネリアが悪いわけではないよ、うちに来てまた少ししか経っていなかったし」
「その時はそうかもしれません。しかし、もうそれに甘えていられる時期は過ぎたのではないかと思うのです。私はレオンハルト様と共に生きるために、ヴァイス公爵夫人としての責務を全うするためにもっとたくさんの勉強が必要だと思っています」
「…………」

 コルネリアは自分の膝を見つめながら、必死に自分の思いを伝えていく。
 その必死さをわかっているからこそ、レオンハルトも口を挟むのではなく黙って発言の行く末を見守っていた。

「私は孤児院出身で、そしてルセック家でもマナーはあまり教えてもらいませんでした。いえ、違いますね。学ぼうとしていなかったのです。ですから、私は自分の考えで、そして意思で学びたいと思ったのです。なんとかそのためにお力を貸していただくことはできないでしょうか」

 そう言いながらコルネリアは馬車に揺られる中、すぐ目の前にいるレオンハルトに深々と頭を下げる。
 短時間のお辞儀ではない、何秒も何十秒も頭を下げ続けた。

「頭を上げてごらん、コルネリア」