「ああ。それだけ割いているということは”自分が狙われる”という自覚がある証拠だ」
「では、いかがいたしますか?」

 ミハエルはじっと彼からの指示を待つ。
 レオンハルトは再び思案した後、引き出しから便箋を取り出してさらさらと手紙をしたためていく。
 数分でその手紙を仕上げると、それを目の前に控えていたミハエルに渡す。

「これをリュディーに届けてほしい」
「ご依頼ですか?」
「ああ、報酬はツケと言っといてくれ」
「……そろそろ怒られるのでは?」
「いや、大丈夫だ。いつか返す」

 ミハエルは軽くため息を吐いた後、持ってきた書類をレオンハルトに手渡して自身は部屋を後にする。



 数日後、レオンハルトは王宮のある一室である人物を待っていた。
 部屋の扉が開いた瞬間、その人物はレオンハルトの姿を見て一瞬驚いた表情を見せるも、すぐにいつものどこか媚を売るような表情を見せてくる。

「これは、ヴァイス公爵閣下。どうなさいましたか?」
「驚きましたか? ここには国王がいると聞いていたでしょう?」
「え、ええ。国王直々にとのことでしたから、何事かと思いすぐにまいりました」