ヒュートン侯爵夫人から悪い噂を聞いたコルネリアは、急いでレオンハルトにそのことを知らせた。
 数日後、調査の結果を彼はコルネリアに話していた。

「コルネリア、悪い知らせだよ」
「では、やはり……」
「ああ、隣国であるミストラル国の第二王子、リスト・ニューラルは黒魔術師とのつながりがある」

 噂が嘘であってほしいと願っていたコルネリアにとって、最悪の結果となった。
 彼女は目を閉じて顔をしかめた後、はっと気づき、レオンハルトに問いかける。

「では、クリスティーナ様のご婚約は……!」
「それが、実はクリスティーナは今日ミストラル国へ出立する予定なんだ」
「今日っ!? 早く止めないとっ!」
「ああ、今ならぎりぎり間に合うかもしれない。王宮ではなく直接港へ急ごう!」
「はいっ!」

 大事な友であるクリスティーナの危機、そして国家の一大事に繋がる今回の事件。
 コルネリアとレオンハルトは馬車を走らせて、国の玄関口であるフリュート港へと急いだ──


 馬車の中ではまだ着かないのか、と落ち着かない様子で窓を何度も眺めるコルネリア。