「ふふ、それはよかった。レオンハルトは慣れるのに半年かかりましたよ」
「そうなのですか?」
「彼は昔から子供なんです。泣き虫レオちゃんのことは聞きましたか?」
「はい、今からは想像もできないので、初めはびっくりしました」

 リュディーは普段のマスターの顔とは少し違って、友人としての表情を浮かべながら笑った。

(二人は本当にお互いのことをよく知っているんだな)

 そんな思考を読むように、彼は、私よりも王女殿下のほうが彼のことをよく知っていますよと言った。
 コルネリアはすっかりコーヒーに飲み慣れたようで、もう一口と言った様子で飲む。

「あの日はよく晴れた日でした」
「……」

 リュディーは昔を思い出すようにゆっくりと語り始める。

「私達はローマンをもうすぐそこまで追いつめたのです。それでも彼は諦めなかった。そして、最悪の事態が起こった」
「人質……」
「ええ。私は人質を救助しにレオンハルトの命を受けて先行して潜入場所に侵入しました。大人数だとバレる危険性があったので、私だけで」

 リュディーは自分の分のコーヒーを入れ終わると、そこに角砂糖を入れる。