「怖かった……心が壊されていく感覚が……自分を否定されることが……いらないといわれているような気がして」

 当時の記憶がよみがえってくるごとに、コルネリアの息は上がっていく。
 苦しくて、どうしようもなく怖くて、身体が震えて来る。

(だから、私はやめた。力を使うことを。もう傷つきたくないから。傷つけたくないから。誰も……)

 真実を思い出した彼女は自分の身体を抱えるようにして涙を流す。

「ここにいるわよ。大丈夫」

 シスター長の声で安心したのか、少し震えが止まる。

「コルネリア。あなたは今、どうして力が欲しいの?」

(呪いを解くため……)

「あなたはその力で誰を守りたいの?」

(私は……)

「私は、レオンハルト様を守りたい。彼を守る力が欲しいんです。私は、誰かを守るために力を使いたい……!」

 シスター長は彼女のいう「守る」が呪いから救うことだとはわかっていない。
 だが、それでも何か彼女の中で守るものができ、そのために力を使いたいという思いは伝わってくる。

「コルネリア」
「はい」
「あなたはもう大丈夫。あなたは強くなったわ。あの頃よりも」