ちょうどコルネリアが地下牢にいるという調書をミハエルから受け取った数日後の婚約要請──
 国内はその当時繊維業の不況に苦しんでおり、独自の輸入ルートを持っていたレオンハルトの母、アンネの親戚との結びつきたいと考えていた。
 世に言う政略結婚であった。
 公爵の身として国を背負う一人である責任から、レオンハルトはその婚約を了承した。

「お久しぶりでございます。レオンハルト公爵閣下」
「いや、僕のことはレオンハルトで構わない」

 可愛いというよりかは大人っぽい見た目をした彼女は、美しい金色の長い髪を靡かせて挨拶をする。
 青く輝いた瞳は真っすぐにレオンハルトを見つめており、意志の強さを感じさせた。
 彼女は政略結婚ということを理解し、レオンハルトを陰から支えようと普段から一歩引いて社交界にも参加した。

「クラリッサ、僕は挨拶に向かうんだが……」
「わかっております。さりげなく私のほうでレナ様をお引止めしておきますわ」
「──っ! ああ、助かる」

 もはや婚約して二年ともなると、彼女はレオンハルトの仕事を理解してサポートをするようになった。